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PS―LTEデモンストレーションを公開 移動無線センター

【2016年12月19日】

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説明する仲川氏

 一般財団法人移動無線センターは、12月13日から15日まで、東京都新宿区の同財団内で、公共安全LTE(PS―LTE、Public Safety LTE)デモンストレーションの模様を業界関係者、報道関係者向けに公開した。技術検証の内容と具体的なアプリケーションの紹介に関して関係者に限定して実施した。同財団では、次世代の自営無線システムの候補として、PS―LTE技術の自営無線通信への適用について、関係会社・団体と「PS―LTE技術検証協議会」を設け、技術検証を進めている。

 警察、消防、防災などの公共安全分野のほか、様々な業務分野で、自営の無線通信システムが使われている。これらは、音声通信が中心で、主としてグループ通信が使われている。近年、公共安全の分野を中心に、ブロードバンドへの対応などを目指して、自営無線通信において公衆通信で用いられているLTE技術の利用が国際的に検討されている。大規模災害などで、コアネットワークが遮断された場合や、基地局がダウンした場合でも通信を確保できる機能、緊急情報の同報機能、広い通信カバレッジと通信容量の確保、災害に強いネットワーク堅牢な端末などの要件が次世代緊急無線通信システムとしてのPublic Safety LTE(PS―LTE)に求められているところだ。
 移動無線センターが公開した具体的な展示内容は、1.PS―LTE技術検証について2.機器展示(ネットワーク設備/端末機器/空中線/燃料電池等)3.デモンストレーション(グループ通信〈PTT〉、映像集配信、低速データ通信)。出展各社は次の通り(順不同)。▽NEC▽電気興業▽ソリトンシステムズ▽日本電業工作▽ノキアソリューションズ&ネットワークス▽京セラ▽ピクセラ▽三菱ガス化学。
 冒頭で、一般財団法人移動無線センター常務理事の仲川史彦氏が移動無線センターの取り組みなどを説明した。
 PS―LTE技術的検証について移動無線センターでは、次世代自営無線システムの有力候補としてPS―LTEに着目し、2013年から調査を始め、2014年に「PS―LTE検討会」を設けて世界の動向調査や技術的検討を行い、2015年3月に報告書として取りまとめた。また、総務省の電波政策ビジョン懇談会等に意見を提出するとともに、アジア・太平洋電気通信共同体(APT)の無線グループ(AWG)に寄書を提出し、検討を促した。
 2016年にこの報告書で要件とされる事項について技術的検証を行うこととし、関心を有する団体・企業で「PS―LTE技術検証協議会」を設立し、2016年9月に実験試験局を開設し、検証を行っている。
 「PS―LTE技術検証協議会」は次の8団体・企業により構成されている(順不同)。▽一般財団法人移動無線センター▽一般財団法人電波技術協会▽NEC▽ノキアソリューションズ&ネットワークス▽京セラ▽ソリトンシステムズ▽ピクセラ▽アルティアセミコンダクタージャパン。
 技術的検証は、2016年10月~11月にかけて、LTE自営無線の利用可能性検証において、大ゾーン方式によるカバーエリア調査、データ伝送速度/エラーレート調査、音声品質/接続率の調査を実施した。2016年12月にはLTE自営無線の利用性評価で、グループ通信実験、映像集配信実験、低速データ通信実験を行っている。
 移動無線センターは、今後適用するPS―LTEシステムの実用化を目指し、埼玉県および東京都の実験試験局において、その技術検証を開始した。このトライアルサイト(実験試験局)は北本(埼玉県)、埼玉スタジアム(さいたま市)と、新宿(東京)、市ヶ谷(同)。
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 各社の出展概要は次の通り。
 NECが提案する次世代無線システムの特徴は次の4点。1.緊急時に臨時グループ通信が可能(普段は同一業者のグループで通信。緊急時には他業者との臨時グループ通信が可能)2.業務用無線とスマートフォンの特徴を合わせ持つ移動局(PS―LTE移動局=堅牢性のある業務用無線+携帯性・操作性のスマートフォンタイプ、頑丈・防水・コンパクトで軽量、タッチパネルで簡単操作)3.Wi―Fi連携によるデータ通信(災害時にも確実につながる連絡手段、Wi―Fiを中継してPS―LTEで伝送)4.どこでも繋がる、どのエリアでも同じ操作性で通信が可能(IP無線エリア、PS―LTEエリアにおいて、エリアをまたいだグループ通信が可能、エリア移動してもシームレスな通信が可能)。
 また、PS―LTEを利用したNECのクラウドサービスについても紹介した。NECクラウドはPS―LTEやキャリアのネットワークから様々な情報を収集し、NEC独自の技術からデータ分析、新たなサービスを提供して、安全・安心・効率的なライフスタイルを実現するとしている。例えばイベントでは、人の流れ、混雑の予測情報より、係員へ的確な指示などの早期対応を行う、その背景にあるのがNECクラウドでの群集解析技術(画像から混雑状況を解析)だ。防災では、市民へ正確な情報提供を行う。土石流等の災害予測をし、的確な避難解析を行う。その背景にあるのがNECの画面鮮明化技術(低画質画像を線明化)だ。
 電気興業は小ゾーンタイプPS―LTEセクターアンテナを展示した。実際に埼玉スタジアム内に設置されたアンテナで、狙いのエリアは同スタジアム内のみ。南西方向のスタンドの一部だけしか取り付けられない、設置場所が限られていたという。さらにスタジアム側の要望で景観上目立たないようにとのことだったので、全長2メートル以下とした。今回のために新規設計したという。今回、新しい周波数帯であり、現場の電波環境も考慮しながら何度もシミュレーションをしたという。セクターアンテナとは一般的に、通信の相手が複数ある場合にビーム幅を60~90度と広くして一度に多くの相手と通信したい場合に用いられるもの。
 電気興業の電気通信部門は、電気通信施設の設計から製作・建設・メンテナンスまでを扱うことができ、事前の調査から保守点検にいたるまでのトータルシステムにより、高い品質を提供している。
 ソリトンシステムズは、移動無線センターが主導、推進する次世代自営無線通信システム(PS―LTE)の実証実験に参画し、同社の「Smart―telecaster」(スマートテレキャスター)を用いて構成されたPS―LTE映像中継システムに関して、技術評価を実施すると13日に報道発表した。PS―LTEでは音声やデータ通信に加え、リアルタイム映像中継の積極的活用も想定されており、この技術評価は、公共安全を主たる目的とするPS―LTEの適用において欠くことのできないものとして、ソリトンシステムズはその要となる方式技術として同社開発の「Smart―telecaster」を提供し、共同で技術評価を行っているところだ。今回は、スマートフォンを使って映像と位置情報をリアルタイムに収集、受信した12拠点の映像をストリーミング配信、独自のライブ映像伝送方式「RASCOW」に対応などが特長の「Smart―telecaster GPS+」及び世界最少最軽量「H・265」モバイルエンコーダ「Smart―telecaster Zao―S」を紹介した。
 日本電業工作は、実際に市ヶ谷のトライアルサイトに導入された900MHz帯偏波共用無指向性アンテナを展示した。広範囲をカバーする高利得アンテナ。干渉を少なくしてサイドローブレベルを抑制。軽量、小型設計で設置もしやすいのが特長。さらに900MHz帯偏波共用高利得アンテナも紹介した。日本電業工作のアンテナ事業部は、移動通信や放送事業などの社会インフラ整備や、第5世代移動通信等の新しい通信サービスの実現を目指した様々な研究開発に取り組み、性能はもちろん設置環境に配慮した、ユーザーにとって最適なアンテナソリューションを提供している。
 ノキアソリューションズ&ネットワークスは、各トライアルサイトで導入された機器類を実機展示した。同社の「Flexi BTS Rel.3 System Module(FSMF)は、高容量ベースバンドで拡張性のあるシステムモジュール。主な特長は次の通り。▽GSM、WCDMA、FD/TD―LTEに対応したMulti―Radioプラットフォーム▽高容量ベースバンド▽拡張モジュールを追加することで様々な容量/用途に対応▽Ethernet transportを標準サポート▽LTE―Aに対応。
 京セラは、PS―LTEの商用化を見込んだ携帯端末を紹介した。「TORQUE G02」は、世界初の耐海水性能を備えた機種。米国防総省が定める耐久試験「MIL―STD―810G」の19項目に同社独自の耐久試験2項目を加えた21項目に準拠した高い堅牢性が特長だ。さらにアウトドアで役立つ情報が一覧で確認できるポータルアプリを搭載した。
 ピクセラは、次世代業務用無線通信システム(PS―LTE)を使った家庭用IoTサービス「Conteホームサービス」を接続検証に関して展示した。これは、移動無線センターのPS―LTEの実証実験において提供されるLTEネットワークサービスを使った同社の家庭用IoTサービス。技術検証内容は、同PS―LTE網におけるアルティアセミコンダクター製LTEチップセット(CAT―1)での接続検証と、同網における「Conteホームサービス」の接続検証だ。ドアセンサーやマルチセンサー、センサーゲートウェイ、IoTサーバー、スマホアプリ等を用いて、ドアの開閉で少しの振動でドアの鍵がロックされるところなどを見せた。
 三菱ガス化学は、市ヶ谷局で使用した直接メタノール形燃料電池システム(500㍗級、品番:MGC―FC56)を展示した。非常用電源、無停電電源、独立電源用途で、災害停電時のBCP(事業継続計画)の確保や、商用電源が使用できない場所での電源確保に最適だ。無人無線基地局用の無停電電源として、ゴルフ中継時の独立電源としても使用されている。充電不要で連続駆動が可能。長時間(数日~)の電力供給が可能だ。

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