行政

多言語翻訳技術の性能向上へシンポジウム

20201225日】

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武田総務大臣

 グローバルコミュニケーション開発推進協議会(須藤修会長)は12月11日、「グローバルコミュニケーションシンポジウム2020」(主催:グローバルコミュニケーション開発推進協議会・国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、後援:総務省)をオンラインで開催した。グローバルコミュニケーション計画の歴史と成果、そしてニューノーマル時代に求められる様々なコミュニケーション⼿段を想定した多言語翻訳技術の重要性や2025年までの計画を語った。
 冒頭、須藤修同会会長が次のようにあいさつした。
 「当協議会は、発足以来言葉の壁がない世界グローバルで自由な交流ができる社会を目指し、産官学が一体となり多言語翻訳技術の性能向上とその成果の社会実装を推進してきた。その甲斐あって現在では、様々な種類の翻訳端末やアプリが登場している。窓口では音声翻訳、企業内でのテキスト翻訳、手軽に自動翻訳サービスを導入するためのプラットフォームなど、これからもそのニーズは増えていくものと考える。今年3月には『グローバルコミュニケーション計画2025』が総務省によって新たに策定された。この計画では、2025年までにAIによる同時通訳を実現し、日常生活からビジネスまでを広くカバーするものとなっている。当協議会としてもこの新しい計画を踏まえ、総会で新たな体制を整えたこともあり、多言語翻訳技術の更なる高度化や社会実装の促進に取り組んでいく。
 一方、多言語翻訳サービスが様々な業種に展開され、お客様からのニーズにこれから応えようとしている矢先に、新型コロナウイルスにより世界中の経済が停滞している。海外旅行により日本を訪れる外国人が減り、第3波により〝Go to〟イベントが縮小/先送りされる状況に、業界団体に皆様は今後について心配されているのではと拝察する。このため本日は、〝ニューノーマル時代〟をテーマに掲げた。ポスト・コロナ時代の多言語翻訳システムの重要性を多くの方が共有することで、今後のサービスの更なる進化、普及、発展につながることを期待する」。
 続いて来賓あいさつとして、武田良太総務大臣が次のように話した(ビデオメッセージ)。
 「総務省では、世界の言葉の壁の解消を目指し、『グローバルコミュニケーション開発協議会』の皆様とともに、多言語翻訳技術の推進に取り組んできた。これまでの取り組みにより、情報通信研究機構(NICT)が開発した〝VoiceTra(ボイストラ)〟の翻訳精度が飛躍的に向上し、対応言語も拡大してきた。この成果を活用し、既に多くの翻訳機や翻訳アプリが社会に広く普及しており、観光、自治体窓口、病院、交通機関など、日常生活の様々な場面で利用されるようになってきた。これらはまさに、オールジャパン体制で取り組んできた技術開発と社会実装の大きな成果だと思っている。
 日本に住まいや仕事を持つ在留外国人は年々増加・多国籍化している。また現在は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響をうけているが、今後の受け入れ拡大やインバウンドの拡大を見据え、多言語対応は引き続き重要な課題だ。加えて、海外とのオンライン会議など、リモート化とグローバル化がますます進展している。そのようななか、国際会議やビジネスの場面などにおいて、十分なコミュニケーションを可能とする同時通訳のニーズが高まっている。さらに、2025年には大阪・関西万博を控えている。多言語翻訳技術にも高い期待が寄せられており、日本の技術を世界に示す絶好の機会だ。そのため総務省では多言語翻訳技術の更なる高度化を推進すべく、本年3月に『グローバルコミュニケーション計画2025』を発表した。2025年までに在留資格の対象であるネパール語やクメール語、モンゴル語にも対応するなど、さらに多言語対応を進めるとともに、AIによる同時通訳を実現し、社会に実装することを目指して産学官連携による研究開発の推進とNICTのAI研究環境の強化に取り組んでいく。こうした取り組みにより、言葉の壁の解消に一層努めるとともに、産業の活性化や新たな市場創出、利用者利便の一層の向上を図っていく」。
 次に、基調講演として松田憲幸ソースネクスト社長が『新しい常識をつくる』のタイトルで講演した。同社は、自動通訳機「POCKETALK(ポケトーク)」を開発した会社として知られる。その後、木俵豊NICT 先進的音声翻訳研究開発推進センター研究開発推進センター長が「グローバルコミュニケーション計画2025における多言語音声翻訳技術の研究開発」のタイトルで講演した。木俵センター長は冒頭、翻訳技術の進展の観点から〝VoiceTra(ボイストラ)〟の説明を行い「我が国では2014年から国家プロジェクト『グローバルコミュニケーション計画』が推進され、翻訳技術の実用化が進んだ。〝世界の言葉の壁を無くす〟をミッションに、東京オリンピック/パラリンピックまでに多くの外国人が訪れる日本で〝言葉の壁〟を感じさせない社会をつくることを目指した研究開発だった。〝オールジャパン〟の研究開発を行った結果、VoiceTraの技術は世の中に広く普及するようになった」と語った。
 次に「ビジネスの世界では長文の翻訳が必要となる。このコロナ禍においてNICTでは、以前から製薬業界と研究開発を進めている成果が活用され、翻訳データの提供を受け製薬業界向けの翻訳エンジンを強化している。これにより、従来1カ月の時間が必要だった業務を2週間に短縮させることができた―と高い評価を受けた。新型コロナウイルスのワクチン開発においても、我々の技術が活用されることを期待している」とビジネス向けの長文翻訳においても成果を発揮できていることを強調した。
 さらに「多言語翻訳技術は〝翻訳から通訳へ〟という、新たなフェーズへ動き出している。今年3月に総務省から公表された『グローバルコミュニケーション計画2025』では、2025年までにAIによる同時通訳技術を開発/実用化するというものだ。この計画をもとに、グローバルコミュニケーション開発推進協議会を新たなフェーズへと進化させた。同時通訳を実用化させるため、更なる研究開発/実用化の促進を進めていく予定だ」と続けた。
 今後については「現在、新型コロナウイルス感染症の影響で海外からの人に往来が困難となっているが、グローバルで研究開発や事業を行ううえでは〝言葉の壁〟を壊すということをやっていかなければならない。ビジネスや国際会議の場における翻訳は大きな課題だ。『グローバルコミュニケーション計画2025』では文脈・話者の意図を補うレベルの同時通訳技術を目指すことが掲げられている。そのために、様々なプロジェクトが検討されている。多言語翻訳システムについては現在の技術をさらに発展させ、交通や医療などだけでなく、AIやICTなどを利用し利便性向上のため、VRやデジタルサイネージを組み合わせた技術の研究開発/実用化を目指していく。同時通訳システムについては、セミナーやショールーム、海外からの観光旅行者への旅行ガイド、防災、救急対応への活用を期待したい。さらに国際会議などでの利用も検討している。5G環境で、マルチデバイスでVRなど様々なものと連携しながら翻訳を行うということも必要と考える」と展望した。
 最後に「現在、新型コロナウイルス感染症の影響で移動が制限されているなか、このようなシステムが5年後には実現できている。このような技術が開発されることで移動が制限される状況であっても人々の交流が成り立つのではないか。NICTでは、〝世界で最も言葉の壁を感じさせない国は日本だ〟と実感できる社会をつくりたいと考え研究開発を行ってきた。これはある程度成功したのではないか。現在、この技術が2025年において普通であることを目指して研究開発を行っている。このような研究開発を推進していきながら皆さんに使ってもらえる技術を『グローバルコミュニケーション計画2025』のなかで作り上げていきたい」と述べた。
 講演の後はパネルディスカッションが行われ、閉会した。

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