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NHK 児玉技術局長インタビュー 4K・8Kの普及に先導的な役割を果たす

20191118日】

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 4K・8K放送が開始されて約1年が経過した。また、東京オリンピック・パラリンピックまで約8か月というタイミングで開催される今年の「InterBEE」。新しいメディアコミュニケーションとエンターテインメント総合イベントとして年々存在感を高めている。NHK 技術局長の児玉圭司氏に、4K・8K放送の現状、IP化、常時同時配信、NHKブースの見どころなどについて聞いた。

 ――4K・8K放送がスタートして約1年が経過しようとしていますが、現在の手ごたえは?
 児玉 NHKでは、視聴者の皆さまに「放送の新しい価値」を楽しんでいただけるように、BS4Kは、超高精細な映像を身近に楽しんでいただくための“入り口”として、幅広いジャンルの番組を編成してきました。BS8Kは世界で唯一の8K放送ということで、圧倒的な映像や音響にこだわった最高品質のフラッグシップチャンネルという位置づけで、臨場感あふれる8Kならではのコンテンツを放送してきました。また放送だけでなく「スペシャルな感動と体験」を実際に味わって頂くため、全国各地でパブリックビューイングや受信公開を開催してきました。
 今月2日に閉幕したラグビーワールドカップ2019では、日本代表が活躍したということもあって、放送はもちろん、各地でのパブリックビューイングでも大変な盛り上がりを見せ、好評を得ました。放送を開始してこれまで、4K・8Kの認知や受信機の普及状況など、良い滑り出しをしているのではないかと受け止めています。
 9月末から、デイリーニュース番組「BSニュース4K」の放送を開始しました。これについて設備面でも、ニュース送出設備やファイルベースシステムなどを4K化しました。あわせて、日本全国の旬な話題を取り入れるために、各放送局から渋谷の放送センターに番組素材を4Kで伝送する仕組みも整えました。また、来年度以降放送する連続テレビ小説に向けて、放送センターと大阪拠点放送局のスタジオや編集設備などの4K化を完了しました。今後も様々な番組を高精細映像でお届けすることができると思います。是非ご期待下さい。
 いよいよ「2020東京オリンピック・パラリンピック」の開催まで8か月あまりとなりました。スポーツの歴史に残る新たなドラマが繰り広げられることを期待していますが、その瞬間を8Kの超高精細の映像と臨場感溢れる音響で世界の皆さまにお届けし、また後世にも残していきたいと思います。中継車やカメラ、編集機、伝送設備など、放送を届けるために必要な設備を計画的に準備してきており、大詰めを迎えています。
 今後とも、多くの方々にBS4K、BS8K放送をお楽しみいただけるよう、設備面でもしっかりと対応していきたいと思います。
 ――8Kの海外展開についてはいかがですか。
 児玉 世界に先駆けて8K放送を開始したNHKでは、普及推進の面でも先導的な役割を果たしていかなければなりません。そういった意味でも、NHKは海外のテレビ局や制作会社と8K番組に関する国際共同制作を行っています。
 これまでの国際共同制作は、欧州のテレビ局や制作会社と、クラッシッ四川省ガルゼチベット族自治州」という番組を国際共同制作しました。制作を終えて北京テレビのテクニカル・ディレクターは、8K制作を通じて「8Kは、映像に感情をもたらすことができる。」と評価しています。また、サンフランシスコの制作プロダクションとの共同制作である「ザ・シティ 生きている都市」では、8Kが持つ表現力を駆使して、新しい切り口で「ベネチア」「サンフランシスコ」そして「ハバナ」という、それぞれ文化が異なる3都市を彩り豊かに描くことができました。
 世界最大のコンテンツ見本市MIPCOM2019では、MIP史上初めて8Kの大型スクリーンを設置し、8Kドラマ「浮世の画家」を上映ました。主演である渡辺謙さんにも登壇していただき、8Kの魅力について語っていただきました。非常に好評で、世界のトレンドが8Kに向かっていく流れを作ることができたと実感しています。今後も4K・8Kの普及について、先導的な役割を果たしていきます。
 ――放送におけるIP化の進捗と課題についてお聞かせください。
 児玉 これまで放送局は番組の制作・伝送・放送に至るまで、専用のシステムを構築し、運用してきました。放送の映像伝送に求められる伝送容量や、同期の性能を満たす技術が他になかったので、独自の専用システムを構築してきたのです。昨今、ネットワークの普及にともなって、IPの大容量化や処理速度が向上しています。こういった背景により、放送のシステムもIPの技術を取り入れる動きが拡大しています。IPならではのメリットとして、ケーブルの削減やネットワークの統合など、システムの小型化が可能になります。また、IPのインターフェースによって、様々なアプリケーションとの連携が容易になるため、新たな機能を加えるなど、これまでにないシステムが実現できるという拡張性があります。また、インターネット設備の汎用機器が使えるため、システム構築の際のコスト削減も期待できます。ただし放送設備のIP化の実現に向けては、機器間の接続や運用方法についてしっかりと検証していかなければなりません。
 この数年で、SMPTEの規格がほぼ出そろってきました。IP伝送規格ではST2110、ネットワーク上の機器間の同期に関する規格ST2059など、これらが整ってきたので、国際標準規格に対応した装置の開発がメーカーやベンダーで進んでいます。素材伝送、映像編集からニュース・番組送出まで、IP活用の可能性は大きく広がりますが、その接続の実現には検証が必要です。NHKでは、IPリモート制作の環境構築やベンダー間におけるIP機器の相互接続に関する実証を進めています。
 また、スポーツ中継でのIPリモート制作の運用検証にも取り組んでおり、10月のラグビーワールドカップ2019「日本vsサモア」「日本vsスコットランド」戦では4K―IPリモート制作を実施しました。引き続き、様々なノウハウを蓄積しながら、IPスキルを有する放送技術者を育成しつつ、効率的なワークフローの実現に向けた検証を進めていきます。
 ――常時同時配信に向けた技術サイドの取り組みはいかがでしょうか
 児玉 昨今のインターネットの利用拡大や、携帯端末の急速な普及が進むなかで、視聴者の皆さまのコンテンツ視聴や情報取得のあり方は多様化しています。NHKは、視聴者・国民の利便性を高めるため、放送を太い幹としつつ、インターネットも適切に活用して、正確な情報や多彩な番組を届け、信頼される「情報の社会的基盤」としての役割を果たしていきたいと考えています。
 そのために必要となる制作、配信、認証など、基盤システムの整備について、最新の知見も活用しながら、適正な規模で効率的・効果的に整備を進めていきたいと考えています。

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