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棚山社長「成長牽引事業の創出に取り組む」 三菱電機 経営戦略説明会&研究開発成果披露会

【2017年06月05日】

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▲ 経営戦略について説明する棚山社長

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▲「電波見える化技術」のデモ。トンネル内の通信負荷エリアが特定できた

 三菱電機は5月22日、本社会議室(東京都千代田区)で「2017年度経営戦略説明会」を開き、棚山正樹執行役社長が中期経営戦略の進捗状況と今後の方針などを説明した。
 三菱電機が2014年度からスタートした中期経営計画では、創業100周年を迎える2020年度までの成長目標に「連結売上高5兆円以上、営業利益率8%以上」 を、経営指標に「ROE10%以上、借入金比率15%以下」の目標値が定められている。
 棚山社長は2016年度決算を振り返り、「売上高が前年同期比4%減の4兆5386億円、営業利益は同10%減の2701億円だった。前年度に比べ為替が円高で推移したため減収・減益となったが、為替の影響を除けば増収・増益だった。ROEは10・9%、借入金比率は8・4%で目標を達成した」と報告。また2017年度は売上高前年比1・4%増の4兆3000億円、営業利益3・7%増の2800億円と見通した。
 これまでの取り組みについて棚山社長は「成長牽引事業群(電力・交通・ビル・FA・自動車機器・宇宙システム・パワーデバイス・空調冷熱)を中心に積極投資や事業ポートフォリオの強化に取り組んできた」と説明。
 今後の方針については「従来は技術と技術の組み合わせによる技術シナジーにより、強い事業を生み出してきたが、今後は強い事業をより強くするとともに、強い事業同士を組み合わせた『事業シナジー』により新たな事業の創出にも取り組みたい」と述べ、三菱電機の強みである家庭電器から宇宙、人工衛星まで幅広い製品・事業を組み合わせ、エッジコンピューティングやAI技術なども積極導入を図り、自動運転などの新たな成長牽引事業を創出して経営目標を達成していきたいとの考えを示した。
 5月24日には国際フォーラムで三菱電機主催の「研究開発成果の披露会」が開かれ、開発本部の藤田正弘本部長が研究開発戦略と研究開発成果を発表した。
 研究開発方針について藤田本部長は、IoT/スマートモビリティ/快適空間/インフラの4つのカテゴリーで研究開発を進め、開発期間も短期・中期・長期に分けバランスよく開発を進めることで、社会の課題解決に即応していくとした。
 研究体制について藤田本部長は「他の企業・研究機関との連携を進めながら、研究規模をさらに拡大していく。2017年の研究開発費は前年比約5%増の2120億円を投じる。内訳は短期的研究に50%、中期に30%、長期に10%。研究テーマ全てに通じる基盤技術に10%を予定している」と発表した。
 さらに藤田本部長は新たに三菱電機のAIブランド「Maisart(マイサート)」の立ち上げを発表し、特に注力する分野に向けて活用していく方針を示した。
 「独自のAI技術で全てのものを賢く(Smart)したいとの思いから『Mitsubishi Electric’s AI creates the State―of―the―ART in technology)』から命名した。すでに音声分離技術などの新技術に採用されている」(藤田氏)と述べ、AIブランドの確立により様々な分野へ導入を進めていく姿勢を強調した。
 会場では研究開発成果の発表会が行われ、20件の開発成果が披露された。新規発表の「IoTを支える電波見える化技術」は、無線通信の電波強度を高速・高精度に把握し、無線機器の最適配置を支援する技術だ。対象空間の3次元モデルを構築し、実環境に近い条件での電磁界シミュレーションを行う。
 電波強度の計測手法である「レイ・トレース法」と電波の実測データベースから電波減衰の特性を抽出した統計モデルを併用して、計算時間を100分の1に短縮する。電波減衰を予測する統計モデルは、オフィスや商業施設など個々の電波環境の電波強度を多数実測して構築し、従来モデルと比較し最も高い精度を実現。無線システム導入の際の時間とコストの低減に貢献する。
 会場では実際にトンネル内の基地局配置を想定し、電波の届きにくいトンネル内で、カーブの内側などの受信電力が低い通信負荷エリアを特定するデモが披露された。
 開発担当者は「トンネル内で等間隔に基地局を設置すると基地局の数が多くなったり通信不可エリアが生じたりします。この技術を用いることで、基地局の最適配置により基地局の数を削減するとともに、通信負荷エリアも解消できます」と説明した。同じく新規発表の「AIを用いた音声分離技術」は、1本のマイクで録音した複数話者の同時音声を、独自のAI技術「ディープクラスタリング」により分離と再現を可能にした世界で初めての技術だ。
 「ディープクラスタリング」の仕組みは、ディープラーニングを使って音声成分の特長から話者を分類する変換処理を学習させるというもので、学習した変換処理を入力音声に適用し、クラスタリング処理で音声成分を分離し、分離した音声成分を合成することで各話者の声を再現していく。
 事前に登録していない3者の同時音声の分離・再現では原音再現率80%以上、2者の同時音声では同90%以上の高い精度で、従来の51%から大幅に向上した。
 会場では2者によるデモンストレーションが行われ、2人同時に話した聞き取れない音声を、ノートパソコンに入ったシステムで10秒ほどで分離し、それぞれの音声を再現する技術を披露。担当者は「自動車・家庭・エレベーターの中などの音声認識システムとしての実装を目指していきたい。音声通話の品質改善や認識性能の向上に取り組んでいきたい」と展望を語った。
 参考出展の「ポータブル3Dマッピングシステム」は、マルチセンサーを搭載した装着型の計測システムで、広域空間を簡単に3Dデータ化できる。GPS不要で数百平米以上の広域空間にも対応し、3D点群データを即時に取得することが可能だ。
 会場では実際に装置を背負って歩いた空間を、撮影と同時にほぼリアルタイムに3D化するデモが行われた。担当者は「建設・建築関連や放送分野などからのお問い合わせをいただいている。屋内3Dナビや設備管理、放送コンテンツ制作などに需要を見込んでいる」と説明し、2018年度以降の実用化を目指し研究開発を推進していきたいとした。 

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