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産総研 ポータブルなクランプ型精密電流計を開発

【2016年08月05日】

 国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研、中鉢良治理事長)の物理計測標準研究部門応用電気標準研究グループおよび量子電気標準研究グループと、寺田電機製作所(寺田義之社長)は共同で、60Aまでの直流電流をクランプ型の電流センサーで精密に測定できるポータブル電流計を開発したと発表した。
 電気機器の研究開発や電気設備の運用では電流計測が重要であり、電気配線への取付け・取外しが容易なクランプ型の電流センサーが広く使用されている。しかし、クランプ型の電流センサーは、取扱いが簡便である反面、使用環境の影響を受けて誤差が生じてしまうため、測定精度に限界があった。特に近年、直流による給電(直流給電)が進んでいるが、直流の電流測定の際にその問題は顕著だった。
 今回、新たな構造の直流電流用クランプ型センサーと直流電流計を開発し、測定値の誤差を自動検知・補正する機能を付加して測定精度を大幅に向上させた。さらに、小型化・省電力化を進めて、電池駆動で持ち運び可能な電流計を実現した。
 今回開発した電流計を電気設備の工事現場や電気自動車の開発現場、大規模な直流給電が行われるデータセンターなどで用いることで、容易に高精度な直流電流計測が可能となる。今後、工事現場や開発現場における不具合の早期発見による安心・安全・信頼の向上、データセンターでの電力モニタリング精度向上によるさらなる省エネの推進への貢献が期待される。
 太陽光発電や燃料電池に代表される分散型電源や、電気自動車などの、直流の電気を利用する機器の普及が進んでいる。また、データセンターでは電力消費量削減のために直流給電の導入が進んでいる。このようなシーンで電気を効率的に利用するには、簡便に直流電流を精密測定できる電流計が必要とされている。また、直流電流計には、持ち運び可能で、商用コンセントが利用できない車内や工事現場のような環境でも使用できる利便性への要求も高まっている。一方で、簡便に直流電流を測定できるクランプ型の電流センサーでは、使用環境の影響によってセンサー部で生じる誤差が問題となっていた。
 産総研では、電気計測の基準となる国家計量標準を開発・維持するとともに、それらの開発で培った精密計測技術を活用して、高精度なセンサーや計測装置の開発およびセンサーや計測装置を評価する技術の研究開発を行っている。一方、寺田電機は、通信設備や電気設備に関連する計測機器の開発・製造を行っており高い技術力をもっている。
 今回、産総研と寺田電機は、直流の電気を効率的に利用するための新たな計測ニーズに応えるため、簡便で高精度の直流電流計の研究開発に共同で取り組んだ。
 電流が流れると、その周囲には磁界が生じる。この磁界の大きさに応じた電気信号を出力するホール素子を利用すれば、非接触で直流電流を測定できる。しかし、この原理を利用した従来型のクランプ型直流電流センサーは、ホール素子のオフセットとその変動やセンサー部の磁化(着磁)による誤差が生じるため、高精度測定は困難だった。
 そこで、電流計のクランプ型センサー部分に、着磁を検知し消磁を自動で行う機能や、ホール素子出力のオフセットとその変動を検知し補正する機能を開発、付加した。
 これらの機能を担う部分の小型化を進め、アタッシェケース(縦406ミリメートル、横499ミリメートル、高さ192ミリメートル)内に上述の機能を備えた精密電流計を実装した。センサーを含めた電流計全体の重量は約8.2キログラムで、容易に持ち運びできる。また、省電力化にも取り組み、商用コンセントが利用できない車内や工事現場のような環境でも使えるよう、内部バッテリーにより最大4時間の駆動を可能にした。
 そして、評価実験を積み上げ、最終的に開発したポータブル精密電流計の測定精度を0.1%程度と評価した。これは従来型と比べて約10倍の精度向上にあたるという。
 今後、産総研と寺田電機は、今回、共同で開発したポータブル精密電流計の製品化を目指す。また、ポータブル精密電流計開発で培った技術を他の測定器へも応用していく予定としている。

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