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平成28年・日本民間放送連盟賞技術部門「優秀賞」 現行地上波でHDと4Kサイマル視聴を提供する番組技術 フジテレビジョン

【2016年11月09日】

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▲ フジテレビジョン総合技術局技術業務センター
技術開発部・伊藤正史氏
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▲ 2015年12月12日にフジテレビで放送された
『4Kランドスケープ』(関東ローカル・午前4
時40分)。4K制作番組された『タイムトリップ
軍艦島』や4K撮影された映像素材『長崎教会群』
のダイジェストなどをハイビジョン映像に変換し
て放送。画面のボタンを押すだけで2K放送と4K映
像配信の切り替えができる。

 フジテレビジョンは「現行地上波でHDと4Kのサイマル視聴を提供する番組技術の開発」で優秀賞を受賞した。
 同技術は、ハイブリッドキャストの新機能を使い、地上テレビ放送でHD放送と同期した4K映像の切替視聴を行う世界初の試み。昨年12月、ハイブリッドキャストに加わった、MPEG―DASH方式によるH・265/HEVCの4K動画再生機能を利用し、地上テレビ放送と4K映像配信の同時提供を実現する。地上テレビ放送と4K映像配信の切り替えはワンタッチで、視聴者はあたかもサイマルで4K番組を視聴するような効果を得られる。また、4K配信映像を視聴している間に、緊急報道や緊急地震速報が発せられた時は地上テレビ放送へ強制復帰させ、視聴者の安心・安全を確保する機能も盛り込まれている。本技術は、現行の地上テレビ放送で4K番組を提供する有望な手法の一つとして期待されている。さらに、開発成果を関係業界全体で共有し、地上テレビ放送の高度化に貢献したことが高く評価された。
 研究・開発を担当したのは、フジテレビジョン総合技術局技術業務センター技術開発部主任の伊藤正史氏。伊藤氏は2014年12月頃から研究に着手し、15年5月のNHK技研公開の展示協力でアイデアと最初の実装を発表した。そして同年12月12日午前4時40分からフジテレビ(地上波)で放送された番組「4Kランドスケープ」において、実証実験を実施した(関東ローカルのみ)。番組では、ハイブリッドキャスト対応4Kテレビの画面に4K切り替えボタンを表示させ、ワンタッチで切り替えて、4K配信映像が地上波放送でも視聴できることを実証した。
 伊藤氏は「メディア技術が激動の時代を迎え、テレビで4Kなどの最新技術を早期に提供できないか考えていた中、ハイブリッドキャストに新しく加わった機能を使えば現行の地上波放送でも4K映像の番組を提供できるのではないか、と着想したことがきっかけとなった」と開発動機を話す。しかし前例がないため、ゼロの状態からのシステム構築は大変苦労したという。「特にMPEG―DASHに適したHEVCでの4Kエンコード作業には、当時は30分の素材でも1~2日ぐらいかかっていた。エンコードした結果、テレビで再生できないことも多々あった。クラウド技術やCDNと呼ばれるコンテンツ配信技術など、トライ&エラーで一つひとつ取り組んだ。」と話す。
 同技術には、CM送出に関する機能も盛り込まれている。リアルタイムの放送でCMが入った時は、4K映像配信側でもCMを入れたり、放送映像のCMに戻したりできる。そして本編に戻ると、配信映像も同様に本編を再開することができる。この機能により、放送でも配信でもCMを届けられるという。「この技術を使えば、同じ放送エリア内でも、配信側で個人に応じたCMを流すことができる。これは将来的に民放のテレビ広告価値のさらなる向上に繋がる可能性を持つのではないかと思っている」(伊藤氏)。
 基本技術は完成している。現在の進捗状況は、多くの視聴者が同時視聴した場合の負荷や、より多くの受信機機種への対応、そして他の放送局が同じ技術に取り組みやすいよう、技術規格の標準化活動や広く技術公開などに努めている。
 今回の受賞と今後の展望について伊藤氏は「弊社だけでなく、他局や受信機メーカーなど放送業界の大勢のエンジニア仲間との交流があって、技術開発に取り組むことができた。特にNHKの研究者には共に研究にあたる中で、多くのことを教えていただいた。皆さんに深く感謝している。IT化して進化が早くなった放送技術の世界では、オープンイノベーションの力がより大きくなると思う。放送業界の技術者全体で切磋琢磨しながら、視聴者にワクワクするようなメディア技術を届けていけたらと考えている」と意気込みを話している。

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