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平成28年・日本民間放送連盟賞技術部門「優秀賞」 「ノンリニア編集におけるリアルタイムテロップ機能“iTake”の開発」 テレビ朝日

【2016年11月09日】

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 ▲(左から)島田了一氏、磯田健一郎氏、
  大松浩一郎
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  ▲ 実際に編集しているときの様子

 テレビ朝日は「ノンリニア編集におけるリアルタイムテロップ機能“iTake”の開発」で、優秀賞を受賞した。テレビ朝日は報道編集設備をリニアからノンリニアへの移行を進めている。ノンリニア編集の方が様々な面で便利だが、テロップ付けに関してはリニア編集の方がやりやすいという。このため、是非ノンリニアでもリニアと同じようなテロップ付けの仕組みを開発して欲しいという強い要望が報道編集の現場からあった。これを受けて開発に着手した。今回受賞した技術の特徴や工夫したところなどを、技術局コーポレートデザインセンターCG担当部長の島田了一氏、技術局コーポレートデザインセンター兼ニュースセンターの大松浩一郎氏、報道局映像センター映像編集班の磯田健一郎氏(フレックス)に聞いた。
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 テロップ付けはリニア編集の場合、編集した白素材を再生しながら、同時にテロップ付けを行い、合成結果をテープ収録して完成となる。テレビ朝日では、構成を考えるディレクター自らがテロップを貼り付ける。予め用意したテロップを把握していることや、ボタン操作が簡単なためだ。一方、従来のノンリニア編集の場合は作業がやや煩雑である。プレビューしながら、テロップを挿入したいタイミングがくると、まず再生を止める。次にテロップ素材をウィンドウからドラッグ&ドロップしてタイムライン上に載せる。そして再度プレビューを開始してどこまでテロップを使うか確認し、再生を止め、テロップの尺を伸ばす。
 
 このようにプレビューの再生停止を繰り返しながら、テロップの尺調整する必要がある。さらに、ノンリニア編集機の操作方法は複雑なため、編集マンしか操作できず、ディレクターは指示のみで直接操作はできない。
 「報道の現場は時間との勝負です。その上、速さと同時に、正確でなければならないという使命があります。VTRの内容について正確さを期すために何度でもプレビューして確認したいので、その時間を確保することが重要になります。ノンリニア編集への移行の最大の関門がテロップ付けでした。テロップ付けのフローをどうスムーズにして確認作業の時間を生み出すかについて何度も議論しました。移行前に、ノンリニア編集にした場合をテストしたのですが、時間不足でリニア編集のクオリティの半分ぐらいになってしまいました。これが開発のきっかけとなりました」(磯田氏)。
 そこで開発したのが“iTake”である。ノンリニア編集で映像を再生(プレビュー)したままで、スーパーボタンを押してテロップ付けできる機能である。具体的に工夫した点については大きく3つあったという。「1つ目は、局内のテロップシステムとノンリニア編集機のEDIUSの連携です。その結果、テロップを修正すれば、タイムライン上にあっても自動的に修正結果が反映され、リニア編集のようにテロップを貼り付けなおす必要がなくなりました。2つ目は、変換(レンダリング)機能の外出しです。プレビュー時にスムーズに再生できるようになりました。EDIUS端末上では、動画テロップはAVI、静止画テロップはtiffに変換して扱いますが、その変換処理が非常に重く、プレビューでフレーム落ちするケースが見られました。そこで変換機能を外に出すことにしました。テロップを作ると、裏でレンダリングサーバにテロップ素材を送り、AVI/tiffに変換して、テロップファイルサーバに格納させます。テロップが呼び出されると、既に変換済みの素材が再生されるようにしました。3つ目の工夫は、UIです。プレビューを止めずにテロップを貼ることを“流し付け”と呼んでいますが、この流し付けをやりやすくするために、ディレクター目線で画面や操作ボタンなどを設計しました」(大松氏)。
 UIについては、EDIUSの製造元であるグラスバレーが実装した。「当初はテロップシステム側の開発がメインで、EDIUS側には最小限の変更をお願いするつもりでした。しかし、仕様検討の段階で、グラスバレーさんから『非常に汎用性の高い機能なので、是非、標準搭載したい』というお申し出がありました。アイディアと開発環境は我々が提供し、実現はグラスバレーさんから提供して頂くという、WIN―WINの関係ができたと思っています」(島田氏)。
 最後に、今後の抱負を磯田氏は次のように語った。「速く正確にというのが開発コンセプトで、それを実現させたものができましたが、こういう機能はこれからどんどん出てくるでしょう。皆と情報を共有しながら、引き続き、編集作業を速く正確にするために試行錯誤していきたいと思っています。また、編集者という使う側の人間としては、運用が始まったこれからが勝負です。編集が便利になった分、よりクオリティの高い映像を作って、関係者ひいては視聴者に恩返ししたいと思っています」。

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