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平成28年・日本民間放送連盟賞技術部門「優秀賞」 「スポーツ生中継用超小型審判目線カメラの開発と現場導入」 日本テレビ放送網

【2016年11月09日】

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       ▲ 髙橋一徳氏
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     ▲ 野球審判カメラマスク

 日本テレビ放送網は、「スポーツ生中継用超小型審判目線カメラの開発と現場導入」で優秀賞を受賞した。
 野球の球審マスクに小型カメラを装着し、球審目線の映像を放送する試みは2011年に始まった。迫力あるその映像は視聴者から高い評価を受けた。一方、球審達の評判はかならずしも良いものではなかったという。当時使用していた機材はカメラ部だけでも約200㌘と重かった。球審マスクは年々改良され、約500㌘にまで軽量化されている。500㌘のマスクに200㌘のカメラではバランスが悪く、ジャッジに支障が出る懸念もあった。カメラ装着の可否は当日の球審が決めるため、カメラ取り付けを断られることも少なくなかったという。試合によって、審判カメラの映像があったり、なかったりすることは避けたいため、同社では、ジャッジの邪魔にならない超小型カメラの開発を行うことを決意した。
 研究開発を担当した同社技術統括局制作技術統括部の高橋一徳氏は「開発に当たっては、小型・軽量なことは当然ですが、高画質も追求しました。小型・軽量化と画質について、どこで折り合いをつけるかということではなく、どちらにもこだわって開発しました。さらに、低価格化についても考慮しました」と語る。「GoPro」に代表されるアクションカメラはすでに市場に出回っていたが、そのほとんどはメモリーに記録するタイプであり、生放送には使用できない。また、出力もHDMIでプログレッシブが多かった。「生放送で使用することが前提のため、そのまま電波に変換して、リアルタイムでスイッチャーに入力できる必要があるため、カメラ本体からHD-SDIで出力することを目指しました。また、プログレッシブ出力では独特の“パラパラ感”がどうしても目についてしまうため、インターレスで出力するということの2点が大きなポイントとなりました」(高橋氏)。
 当時、要望を満たすカメラを共同開発できるメーカーがほとんどなく、パートナー探しは難航したが、放送用カメラやセキュリティーカメラに深い知見を持つ「おいぬビジョン」が賛同したことで開発は加速した。日本テレビ、グループ会社の日テレ・テクニカル・リソーシズ、おいぬビジョン3社のリソースを結集して開発したのが今回の受賞製品となる。カメラモジュール重量は約40㌘に軽量化を実現、モジュールサイズも幅26×縦26×レンズ込み全長約45㍉と大幅に小型化している。カメラモジュールは、4枚の基板により構成されており、信号ラインを最適化することで超小型化を実現、基板も一般的な6層基板を使用することで低コスト化をはかっている。また、画質劣化につながる近赤外線を除去するため、特性の異なるIRカットフィルタを複数枚重ねることにした。しかし、IRカットフィルタは様々なものがあり、組み合わせにより大きく特性は変化する。パラメーターだけで組み合わせても上手くいかないため、実際に様々な組み合わせをトライ&エラーで試しながら理想的な組み合わせを模索したという。
 「球審からは『軽くなって、ジャッジに影響がない』と好評で、問題なく装着していただけるようになりました。また、レンズ交換が可能で様々な画角で撮影できるため、ディレクターからも『(以前のカメラよりも)引けて、迫力が増した』と高い評価を受けています。さらに、野球以外への展開も進めています。例えばラグビー審判の場合は、激しい動きに対応する必要がありますが、野球と違いマスクをしていないため、フィッティングテストを繰り返し、安全で確実な装着を実現しました。これら多様な装着対応を経験することで、レスリング、アメフト、バレーボールなど、多くの審判目線映像中継を可能にしています」(同氏)。
 同カメラの販売はおいぬビジョンが担当しているが、今回の受賞をきっかけに各所から様々な話が同社に寄せられているという。「できる範囲で協力する方向です。技術は1社で抱えているのではなく、広く普及することが大事です。実際、他で使用された映像を見て、このような使い方があるのかと参考になったケースもあります」(同氏)
 最後に高橋氏は「今回の受賞は私一人の力ではなく、様々な方の協力によるものです。個人的非常に嬉しいですが、『皆様ご協力ありがとうございました』というのが率直な気持ちです。2020年に向けて、スポーツをもっと面白くするために色々なものを作っていきたいので、皆様さらなるご協力をお願いします」と述べた。

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