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『デジタルタクシー無線』/デジタル化移行を達成し、タクシー無線の高度化AI化めざす

【2016年12月21日】

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 本年6月、タクシー無線デジタル化の移行期限であるアナログ無線の使用期限を迎えた。6月16日には、一般社団法人全国自動車無線連合会(全自無連、会長:坂本克己日本タクシー会長)と一般社団法人関東自動車無線協会(関自無協、会長:高野公秀グリーンキャブ社長)が、デジタル化移行の取組みを総括した「第56回通常総会」を東京都港区六本木の六本木アカデミーヒルズ49階タワーホールで開き、無線のデジタル移行を乗り切る大同団結を表明した。タクシー無線デジタル化の移行状況などについて全自無連に取材し、これまでの取組みを振り返り、今後の活動にスポットをあてた。

 本年6月、アナログタクシー無線の使用終了期限を迎え、平成15年から進めたタクシー無線のデジタル化の取組みは、11月末現在、表に示すとおり自営デジタル無線3188社、12万7305移動局、デジタルMCA無線178社、4317移動局とIP無線利用(10月末現在)、1013社、3万9645移動局に達し、ほぼ完全移行を成し遂げた。
 タクシー無線は、デジタル化移行を達成し、さらにIoT化、AI化などの自動化の流れを受けて、無線通信による自動運転支援や配車アプリ・決裁機能などICTの利活用により、さらにタクシーサービスの向上に努めようとしている。
 一方、6月までにデジタル化移行できなかったアナログ無線は、414社、9150移動局であったが、そのうちの4割以上が今年度内に移行することから、残るアナログ無線局は、全国で約250社、5500移動局を切っているものと推測される。これらについてもデジタル化・IP化の早期移行が望まれている。
 平成15年11月の世界初のデジタルタクシー無線の誕生から13年間に亘るタクシー無線のデジタル化は、データ配車など通信の高度化とナロー化による周波数の有効利用を進めてきた。タクシー無線配車に使用されるデジタル無線システムは平成11年に移動通信のデジタル化のために開発されたFDMA狭帯域デジタル移動通信方式(π/4QPSK ARIB STD―T61)とのちに平成23年から導入した4値FSK方式(ARIB STD―T102)の2つの自営デジタル無線と平成19年から導入したデジタルMCA無線の利用に加えて平成22年から登場した業務用IP無線の利用によりデジタル化移行は進められた。
 現在、わが国のタクシー無線配車における無線方式別利用数は、自営デジタル無線が事業者分布72・7%、移動局分布で74・3%、IP無線は事業者分布、移動局分布とも23・1%になっており、自営デジタル無線が全体の7割以上を占めている。また、IP無線は、今年1年間で、380社、1万3000移動局と急激に増加し、全体の2割に達している。
 自営デジタル無線では、データ配車に適したπ/4QPSK方式が、事業者数で全体の41・1%にあたる1804事業者、移動局数では、62・2%にあたる10万6576局を占め、平均50台以上の事業者が効率よくデータ無線配車を行っている。また、音声配車向けの4値FSK方式は、事業者数で全体の31・5%にあたる1384事業者、移動局数では12・1%の2万729局を占め、平均15台以下の小規模事業者に多く使われている。
 〈支援制度の活用など奏功〉
 このタクシー無線のデジタル化の促進のため平成26年、日本政策金融公庫の低利子融資制度「IT活用資金」の資金支援が創設された。全自無連及び各地方自動車無線協会は、その支援制度活用説明会を全国70ヵ所で開催し、延べ1700以上のタクシー事業者にその利用を呼びかけた。その結果、5月末の移行期限までに216件が融資され、その融資総額は20億円近くに及んだ。
 また、平成25年、高齢者雇用安定改正法が施行され、国を挙げて高齢者雇用改善の取組みが進められようとしていた。タクシー事業者は、運転者を含め雇用者年齢が高く、高齢者のための雇用改善が求められた。デジタル化は、聴力等が低下しがちな高齢者にも、クリアな音声を伝え、文字指令やデータ配車が安全・安定就業の高齢者雇用改善措置となることから、高齢者雇用改善として、全国1008社のタクシー事業者がデジタル化を取組み、10月末現在で829社に総額30億4719万円の高齢者雇用安定助成金が支給されるに至っている。全自無連は、これらの支援制度の積極的活用を全国に呼びかけ、財政支援を受けて、多くのタクシー事業者がデジタル化移行を進めたのが特徴である。デジタル化による高年齢者雇用を改善措置は、現在も180社以上で取り組まれている。
 〈IP無線共済事業を導入〉
 デジタル化移行達成には、IP無線利用の進展が大きい。今年、再免許申請を契機にデジタル化が一段と進められた一方で、廃業・譲渡合併によるタクシー事業も取りやめ、非無線化による無線局の廃止・失効も多く見られた。特に自営タクシー無線からIP無線への移行が数多く、IP無線の導入は、1000社、4万局を超えている。資金難を理由とするIP無線の導入社もあるが、不感地帯のないIP無線をスマホ配車や課金決裁システムとの併用した、これからのタクシー無線配車システムと考える利用者も多い。
 そうした中、全自無連では、移行期限までの完全移行をめざして、一昨年12月からIP無線を利用する無線共済事業を導入し、をこれまで約100社、1200台が無線共済事業の適用を受けて、無線配車を行っている。この無線共済事業には、IP無線を導入した事業者数のほぼ3割を吸収した。この無線共済事業によるIP無線の利用は、通信料金が格安だけでなく、デジタル化移行や無線配車の運用開始が迅速なことからも移行期限前のIP無線移行が増加したものとみている。
 このIP無線共済事業は、通信回線の包括申込みによる無線共済運用制度であるとともに、速やかなデジタル化移行を支援するものでもあった。IP無線共済事業は、既存のIP無線利用者の巻込みや自社ソリューション・クラウド配車システムへの適用とより利便なAVM・配車アプリの提供などの拡充と機能充実が求められている。全自無連は、デジタル化移行後も、無線共済事業の拡充を推進するとしている。
 〈デジタル化達成は無線利用者の理解と努力〉
 タクシー無線のデジタル化は、無線利用者であるタクシー事業者の経営努力と関係者の協力と支援で達成された。全自無連は、多くの業務用移動無線の先陣に立って狭帯域デジタル移動通信方式の開発から今日の完全移行の見通し達成までの20年間に亘るデジタル化推進の努力と協力、並びに総務省、国土交通省の指導に感謝するとした。そして、来る2017年をIoTとAI、ビッグデータの3つを活用し、デジタル化完全移行で示した努力と挑戦の教訓を活かして、ICTの発展と事業の改革に向けた活動を進めたいとしている。

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