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5G特集 5Gトライアルサイトで商用サービス実証開始 NTTドコモ

【2017年01月01日】

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       ▲ 中村武宏室長
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   ▲ 富士スピードウェイにおける
     高速走行実験風景
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 ▲ 時速150km走行時の受診スループット

 NTTドコモは、第5世代移動通信方式(5G)の高速・大容量通信の無線データ伝送に成功した。今後は、新たな周波数帯となる28GHz等をターゲットに商用サービスに向けた大規模実験を実施する。さらに、より高い周波数帯となる40~100GHzをターゲットにした、2020年以降の「5G+(プラス)」の技術検証にも取り組む。そこで、NTTドコモ先進技術研究所5G推進室の中村武宏室長に5G研究開発の取り組みと展望について聞いた。

 NTTドコモは昨年11月、Samsung Electronicsと28GHz帯の周波数帯で第5世代移動通信方式(5G)の無線データ伝送実験を実施し、時速150キロメートルで高速移動する自動車に搭載した端末に対して2・5Gbpsを超える無線データ伝送に成功した。実験は特急列車等で高速移動する顧客が5G端末を利用する想定で、富士スピードウェイで実施した。これまで高周波数帯では電波強度の減衰が大きく、高速移動中の無線データ伝送は難しいと考えられていたが、本実験では、MassiveMIMOの特長である超多素子アンテナを用いて電波の放射エリアを特定方向へ集中させるビームフォーミング機能と、高速移動する端末の動きに合わせて電波の放射方向を制御するビーム追従機能を用いて、高速移動する端末への5Gの無線データ伝送が可能であることを検証した。
 この実験結果について、先進技術研究所5G推進室の中村武宏室長は、「MassiveMIMOでは電波のビーム追従性能が重要で、時速150kmの高速移動時でも追従できることが確認できた。移動通信は電波の性質により高速になるほど性能が悪くなるが、今後さらなる高速移動通信にもチャレンジしたい。伝送速度にかなりばたつきがあったので安定化させることが課題だ。今回は1基地局しか使っていなかったので、将来的には複数の基地局を使って高速でも反応できるかを実証する」と話した。
 また、ファーウェイとの無線データ伝送実験では、みなとみらい21地区(神奈川県横浜市)で、ビル上に設置した1台の基地局から約200~600メートル離れた23台の端末に対して、5G無線データ伝送実験を実施し、23台合計で11・29Gbpsの高速・大容量通信の無線データ伝送に成功した。「11・29Gbpsという速度達成は非常にすばらしい結果だが、主眼は大容量化にある。大容量化をはかる技術である、MassiveMIMOでのマルチユーザーMIMOでは、複数のユーザーに対し、複数のビームを同時に送って面的に大容量化をはかる。これまで同時に複数の信号を送るのは限度があったが、今回は24ビームを使って、24本の独立した信号を一気に面的に送っている。有限資源である周波数をいかに効率的に使って多くの情報を送るかがポイントとなる。周波数利用効率は今回約80bps/Hzを達成した。現在のLTEでは15bps/Hzなので5倍以上となることが確認できた」(中村室長)。
 5Gの基本的な実験は重ねてきたので、今後は「5Gトライアルサイト」でシステム的な商用環境に近い条件で動くかを実験する。お台場やスカイツリータウンなど広めのエリアで複数の基地局と複数の移動機を使って実証実験を進める。お台場では、広いエリアを活用し、主にconnected car関係の実証実験を行いたいと考えている。
 「商業施設のあるスカイツリータウンでは、映像系のリッチコンテンツをパブリックビューイングで見せたいと考えている。例えば、江戸の町をVRで再現し、展望台から見下ろせるようにできれば面白い。凸版印刷は観光に関するコンテンツを多く持っているので協力できるともっと夢のあることができる。今後、各社とも議論しながらビジネスにつながる種を作り出して具現化したい」と中村室長は語る。
 今後は新たな周波数帯となる28GHz等をターゲットに大規模実験を実施するが、2020年以降の「5G+(プラス)」の技術検証にも取り組む。「5G+」では、さらに高い周波数帯となる40~100GHzまでをターゲットにより広い帯域幅でチャレンジし、新たな無線伝送方式の適用も含めて検討する。高い周波数帯では無線の伝搬特性も変わり、直進性がより強くなる。電波はより一層飛ばなくなるのを考慮しながら、うまく使えるようにする。
 「MassiveMIMO技術を使用するが、現在のOFDM変調方式ではアンプに高い性能を要求する。OFDMでは複数のサブキャリアでバラバラに動くので、トータルパワーの変動がとても大きい。アンプはピークに合わせてつくる必要があるため、変動が大きくピークが比較的高くなるOFDMではアンプ設計に課題がある。特に高い周波数で広い帯域幅を使う場合には、サブキャリア数が多くなり、更にピークが高くなる可能性がある。そこで、さらに高い周波数帯ではシングルキャリア伝送を考慮し、変動幅を小さくしてピークを抑える工夫をすべきと考えている。また、高い周波数帯では、MassiveMIMO系でも1000素子アンテナくらいの超多数アンテナ素子になることも考えられる。それを生かそうとすると、ビームは鉛筆みたいに細くなるので追従性能や伝搬性能がどうなるのか、色々な課題が出てくる。高い周波数帯を使うことはチャレンジなので、それをいかに使えるようにするかを技術的に検討しなければならない」(中村室長)。
 高い周波数帯では世界共通になる可能性は増える。WRC19では6GHz以上の周波数帯が議論の対象となっており、100GHzまでの間で候補の周波数帯が複数ある。「28GHzは2020年に使いたいと思ってアクションしている。WRC19は待てないし、28GHzはWRC15で候補からも外されている。WRC19でも議論にならない可能性が高い。だが、米国では本周波数帯を既に5G用に割り当てたほか、韓国も平昌オリンピックで本周波数帯でデモを行う予定だ」と中村室長は話した。

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