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AI特集 世界最速のディープラーニングでビジネス革新をサポート 富士通

【2017年01月01日】

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富士通の橋本文行氏

 AIの技術ブランド「Zinrai(ジンライ)」を展開する富士通では、医療分野での展開をはじめ、様々な分野でサービスの展開を図っている。同社統合商品戦略本部AI&アナリティクスソリューション推進部兼AIサービス事業部[戦略企画担当]の橋本文行氏に、これまでの活用事例と今後の展開について聞いた。

 2015年11月、AIの技術ブランド「Zinrai」の設立をいち早く発表した富士通には、発表後、わずか1年ほどで「Zinrai」についての問い合わせが300件以上もあったという。橋本氏は、「発表前は反響があるか不安だったが、『Zinrai』として技術ブランド化したことで、お客様もご相談やご依頼をしやすくなったようだ。『富士通はAIにしっかり取り組んでいく』というメッセージが伝わった」と手応えを語る。
 日本初のスーパーコンピューター「京」の開発(1977年)や170件を超える特許出願など、富士通はAI分野で、国内トップクラスの実績を持つ。これまで幅広い分野で研究・開発に取り組んできたAI技術を、『Zinrai』としてまとめ、(1)学習技術(カメラ画像監視・時系列データ解析など)(2)感性メディア技術(気持ち理解・振込み詐欺対策など)(3)知識技術(協調対話・診断サポートなど)(4)整理技術(混雑緩和・東ロボなど)――の4つの技術分野に分類。組み合わせ可能なAI技術として整理・明示し、活用事例を示したことで、様々な分野からの「利益拡大や業務効率化、人手不足解消などを図りたい」という社会ニーズが顕在化した。
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 活用事例の中で、特に注目なのが最新のセンシング技術による感性メディア技術分野と、ビッグデータを活用した知識技術分野のAI技術だ。感性メディア技術分野では、小型のセンサーを使い、最新の映像センシング技術と処理アルゴリズムによって人の視線や音声を検知して、その人の意識や感情を分析し、それに対応するサービスを提供する。このうち、新たに開発された「視線検知技術」は、顔パーツ検出技術と、目解析及び視線算出から瞳孔と角膜反射を検出する技術を合わせることで、視線の対象と軌跡を検知することができる。複数のセンサーを設置すれば、店舗などの広いエリアでも、顧客が何を注視したか、何を比較したかなどの情報が収集でき、人気商品などのマーケティングに役立つ。
 また、「3Dセンシング技術」は、日本体操協会と共同開発した体操競技の採点支援技術で、富士通研究所が開発した3Dレーザーセンサーと3Dデータ処理技術を活用して、体操競技者の競技データや、技の認識・審判の採点に関するノウハウなどの情報を収集・蓄積して、審判の採点を支援する。従来の3Dレーザーセンサーでは距離や動きに応じて画角を制御できず、遠距離で利用すると解像度が低くなり、スポーツへの適用は難しかった。新たにMEMSの高度な制御技術を用いて、距離に応じて画角を自動調整し、遠距離でも解像度を維持する技術を開発。さらに骨格認識技術でも、大量のデータで機械学習したモデルを使い骨格を高速に認識する従来方式に加え、3Dデータに対して人体の最適な骨格形状を当てはめる新たな方式を組み合わせ、高速・高精度な認識技術を開発した。「フィギュアスケートなど、高い技術が求められる審判・採点に役立つ。今後、AI人工知能を使って競技の採点を支援することが当たり前になれば」(橋本氏)。
 知識技術分野では、富士通が国内トップシェアを持つ電子カルテシステムを活用して、医療におけるAIの知識処理技術の開発に取り組んでいる。
 国立病院機構長崎川棚(かわたな)医療センターで取り組む、「糖尿病重症化予防への取り組み」では、富士通の電子カルテシステムをもとに、蓄積した診療情報から瞬時に糖尿病の類似症例群を検索・特定することができる。また、糖尿病患者の症例と類似症例とを比較することも可能で、病態進行予測や治療効果予測も行え、医師などの医療従事者の診察やカンファレンスを支援する仕組みもつくられている。「患者さんの生活パターンや発症の度合いなど、データとして蓄積することで、同じような生活パターンのひとや、発症リスクをもつひとを見つけて、糖尿病の重症化予防に役立てる。医師の先生から過去の診療データをもとにしたAI技術が利用できるので、いい診断ができると伺っています。長崎川棚医療センター様は中核医療センターの役割を担っておられ、電子カルテシステムで収集したデータベースを、各地域の診療所の先生方に公開することで、地域全体の糖尿病発症予防に役立てる取り組みも行われています」(橋本氏)。
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 富士通は世界最速クラスのディープラーニング基盤を構築し、業種・業務に対応した5種類のAIサービスを、2017年4月から開始する。
 サービスのメニューは、300件を超えるAI関連の問い合わせ・実証実験を通して、特に社会的ニーズの高いAI機能30種(表(1)参照)をAPIとして提供する「Zinraiプラットフォームサービス」、世界最速クラスの処理性能を実現したディープラーニング基盤サービスの「Zinraiディープラーニング」、お客様のAI活用に向けたコンサルティングから導入・運用までをトータルに支援する「Zinrai活用コンサルティングサービス」「Zinrai導入サービス」「Zinrai運用サービス」の4種類。
 「『Zinrai』には3つの強みがあります。1つ目は、様々なAI技術をやってきたという実績。スパコンの開発など、富士通では世界最速クラスのディープラーニング技術を独自技術も含め多数もっています。2つ目はシステムインテグレーションに対応できる体制です。弊社では約2万5000人のシステムエンジニアがいますので、我々が培ってきた大量の業務・業種ノウハウを、APIサービスとして提供していきます。3つ目は、AIの運用をトータルに支援できる点です。今回クラウドだけでなく『オンプレミス』も含め、サービスをご提案していきます」(橋本氏)。
 AI活用システムを自社内に構築したい顧客に向けては、「Zinrai」のハードウェア・ソフトウェア・サービスのすべてをパッケージ化したオンプレミス商品を提供する。また、通信端末やロボット、自動車などのエッジデバイスでもAI活用を強化するよう、「Zinraiプラットフォームサービス」にそれら機器への学習済モデル配信機能を実装する取り組みを開始。「京」で培ったプロセッサー開発技術と、最先端CMOSテクノロジーを採用した独自のディープラーニング専用AIプロセッサー「DLU」の開発も進め、2018年度からの出荷開始も目指している。
 「富士通では、AIをしっかりと使いこなしていただくため、プラットフォームだけではなく、データ収集から学習モデルの作成・提供までを含めご提供していきます。『Zinraiプラットフォームサービス』と『Zinraiディープラーニング』を、コンサルティングや各種サービスと組み合わせることで、『今やっている業務をAIで良くしていきたい』というニーズに対応して、お客様のビジネス革新を加速していきます」(橋本氏)。

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