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AI特集 次世代人工知能の技術開発戦略 NEDO

【2017年01月01日】

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関根久氏

 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、人工知能・ロボットが人を豊かにする社会を目指し、次世代人工知能技術と革新的ロボット要素技術の研究開発に取り組む。そこで、NEDOロボット・AI部「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」プロジェクトマネージャー(PM)関根久氏に現在の取り組み状況と今後の展開等について聞いた。

 安倍総理の下に設置されたロボット革命実現会議が2015年1月に策定した「ロボット新戦略」では、2020年までの5年間をロボット開発の集中実行期間と位置づけ、官民で総額1000億円のロボット関連プロジェクトへ投資することとした。ロボット市場の規模を現状の年間6000億円から2020年に2・4兆円に拡大する計画である。福島に新たなロボット実証フィールドを設置し、ドローンや災害ロボット等の実証区域を創設する。
 ロボット・AI部が実施する平成28年度プロジェクトの予算額は、計約80億円で、このうち、「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」には30・6億円を計上している。
 次世代人工知能技術分野は、産業技術総合研究所の人工知能研究センター(AIRC)を拠点としている。プロジェクトリーダーは、AIRC研究センター長の辻井潤一氏が務める。AIRCは、株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)、国立情報学研究所(NII)や大学等と共同研究体制を構築しており、NEDOプロジェクトに約180人の研究員が参画している。
 次世代人工知能中核モジュールを基盤に、エコシステム形成を目指すため、(1)次世代脳型人工知能を含めた大規模目的基礎研究・先端技術研究開発(2)次世代人工知能フレームワーク・先進中核モジュール研究開発(3)次世代人工知能共通基盤技術開発―に取り組んでいる。
 この大規模目的基礎研究・先端技術研究開発を観測データ収集、認識・モデル化・予測、行動計画・制御、自然言語理解の分野ごとにフレームワーク化する。人間行動モデリング、画像解析、テキストからの知識抽出、対人インタラクション、産業用ロボット、自動運転の標準タスクをモジュール化し、これら技術を組み合わせて、研究開発の方向性である(1)マニュファクチャリング(AI×ロボ)(2)ヒューマンライフ&サービス(AI×IoT)(3)サイエンス&エンジニアリング(AI×ビッグデータ)―の3本柱に向けて研究開発を推進している。ビッグデータ分析、言語・画像処理、自動運転、金融・経済分析、ヘルスケア等のアプリケーションを想定しており、例えば、先進中核モジュール化については、次世代人工知能研究テストベッドや社会的身体性知能の共有・活用のためのクラウドプラットフォーム等を研究開発している。加えて、人工知能・データサイエンス技術に関する人材育成は、AIRCの下、東大で大学院生や社会人を対象に講座を開設している。
 「大規模目的基礎研究・先端技術研究開発の中で、次世代脳型人工知能の研究開発を行っており、理解力を人工知能に取り込むこと、そして、人間と人工知能の異質性を解消することにより、2つの知能が協働することを可能にし、単独では満足な解が得られなかった挑戦的な課題を解決することを目的としている。」(関根氏)。
 革新的ロボット要素技術分野は、ロボット新戦略のアクションプランに基づき、(1)スーパーセンシング(2)スマートアクチュエーション(3)ロボットインテグレーション―について、大学、企業等に委託している。環境の変化に影響されない視覚・嗅覚センサ、自律的に多様な作業を実現するスマートアクチュエーション技術等を研究開発し、各種の手法・技術の共通基盤を構築する。社会課題解決に向けて、約40の研究開発テーマを推進している。
 平成27年度は、嗅覚センサ(東大・住友化学・神奈川科学技術アカデミー)、人工腱(東工大)、マルチセンサプラットフォーム(東北大)など18件の研究開発に取り組んでいる。嗅覚センサの研究開発では、蚊の嗅覚受容体を匂いセンサ素子として活用することで、ヒトの汗の匂い分子を捉え、災害現場等での活用が見込まれる被災者の早期発見等の支援を目指す。
 加えて、平成27年度に、RFI(Request for Information)の結果を参考に、有望な8課題について、人工知能に適用するプログラミング言語やロボットハンド、バイオミメティクス(生物模倣)などの16件を調査・先導研究として採択した。
 また、平成28年度には、(1)高密度で自由曲面に貼れる電極(2)味覚センサ(3)生体分子を用いたロボット(4)UAV向け環境認識技術と飛行経路生成技術(5)小型UAV向けフライトレコーダー(6)ロボットハンドを含む前腕―の課題について、11件を採択して研究開発を進めている。
 「次世代人工知能技術と革新的ロボット要素技術は融合する。ロボットに人工知能を搭載し、センサから得た情報を人工知能によりアクチュエーションする。自律型ヒューマノイドや各種ロボット機器をつなぐ標準規格等の研究開発も進めている」(関根氏)。平成32年度までに、人工知能を搭載した6種類のロボットの研究開発を目標としている。
 NEDOロボット・AI部には、人工知能の実用化を担う「AI社会実装推進室」が設置されている。
 AI社会実装推進室は、2016年4月に、「次世代人工知能技術社会実装ビジョン」を公表した。このビジョンでは、(1)ものづくり(2)モビリティ(3)医療・健康、介護(4)流通・小売、物流―の4分野を人工知能の出口分野として検討した。
 2016年4月に開催された第5回「未来投資に向けた官民対話」において、安倍総理からの指示により設置された人工知能技術戦略会議の下で、経産省、文科省、総務省の三省が連携し、産業連携会議の産業化ロードマップ等のタスクフォースの事務局をNEDOが務めている。産業化ロードマップは、今年度内にも策定される予定である。
 人工知能やロボットが社会実装される未来像について、関根氏は、「我が国は課題先進国であり、様々な社会課題を世界の範となるように解決することが産業の発展においても重要である。例えば、労働生産人口の減少問題がある。その解決策として、現在、多品種少量生産において高い生産能力を有しているが、更なる生産性向上を目指して、ディープラーニングを活用した人工知能等を適用することで、我が国の強みを継続させるものとなる。
 また、災害大国となっている我が国においては、地震、洪水、台風、人的災害等を中心とした災害へのスーパーセンシング等を活用する。オリンピックを迎えるに当たって、人工知能による画像解析等が犯罪解決・防止に寄与する。少子高齢化に伴う介護支援・医療の高度化にスマートアクチュエーションの一つである人工筋肉等を搭載する。これら全ては、次世代の人工知能・ロボットを道具として活用することによって解決する。
 『次世代人工知能・ロボット中核技術開発』の取り組みとその成果が社会に実装されることで、将来的には、人工知能・ロボットが人を癒し、人と協調し、人の仕事を奪うことなく私たちを支援することにより、命・心・財産といった物心両面で、真に人を豊かにする社会が実現することを願っている」と語る。
 経産省とNEDOは、2020年10月上旬に、ロボットの国際競技大会である「ワールドロボットサミット2020」を愛知県空港島大規模展示場で開催する予定である。世界が注目する高度なロボット技術を内外から集結させて各課題において限界に挑戦する。
 なお、2018年10月17日~21日には、そのプレ大会を東京ビッグサイトで開催する予定であり、「2050年にロボットがサッカーワールドカップチャンピオンチームに勝つ」という壮大な目標を掲げるロボットによる競技大会『ロボカップ』のアジアパシフィック大会と併催する考え。
 経産省、NEDOは、是非、「ワールドロボットサミット2020」のプレ大会及び本大会への参加をお待ちしているとのことである。

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