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新春トップインタビュー 「i-dio」本格始動の年 梅本宏彦BIC社長に聞く

【2017年01月06日】

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▲ 梅本宏彦氏

 テレビ放送のデジタル化によって利用可能となった周波数帯を活用した、テレビ、ラジオに続く第3の放送、V―Lowマルチメディア放送「i―dio」(アイディオ)。高音質、データ放送、サイネージでの展開など、これまでにない複合的サービスが新たなビジネスツールとして注目されている。ここでは、「i―dio」事業全般の企画開発推進および関連事業を行うBIC株式会社の梅本宏彦社長に「i―dio」の概要から、現在の放送エリア、ビジネス展開、課題認識、そして今年の目標などを聞いた。

 ――昨年6月に社長に就任され、約半年経ちました。これまでを振り返ってのご感想・印象などをお聞かせください
 「私自身、放送の分野に携わるのは今回が初めてですが、これまでの仕事にも増して社会的な責任感をより強く感じています。これまでの半年間でまず感じたことは、『i―dio』は新しい可能性を秘めた放送サービスであること、そして更には、各方面から大変な期待感を持って注目されていることです。経営の基本的な考え方は、ある部分ではどのような仕事であっても同じだと考えておりますので、『i―dio』事業をどのように組み立て、発展させていくのかというミッションに日々あたっています」

 ――それでは、あらためてですが、「i―dio」の基本方針をお話しいただけますか
 「『i―dio』の目的は、通信と放送を真に融合させたコミュニケーションプラットフォームを構築し、国民の安心・安全に資すると共に、心豊かにするコンテンツを提供することです。我々は『i―dio』を活用し、地域密着型のデジタル放送として、地域の活性化と安心・安全の実現に貢献し、新規ビジネスを創出します。ビジネスのカテゴリーとしては、国内最大規模のデジタル・マルチメディアの放送インフラビジネスをはじめ、多種多様なコンテンツ・プロバイダー(CP)が参画する、放送波を用いたIoTプラットフォーム、そして、地域個別の安心・安全を軸とした自治体連携による防災インフラビジネスの3本柱があります」

 ――「i―dio」は昨年7月1日に正式にサービスがスタートし、その後、放送エリアは順次拡大中とのことですが、これまでの開局状況と今年の開局計画をお聞かせください
 「昨年3月1日に東京・大阪・福岡で親局が開局し、関東・甲信越、近畿、九州・沖縄でプレ放送が始まりました。その後、7月1日に名古屋の親局が開局し、東海・北陸ブロックでのプレ放送が始まりました。同日、関東・甲信越、近畿、九州・沖縄がグランドオープンしています。その後、8月1日に東海・北陸ブロックがグランドオープンし、10月に静岡中継局が開局し、今年度内に浜松中継局の開局を予定しています。2017年度は、加古川中継局と仙台親局と広島親局の開局を予定しています。さらにはその後、札幌親局の開局も目指しています」

 ――「i―dio」サービスにおけるCPの役割をお聞きします。代表的なCPである、TOKYO SMARTCAST(TS)とアマネク・テレマティクスデザイン(アマネク)の事業についてお聞かせください
 「両社とも3月のプレ放送開始に続き、7月には本放送を開始しています。TSは、国内最大規模のデジタルマルチメディアとして、放送インフラビジネス、音楽・映像を提供しており、デジタル地上波最高音質の音楽と映像を提供するチャンネル『TS ONE』などを放送しています。一方、アマネクは、ドライバー向けデジタルラジオチャンネル『Amanekチャンネル』を放送しています。CPは我々が提供するプラットフォームを利用し、新しいビジネスを展開する企業です。現在、多種多様なCPと話を進めており、今後はその数も増え、様々なビジネスが『i―dio』の中で展開する予定です」

 ――昨年は大地震や大雨、台風など自然災害が続きました。「i―dio」サービスの一つである「V―Alert」は減災につながるものとして期待されています。同サービスを導入する自治体の反応、導入の進捗状況などをお聞かせください
 「『V―Alert』は、自治体から住民へ災害情報を直接伝える防災情報配信システムです。音声に加え、文字、画像など様々な形式のデータを放送波で配信でき、さらにデータにエリアコードをつけることにより、複数の局地的情報を同時に配信できるという、デジタルならではの活用ができます。放送波は通信と違い、輻輳が起こりません。これらの特長によって全国の地方自治体に注目されています。福岡県宗像市では、実証実験を進めており、昨年4月の熊本地震の発生時は『V―Alert』が有効に起動しました。兵庫県加古川市では、今年7月頃までに本放送が始まる予定で、地域住民に防災ラジオを配布し、実際にサービスが始まります。また、福島県喜多方市の市長からは『V―Alert』を早期に導入したいという要望を受けています。そのほかにも、大体50〜100くらいの地方自治体から問い合わせがあり、商談、導入に向けての打ち合わせが進んでいます。すでにデジタル防災無線が導入されている自治体でも、『V―Alert』を住民から要望の強い戸別受信の手段として、補完的に合わせて導入したいという声を多数いただいております」

 ――サイネージにおける「i―dio」の利用例や展開についてお聞かせください
 「昨年11月、NEXCO西日本の大阪吹田管制センターでサイネージを使った緊急情報の実験を実施しました。サービスエリアの室内にあるサイネージに親局から発信した緊急情報のテキストデータと報知音を受信し、表示させました。また、放送波を受信し、避難所の鍵を自動的に開錠する実験を実施して成功させました。緊急時の場合、鍵を持った担当者が避難所に行けないことも想定されます。通信に比べて、放送なら輻輳がなく確実です。実験では確実に鍵の開け閉めができましたので、今後実用化へ進む予定です。さらに、防災情報配信の面では、11月に東京都中野区でエリアごとに設置したサイネージに各地域の状況に合致した緊急避難情報を配信する実験を行いました。また、京都では、『京都駅前羅城門復元プロジェクト』に参加しました。これは、駅前に設置された『羅城門』解説用のデジタルサイネージに5言語で緊急地震速報を配信するものです。このサイネージは、平常時は日本や英語、韓国語中国語で羅城門の説明文を表示しています。しかし、大地震の発生時などは緊急放送に切り替わり、強制的に地震速報などを表示します。こちらはすでに実運用されています」

 ――ところで「i―dio」の現在の問題点と今後の課題は何ですか
 「電波の受信環境が問題点として挙げられています。受信エリアの狭さと屋内での減衰が当初想定していたものより大きかったので、その対策案を検討しているところです。対策として、例えば東京では、東京タワーから電波を出していますが、増力が難しいので当初計画になかった中継局を追加で増やします。また、ギャップフィラーの設置も考えています。これらの問題については改良・改善に努力し、しっかり確実に対処していきます」

 ――IPによる補完サービスも始まっていますが、これは電波が弱い場所でもサービスを視聴できるようにしたものでしょうか
 「すでに親局が開局している関東・甲信越、近畿、九州・沖縄、東海・北陸では、インターネット受信モードでアプリを利用することで、コンテンツを無料で視聴することができます。電波で受信できない方には、このインターネット受信モードで放送を視聴いただけます」

 ――「i―dio」サービスを視聴する端末は専用ラジオ、Wi―Fiチューナー、チューナー内蔵型スマートフォン等、様々ありますが、今後の展開は
 「今後は我々のビジネスパートナーであるCPの方々と、端末の共同開発を目指していきたいと思っています。サービスを受けるユーザーが、どのような端末で受けたいと思っているかを考えることが重要です。そのため、今までにない端末が生まれてくる可能性もあります」

 ――一般の人々に「i―dio」をより広く知ってもらうため、今後どのようなPRをする予定ですか。具体的なプロモーション案をお聞かせください
 「多くの若い方々は、IPサイマルで『i―dio』を聴取していらっしゃるようなので、スマートフォンアプリのより幅広い普及を図ります。アプリをダウンロードしていただくために、オンライン広告に注力したり、ネット上でダウンロードを促進するようなメディア露出、TOKYO FMの番組の中でのPRも強化したりします。また、デジタルサイネージにおいては、日本各地の名所に『i―dio』を使ったサイネージを設置し、露出の機会を多くしていこうと考えています」

 ――「i―dio」のビジネス面での可能性をどのように考えていますか
 「最初に申しました通り、『i―dio』は、これまでにない、通信と放送を融合させた全く新しいビジネスプラットフォームです。放送波をメインとしたもの、通信に付加価値を付けて補完的に行うものなど、様々なサービスが考えられます。出口である端末も多種多様です。我々はお客様とともに使い方を一緒に開発していき、これまでにないサービスを創出したい。これが『i―dio』の可能性です」

 ――では、最後に今年の目標、目指すところをお聞かせください
 「親局や中継局などのインフラを確実に行い、サービスの環境・基盤を整えることがまず第一で、課題になっている電波の問題も解決します。それとTSやアマネクをはじめとするCPをサポートし、ビジネスをさらに進めていただきます。また同時に、この『i―dio』を世の中の方々にもっと知っていただくためのPR活動が重要です。さらに国内では、地震をはじめ台風、土砂災害、河川氾濫などの自然災害が増えています。それら自然災害に対して『V―Alert』は非常に有用であり、国民の安心・安全を守ることに我々が寄与できるので、自治体に向け、『V―Alert』をしっかりアピールしていきます。昨年はスタートの年でした。今年は土台を作っていく年になろうかと思っております。しっかりと土台を作り、ビジネスとして離陸していく、そういう年になることを目指していきます」


▲ 防災情報配信実験をデジタルサイネージで
  実施

▲ i-dioによる多言語サイネージを国内発導入

■「i-dio」昨年のトピックス
 16年11月11日、東京都中野区川島商店街で「緊急避難情報を通信障害なくエリアごとに確実配するための証験」が実施された。同実験では、試験空間ではなく、実際に活用が見込まれている市街地において、通常はインターネット経由で情報配信を行っている街の共有情報発信媒体であるデジタルサイネージへ、インターネット回線輻輳を想定し、放送波からの配信へと切り替える実証が行われた。実験においては、街頭テレビのような同時放送での配信を行うのではなく、ストリートメディア社が持つ「放送波を利用した個別デジタルサイネージへの適時配信」と「i―dio」が持つデータ放送サービスの自由度を組み合わせて、個々のサイネージに放送データから各地域への必要情報のみを切り分けて受信させる、各地域最適個別配信の実放送波での実験を兼ねる実証デモンストレーションが行われた。これらの技術により、被害状況によって変更される避難場所の案内等が柔軟に行えるという。
 16年11月21日、京都駅前で展開されている「京都駅前 羅城門復元プロジェクト」に参加した。羅城門の模型の横にタッチパネル式のデジタルサイネージ端末を設置した。サイネージでは平常時、平安京と羅城門の歴史や、模型移設プロジェクトの意義を解説するコンテンツを、日本語・英語・中国語繁体字、中国語簡体字、韓国語の5言語で配信し、京都を訪れる観外国人光客が日本の歴史や文化を理解する糸口を提供した。
 地震が発生した際は、通常の画面を強制的に全画面切り替えて、受信した緊急地震速報を5言語併記で表示する。また、キャンセル報を受信した際も全画面で表示を切り替える。
 「京都駅前 羅城門復元プロジェクト」は、京都の有形・無形の文化遺産を後世に承継する事業を行っている「明日の京都 文化遺産プラットフォーム」が1994年に平安遷都1200年記念事業の一環で制作された、平安京の正門である「羅城門」の10分の1サイズの模型をJR京都駅前に移設するものである。

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