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新春・関西特集 大規模災害に備えて 各自治体等の取り組み

【2017年01月11日】

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▲ 和歌山市内で披露されたトルコとの交信では、
  クリアな音声が確認された。
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  ▲ 想定を超える災害時には、既存の通
    信網がだめになる可能性があり多重
    の備えが必要と話す仁坂吉伸和歌山
    県知事
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 ▲ 公園近くに設置された防犯監視カメラ
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    ▲ 防犯監視カメラ(拡大)

 毎年10月11日は、「安全・安心なまちづくりの日」として、政府や自治体がさまざまな取り組みを実施している。犯罪に強い社会を実現するために2006年から実施しているが、果たして〝安心安全な街〟とはどのような街なのか!?着目したいのは、犯罪発生率だけでなく、安心して暮らせる環境や地域の防災対策である。近年では、集中豪雨や落雷をはじめ、地震や津波などの自然災害は、時として想像を超えた力で襲ってくる。いつどんな災害が起こるかわからないからこそ、地域ぐるみの防災対策が不可欠であり、また一人一人が防災意識を高めることで、被害を少なくすることもできる。

 ―防災意識
 近畿2府4県では和歌山県が第1位
 気象庁が調査した「防災意識」(2014年)の全国ランキングでは、和歌山県が15位、兵庫県と京都府は20位、滋賀県は29位、奈良県は30位、大阪府は36位だった。民間の調査機関によると、防災に対する意識率は、地震が約75%で、台風は約62%、大雨・洪水は約55%の順で、圧倒的に地震が高かった。
 近畿2府4県では、和歌山県民の防災意識が一番高いのは、2016年5月に南海トラフ周辺で大きな〝ひずみ〟が確認されたこともあり、南海トラフ巨大地震やそれに伴う津波の被害が特に懸念されることが考えられる。今回の特集では、近畿管内での特筆すべき取り組みなどを紹介しよう。
 【和歌山県】
 ―災害時通信システム
アマチュア無線を活用
 和歌山県では、津波被害などを想定し、アマチュア無線を利用した災害時通信システムが構築されている。
 同システムは、同県が2009年に日本アマチュア無線連盟へ協力を依頼して構築したもので、連盟が新開発したデジタル通信方式の『D―STAR』を運用する。
 東日本大震災では、デジタル無線を通じて被災地から関西に届いた情報を基に救助にあたった事例もあり、災害時には日赤和歌山県支部の無線室を拠点とした通信網の構築が可能になる。
 『D―STAR』の音声通信は、極めてクリアな音質が実現するのが最大の特長。画像データの伝送やインターネット経由の遠距離通信も可能になり、日本全国をはじめ、海外40数か国とも交信できる。衛星を利用したGPS機能により、正確な位置情報も把握できる。
 また遠距離通信を可能にする中継局(レピータ)には、バックアップの電源装置が装備されており、停電時でも通信が寸断されることはない。
 従来、津波や土砂くずれなどにより、橋がケーブルごと流された時には写真などの画像データが送れなかったが、DDモードなら簡単な機器だけで写真やデータ・動画も送ることが可能になる。
 日本アマチュア無線連盟では、高野町や紀の川市、有田川町、田辺市、新宮市、串本町などで中継局を設置しており、これにより紀伊半島沿岸の海沿いの地域はほぼカバーされたことになる。
 仁坂吉伸和歌山県知事は、「東南海・南海地震の発生が想定される和歌山県では、地震や津波で既存の通信網がだめになる可能性があり、多重の備えが必要になる」と話すなど、同システムは災害支援に大きく貢献する通信手段として期待されている。
 【兵庫県伊丹市】
 〝安全で安心な街づくり″を目指す!「安全・安心 見守りプロジェクト」
 兵庫県伊丹市では、カメラとITを駆使した取り組みが進められている。
 同市では、全国に先駆けて市内全域に防犯監視カメラを設置し、映像と位置情報を連携し、より高度な見守り環境を市内全域で展開している。子供たちや認知症高齢者を早期発見するのが主目的だが、災害発生時などでの活躍も見込め、いま全国の自治体などから注目を集めている。
 現在、日本各地で子どもが巻き込まれる痛ましい事件が多発していることや、平成26年に市内で発生した局地的豪雨などにより生じた被害経験から、同市では1000台の〝安全・安心見守りカメラ″を整備している。
通学路を中心とした道路や公園、広場に950台を整備し、犯罪の抑止効果を高めるとともに、事件・事故の早期解決を図る。同時に、河川や中心市街地などに50台を整備し、大雨など災害発生時の河川監視などの災害対策やその検証に役立てる。
 また〝高齢者見守り″では、小型発信機を持った徘徊高齢者が設置カメラの近くを通ると、家族のスマートフォンのアプリに位置情報などを通知する。家族は、スマホに専用の「保護者アプリ」を入れ、認知症患者は大きさ約3センチの発信機を身に着けるだけ。カメラには受信機が付いており、行方不明者が近くを通ると、アプリに場所や時間が通知される仕組み。警察を通じて録画した映像を家族に提供し、服装の特定もできるなど、早期発見が期待できる。
 さらに、見守りに協力する市民向けの「ボランティアアプリ」も開発。スマホに入れると、行方不明者が近くに来たときに通知される。家族らは捜索のため、顔写真や名前などを配信することもできる。個人情報を含むため、受信には登録制の別のアプリを開発し、民生委員らの利用を検討している。
 発信機と受信機の通信は、近距離無線通信「ブルートゥース」で、アプリへの配信は高速通信「LTE」を使うなどITを活用している。利用には約2500円の初期費用と月432円の使用料が必要となる。
 現在、伊丹市の人口は19万6854人(平成28年12月Ⅰ日現在推計)。認知症患者は、10年前に比べて約2倍の3740人(平成25年度)となっている。認知症患者の増加に伴い、徘徊高齢者も増加しており、現在も200人程度の徘徊高齢者が市内に存在していると推計できることから、家族や近隣住民など、相当数の市民が徘徊高齢者に対して課題を抱えているのが現状。*認知症高齢者は2025年には全国約700万人(厚生労働省推計)に達すると予想される。
 見守りカメラの使用は、プライバシーの問題から心理的な抵抗も大きいが、犯罪の抑止や行方不明者の早期発見などには絶大な効果を発揮するといわれている。そのためには、徹底した情報管理が必要不可欠で、子育て世代の流出に歯止めがかかることが期待できる。

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