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放送記念日特集 NHK 理事・技師長の児玉圭司氏に聞く

2022412日】

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児玉圭司氏

NHKは2021年度より新たな経営計画をスタートさせ、2022年度は2年目となる。新しいNHKらしさを実現すべく、様々な改革を推進している。一方、新型コロナウイルス感染症の感染拡大は放送業界全体にも大きな影響を及ぼしている。これらにより、放送技術もリモートプロダクションの活用など、大きな変革期を迎えている。NHK 理事・技師長の児玉圭司氏に、経営計画における技術面での取り組みやIP化、クラウド活用やユニバーサルサービス、今後取り入れていく技術などについて聞いた。

――経営計画の2年目がスタートします。技術面での主な取り組みは
 児玉 スリムで強靭な「新しいNHK」の実現を目指して、NHK経営計画(2021―2023年度)の重点項目に沿った具体施策を着実に進めていきます。
 「命と暮らしを守る」報道強化として、2021年11月に一部で運用を開始したCS伝送とIP伝送を融合した衛星IP伝送システムを、順次全国の放送局と放送用車両に展開していきます。従来の映像伝送に加えて、インターネット通信も可能になることから、迅速かつ的確な緊急報道に威力を発揮できます。
 老朽化した地域放送会館の建て替えも計画的に進めていきます。地域放送会館は、地域に密着したニュースや情報番組の発信と同時に、地域の今を全国に伝えるための基盤です。2022年度は、佐賀、富山、松江で新会館のオープンを予定しています。新放送センターの中核となる情報棟の新築工事も、2022年度から建物の躯体工事に着手します。
 高品質なコンテンツ提供の面では、多彩な番組演出に欠かせないCG制作の基幹設備を更新します。これにより制作効率の向上と、クオリティの高い番組づくりの両立を図っていきます。
 全国の運行装置やニュース送出設備については、地上デジタル放送開始時に整備したものを、2017年度から順次更新してきました。2022年度には完了する見通しであり、今後も地域のみなさまに安定したサービスをお届けします。また、津波浸水域に位置しているラジオ放送所の対策としてFM補完中継局を整備するなど、災害等に強い送信ネットワークも構築していきます。
 今年度は、世界的な半導体不足の影響により、一部の整備計画の変更を余儀なくされました。メディアを取り巻く環境が大きく変わる中で、引き続き、社会の動向の変化とテクノロジーの進展を的確にとらえながら、サービスの充実に貢献していきます。
 ――コロナ感染拡大による番組制作への影響とその対応はどのようなものがありましたか
 児玉 2020年3月から早2年が経過しましたが、その間も度重なる新型コロナウイルスの感染拡大により、出演者やスタッフの移動制限や制作時の3密回避などを進めてきました。昨年からの新種オミクロン株の拡大は第6波となり、今もなお、対策を継続しています。
 このような状況下で、1年延期で開催された東京オリンピック・パラリンピック、先日まで開催された北京オリンピック・パラリンピックに対応してきました。残念ながら8Kのパブリックビューイングは中止となりましたが、開会式・閉会式や注目競技を8Kでも放送しました。特に東京オリンピック・パラリンピックでは、密を避けて効率的な制作体制を可能とした、大規模な4K―IPリモートプロダクションの導入や、最新のCG技術を使ったバーチャルスタジオによる多彩な演出など、最新のテクノロジーの活用にも取り組みました。
 「日本オープンゴルフ選手権」や「プロ野球」などのスポーツ中継では、クルーの移動を工夫してスタッフの数を見直したり、スタッフ間の距離を確保できるようオペレーションエリアを広くしたりしました。またスタッフをユニット毎に分け、スタッフ同士の接触機会を減らすなど、行動・接触管理も徹底しました。
 感染拡大の状況に応じて、「NHKのど自慢」や「新BS日本のうた」などの公開派遣番組を中止し、その代替として東京のスタジオで収録等も行っています。さらに大河ドラマ「青天を衝け 篤太夫、パリへ」では当初、撮影をパリで行う予定でしたが、VFX(視覚効果技術)を駆使して、パリでの背景映像と日本での出演者映像を合成することにより、制作する手法に変更しました。
 2020年11月に放送の「沼にハマってきいてみた」では、NHKが独自に開発したVRプラットフォーム「Virtual NHK」を初めて活用しました。これは3次元CGで作られたスタジオセットに、多くの視聴者がアバターとして番組に参加いただくものです。昨年、より多くの方に参加いただけるように、PCだけではなくスマートフォンでも参加できるようにシステムを改修し、他の視聴者参加番組での利用も進めています。
 コロナ禍であっても、視聴者のみなさんに喜んでいただけるように、こうした最新技術やツールを活用したコンテンツを継続して制作していきます。(3月22日付けに全文)

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