情報・通信

研究開発インフォメーションミーティング 日立製作所

【2016年08月19日】

写真
      △ EMIEW3

 日立製作所はこのほど、「研究開発インフォメーションミーティング」を同社中央研究所(東都国分寺市)で開催した。「顧客協創/技術基盤/Lumada/将来の社会課題への挑戦」の4テーマで23製品を展示した。執行役常務CTO兼研究開発グループ長の鈴木教洋氏は「2016研究開発戦略」について次のように話した。2018年中期経営計画では、IoT時代のイノベーションパートナーを目指す。デジタル技術を活用した社会イノベーション事業のIoTプラットフォーム「Lumada」で全体の成長を牽引する。新研究拠点「協創の森」として、顧客協創を加速するための新研究棟を国分寺サイトに新設する。顧客ニーズに合わせて、迅速なプロトタイプ開発ができる最先端の研究設備を導入し、世界中の顧客と協創を推進する。国際会議場の協創棟と、アイデアを素早く形にするラピッドプロトタイピングの迅創棟からなる。日立グループ全体の研究開発投資額は、16年度は3500億円を計画。2018年中期経営計画期間は売上収益の約4%を投資する計画。
 IoTプラットフォーム「Lumada」では、データ分析、セキュリティ、人工知能がコア技術として重要になる。環境発電によるバッテリ交換不要なセンシングシステムについて社内工場で実証実験を開始している。セキュリティでは、サイバー脅威の波及抑制に向けて慶大と共同研究を開始している。人工知能は既存システムにAIを接続しインテリジェンス化できる。ロボティクスでは、人と共生する新しいサービスロボット「EMIEW3」を4月に発表し、現在実証実験を進めている。
 内閣府では、超スマート社会「ソサエティ5・0」で人間中心の方向性と示し、情報科学、物性科学、生命科学、フロンティアの分野で取り組みを進めている。日立は再生医療普及に向けた細胞低コスト製造に取り組む。新概念コンピューティングでは、イジングチップを開発し、組み合わせ最適化問題をリアルタイム、低電力に解くことにより社会システム最適化を目指す。呼気アルコール検知では、スマートキー対応ポータブル型を試作した。人の息だけに反応し不正利用を防止する。情報科学の分野では、論理的な対話が可能なAIを研究し様々なテキスト情報から経営判断を支援する人工知能の実現を目指す。迅速なインキュベーションに向けて各分野で連携体制を構築している。IoT時代のイノベーションパートナーの実現に向けて、顧客協創の加速、技術基盤の構築、オープンイノベーションの拡幅によってビジネスイノベーションの創成を図る。
 研究開発グループ技師長兼人工知能ラボラトリ長の矢野和男氏は「AIは日立のビジネスをどう変えるか」をテーマに次のように話した。20世紀は工場システムの業務標準化によるスケール化により生産性が抜本的に上がったが、21世紀はこれまでの方法だけでは生産性が上がらない。カスタマイズされた需要にコストをかけずに対応するのがAIの役割だ。日立ではAIを「多様で変化する状況にビジネスを自動適応させる」と定義している。コンピュータはこれまで人間がプログラムを書いて動いていた。AIは大量のデータを自分で読み解き、自分で動作を変え、自ら賢くなる機械で多様性に応える。AIは、人間から与えられた目的をどのように遂行するか、データから自ら考える。既存システムにAIを追加することで賢く動作するもので、日立は世界で初めて実現した。
 日立が開発した人工知能「H」と繋がっている、ブランコするロボットのデモでは、「ブランコの振れ幅を大きくすること」という目的を与えた。最初は何も事前情報がないので動くことしかできないが、たまたま良いタイミングがあると徐々にコツを掴む。前後に大きく振れた地点で足を曲げると振り幅が大きくなることを発見し実行した。なぜこのようなことができるのか。目的にあたるマクロデータと、これに影響を与えるかもしれないミクロデータと粒度の異なるデータを入力しアクションを自動生成する。100万個の仮説を自ら立て、本当に効いている要因を3つほど選び、それを組み合わせて目的を達成する条件を導き出す。これが「H」の跳躍学習技術である。「H」は人の仮説やロジックが不要なのが特長。「H」は既に色々な現場に導入されている。例えば、物流倉庫では人工知能が従業員の作業の最適な優先順位を決めて総作業時間を短くし、効率が8%向上することを実証した。また、店舗では、高感度スポットへ店員を重点配備することにより、顧客単価を15%向上することを確認した。鉄道監視システムでは、運転操作の最適化により年間約14%の省エネが可能との結果を出した。「H」の適用は、昨年の7分野24案件から今年6月には14分野57案件に急速に拡大した。
 従来のAIは、指定されたパラメータをデータからの学習に基づき変更する専用AIでレベル1に分類される。「H」は、与えた目的の下で、データからの学習により判断できるため、レベル2と汎用性の高いレベルにきた。この汎用性は、企業・ビジネスのデジタル化に重要な意味を持つ。従来、企業・ビジネスのPDCAサイクルのうち、ITはDo(実行・収集)に使われてきた。アクションとプランの部分を人工知能で回すことによってPDCAがデジタルサイクルで回るようになってきた。また、画像や細かな生産情報も大量にデジタルビジネスサイクルで使えるようになってきた。IT・設備は専用システムになるが、汎用性が高いためオープン&スケーラブル、既設・新設、自社・他社を問わず賢くできる。日立は、汎用AIを様々な事業分野に活用し、10兆円規模の投資により技術を磨き、競争力を持って市場に打って出る戦略だ。
 日立グループでは6月から、営業部門の600人を対象にAI活用の実証を開始した。「H」が組織活性化に向けて個人にアドバイスするもの。AIで職場を活性化する取り組みは、これまでに13社で実証またはシステム導入を進めている。AIは日立の社会イノベーション事業の中核としていく。日立はビジネスのデジタルサイクル化で先行し世界トップを行く。

情報・通信一覧へ  トップページへ