情報・通信

高効率高速受光素子の開発に成功 NICT

【2016年09月16日】

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、坂内正夫理事長)は、ネットワークシステム研究所において、早稲田大学理工学術院の川西哲也教授(基幹理工学部)、日立国際電気(佐久間嘉一郎社長)と共同で、高効率高速受光素子の開発に成功したと発表した。この素子を搭載したモジュールに光ファイバーを接続すると、電源なしで光信号から100GHzのミリ波信号(4㍉㍗)を発生させることが可能だ。この成果は、これまで障壁となっていた光―ミリ波変換モジュールへの外部電源供給問題を緩和するもので、変換モジュールの大幅な低コスト化により、光ファイバーとミリ波帯無線を融合した、滑走路上の異物検出システムや高速鉄道向け高速通信システムなどへの市場創出が期待されるとしている。なおこの研究は、総務省電波資源拡大のための研究開発の一環として実施された。

 ミリ波帯は、100Gbps級の超高速無線通信を可能とする一方で、その発生の困難さと、伝搬距離の短さから、必要なところまで有線の光ファイバーで届け、必要最小限の距離を無線の電波で伝える有無線融合ネットワークとしての実現が期待されている。しかし、光信号とミリ波信号の変換モジュールに電源が必要であることや、システムの構成が複雑などの課題があった。NICTでは、これらの課題を解決するために、光信号をミリ波信号に変換する素子の開発を進めてきた。
 新しい高速受光素子(自己発電型高速受光素子)は化合物半導体技術を用いたもので、特殊なPN接合構造を配置することで外部電源を必要とせず、同素子から信号出力と併せて起電力を得られることがわかった。この技術の開発により、簡単な構成で光信号からミリ波信号への変換が可能となり、光ファイバー通信と電波による無線システムのメリットを併せ持つ有無線融合ネットワークの大幅低コスト化が期待されるとしている。  今後はミリ波帯レーダーを用いた滑走路上の異物検出システムや、高速鉄道などで利用可能な光ファイバーとミリ波帯無線を融合した高速通信システムへの応用を検討する。
 これまでの研究で分かっていたこと(科学史的・歴史的な背景など)は次の通り。ミリ波帯は、より高速の無線通信、より高精度のイメージングを可能とする新たな電波帯域として注目を集めているが、その発生の困難さと、伝搬距離の短さから、必要なところまで有線の光ファイバーで届け、必要最小限の距離を無線の電波で伝える有無線融合ネットワークの実現が期待されている。
 しかし、光信号とミリ波信号の変換に電源が必要であることや、システムの構成が複雑などの課題があった。同研究では、これらの課題を解決するために、光信号をミリ波信号に変換するデバイスの開発を進めてきた。
 そして、今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったことは次の通り。今回、研究グループは、光通信や光ファイバー無線技術に向けた、新しい高速受光素子を開発した。
 高速受光素子とは、光信号を電気信号へ変換する、光通信技術の中で重要なキーデバイスを示す。これまでに、このような高速受光素子は、さまざまな研究機関により、開発が行われてきたが、その機能は単純に光信号から電気信号へ変換するものであった。今回の研究では、これら光電変換に加え、太陽電池に見られるような起電力を同素子から取り出すことに世界で初めて成功した。
 そのために新しく開発した手法は、新しい高速受光素子は化合物半導体技術を用いたもので、特殊なPN接合構造を配置することで外部電源を必要とせず、かつ同素子から信号出力と併せて起電力を得られることがわかった。
 一般に、高速受光素子からのミリ波信号出力は小さいので、後段に電気増幅器を繋げて電気出力を大きくする。しかし、この増幅器を動作させるためには別個の電源を用意する必要があった。今回3者は、開発した受光素子によって、ミリ波帯信号と同時に取り出した起電力を使って、後段電気増幅器の駆動制御を行い、100GHz帯で高い光電変換効率と約4㍉㍗の高出力ミリ波信号の発生に成功した。
 このような新しい技術を用いることで、受光素子への電源供給方法が大きく改善できる可能性がある。将来的には、外部電源不要で1本の光ファイバーのみで大きな無線信号が取り出せるよう、今後、特性の改善に努めていきたいとしている。
 今後、ミリ波帯レーダーを用いた滑走路上の異物を検出するためのシステムや、高速鉄道などで利用可能な光ファイバーとミリ波帯無線を融合した高速通信システムへの応用を総務省電波資源拡大のための研究開発を実施しているコンソーシアム(日立製作所、情報通信研究機構、電子航法研究所、鉄道技術総合研究所)と連携して、検討していく考えだ。これらの光・ミリ波融合技術の事業化は日立国際電気が中心に取り組みを進める予定。

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