情報・通信

NICTオープンハウス2016 NICT

【2016年11月09日】

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      ▲ 講演を行う富田理事
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    ▲ 特別講演を行う森川教授
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▲『宇宙天気予報センター(予報会議)の公開』

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、黒瀬泰平理事長代行)は10月27日・28日の2日間、東京都小金井市のNICT本部で、研究内容を広く一般に紹介するための「NICTオープンハウス2016」を開催した。会場では講演やデモンストレーション、パネル展示、ラボツアー等などが行われ、NICTの5つの研究群と委託研究の最新の成果、オープンイノベーションの取り組みなどについて披露した。
 22日のオープニングセレモニーでは、富田二三彦理事が「世のため人のため何でもやってみることができるデジタル・イノベーション・プラットフォーム―NICTの新中長期計画について―」と題して講演した。富田理事は「超高齢化社会に対し、便利を超えてさらに暮らしやすい社会のリフォームをICTを使ってやっていかなければならない」と述べ、今後のICTは常に新たな社会的課題に応えるものでなければならないとの展望を示した。その上で、具体的な課題としてアクティブシニアやサービスとモノによる世界企業の活性化、健康・医療、教育/人材開発、公共安全などを挙げた。また、このような社会的状況のなか、NICTの業務について「従来の情報通信分野の研究開発と民間・大学等が行う情報通信分野の研究開発の支援に加え、新たにサイバーセキュリティ人材育成等にも取り組むことになった」と述べ、NICTもこれまで以上に社会的課題に応えていくため、平成28年度~32年度までの第4期中長期計画に沿って業務に取り組んでいくと説明。「センシングの『観る』、統合ICTの『繋ぐ』、データ利活用の『創る』、サイバーセキュリティの『守る』、フロンティア研究の『拓く』の5つのキーワードを中心に身近な研究開発を充実させていく。また、それと同時に『オープンイノベーション本部』を設け、AI・ビッグデータ・テストベッド・耐災害ICT・テラヘルツ・セキュリティ人材育成などに取り組んでいく」と第4期中長期計画の方針を改めて説明し、オープンイノベーション推進本部の設立により産学や地域、グローバルの連携をさらに強化し、豊かで安心・安全な社会の実現と経済成長の原動力であるICT分野の研究開発と事業振興を進めていきたいとした。
 続く特別講演では、東京大学先端科学技術研究センターの森川博之教授が「デジタルが経済・産業・社会・地方を変える」と題して講演した。森川教授は、「仕事、生活、社会に存在する膨大のアナログプロセスを『デジタルデータ』という視点で捉え直してデジタル化することで、生産性の向上や新たな価値の創出につなげることができる」などと述べ、デジタルデータの価値を駆動力にしてイノベーションに取り組むべきとした。  技術展示では、最新の研究成果について60件を超えるデモ・パネル展示を行った。
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 主な展示内容は次の通り。
◆「社会を観る」(センシング基盤分野):
 ▽宇宙天気予報センター(予報会議)の公開
 ▽電波利用環境を守る研究開発
◆「社会を繋ぐ」(統合ICT基盤分野):
 ▽航空機・海洋ブロードバンドを実現する宇宙通信に関する研究開発
◆「社会(価値)を創る」(データ利活用基盤分野):
 ▽大規模災害時の被災状況把握システムDISAANA&D―SUMM
 ▽言葉の壁をなくす多言語音声翻訳アプリ「Voice Tra」
◆「社会を守る」(サイバーセキュリティ分野)
 ▽サイバー攻撃観測・分析・対策システムNICTER
◆オープンイノベーション:
 ▽Wi―SUNを活用した地域見守りシステム
◆オープンイノベーション(委託研究)
 ▽8K/4Kハイブリッド対応フリーナビゲーション視聴
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 『宇宙天気予報センター(予報会議)の公開』では、NICT宇宙天気予報センターも公開した。宇宙天気予報とは、太陽からの光や電波、高温の大気、そのバリアとなる地球の磁気圏や超高層大気がどのような状態にあるか、人工衛星や地上の通信・放送インフラにどのような影響を与える可能性があるかを実況し予報するもので、NICTは1988年から継続的に取り組んでいる。毎日宇宙天気予報会議を開いて、宇宙環境変動の予報を行っており、衛星や地上観測によって得られたデータをほぼリアルタイムでモニターしている。宇宙空間の放射線は宇宙飛行士の被ばくの原因、衛星の半導体機器の誤動作や太陽電池劣化の原因となり、地上のシステムについても強い地磁気嵐に伴う誘導電流が送電設備に障害を与えることがある。こういった宇宙放射線や地磁気嵐などの宇宙環境変動を「宇宙天気」と呼び、それを精度良く予測するための研究開発が情報通信研究機構をはじめとする国内外の大学や研究機関で進められている。
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 『航空機・海洋ブロードバンドを実現する宇宙通信に関する研究開発』では、海洋・航空を含む宇宙空間や非常災害時に100メガビット/秒級のブロードバンド通信を提供する衛生通信の基盤技術の確立に向け、超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)で培ったブロードバンド通信技術の成果を踏まえた研究・開発が進められている。実現すれば、海洋資源調査を始めとする海域の船舶や、空域の航空機、災害発生時等に対し、衛生通信を活用したブロードバンド通信が可能となり、期待が寄せられている。Ka帯(20/30GHz帯)を利用して高速大容量通信を実現するもので、電波と光を組み合わせ変化するユーザーの通信要求にもフレキシブルに対応できる。NICTでは、このシステム実現のための基盤技術(通信システム技術や地球局技術)を研究しており、衛生搭載用超高速光通信装置(HICALI:High speed Communication with Advanced Laser Instrument)の開発を進め、平成33年度に打ち上げ予定の次期技術試験衛星計画への反映を目指す。
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 『言葉の壁をなくす多言語音声翻訳アプリ「Voice Tra」』では、話した内容を外国語にすぐに翻訳してくれるスマートフォン・タブレット等端末向けのアプリケーションを開発し、すでに無料で利用できる。このアプリにはNICTの研究成果である音声認識と翻訳、音声合成技術が活用されており、特許・論文・マニュアルなどの長文翻訳を得意としており、特許庁や国立研究開発法人科学技術振興機構との研究の連携も行っている。現在は、日本語・英語・中国語・韓国語など世界31言語に対応。シンプルな画面と操作、分かりやすいガイド表示により簡単に使える。また、翻訳結果を自分の言語に翻訳しなおして表示する便利機能により、意図が相手に正しく伝わっているか確認できる。旅行会話や病院、ショッピングなど様々な場面で活躍する。

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