情報・通信

世界最速長距離データ転送 NIIとNICT

【2016年12月09日】

 大学共同利用機関法人情報 ・システム研究機構国立情報学研究所(NII、東京都千代田区、喜連川優所長)と国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、東京都小金井市、黒瀬泰平理事長代行)は、NIIが開発したファイル転送プロトコル「MMCFTP」(Massively Multi―Connection File TransferProtocol)を用いた日本―米国間のデータ転送実験を行い、転送速度約150Gbpsで1~10テラバイト(TB)のデータを安定的に転送することに成功したと発表した。
 従来は80Gbpsの長距離転送が「世界最速」として報告されており、距離条件・転送速度ともに大幅に上回る今回の実験結果は 「世界最速」(1サーバー対1サーバーのデータ転送速度として)と考えられる。
 実験は、11月13日~18日に米ソルトレイク・シティで開催された国際会議「SC16」で米国から日本に向けてデータを転送する形で実施した。1TBを転送した時の実質転送速度(グッドプット)は137・2Gbps(転送時間58秒)~143・1Gbps(転送時間55秒)、10TB時は148・7Gbps(転送時間8分58秒)だった。1TBは一般的な25GBのブルーレイディスクで40枚分、地上波デジタル放送の動画に換算すると約120時間分に当たり、この大容量データを1分未満で転送した。
 日米間の往復遅延時間は、シアトル経由で115ミリ秒、ロサンゼルス経由で113ミリ秒だった。これは、転送速度84Gbpsを記録した昨年の国内実験 での25・7ミリ秒に比べて4倍以上だった。従来の転送プロトコルでは、遅延時間が4倍になると転送速度は4分の1になるが、MMCFTPは往復遅延時間の大きさに応じてTCPコネクションの数を自動調整するため、こうした問題は発生しない。
 実験は「メモリーtoメモリー」と呼ばれる条件で実施した。10TB転送時の実質転送速度は148・7Gbps(転送時間8分58秒)で、トラヒックはシアトル経由とロサンゼルス経由の2経路に、ほぼ均等に分散された。
 先端科学技術分野の国際協力による大量の実験データの転送に向けて開発されたMMCFTPは、ビッグデータを転送する際、同時に多くのTCPコネクションを使用することが特徴ダ。ネットワークの状況 (遅延の大きさやパケットロス率)に応じてTCPコネクション数を動的に調整することで、安定した超高速データ転送を実現する。NIIはMMCFTPを改良し、一つのファイルを送るのに複数のネットワークを同時に使う機能(マルチホーム機能)をこのほど新たに実装した。この結果、日米間200Gbpsの回線帯域を利用したデータ転送が可能になった。
 今回の実験では、NICTが運用する研究開発テストベッドネットワーク「JGN」の実験回線環境を、米ソルトレイク・シティのSC16の会場内に設けられたNICTブースまで伸長した。NIIが構築・運用する日本の学術情報ネットワーク「SINET5」が今年4月から日米間で運用を開始した100Gbps回線など独立した2本の100Gbps回線(合計200Gbps)を使用し、両実験回線はともに日本国内からSC16会場内のNICTブースまで、太平洋区間、米国内、会場内を経由した。これは、JGNおよびJGNと相互協力関係にあるSINET5などの国内外の学術研究ネットワークが密接に連携することで初めて実現した。今回のような実験的大容量データ転送においては、ネットワーク上を定常的に流れているデータトラヒックを処理しつつ実験に必要なネットワーク帯域や品質を提供することが必要であり、同時に高度なオペレーション技術や国際間の運用面の強い連携が求められる。NICTはこれまでに何度も国内外共同の実験を経験しており、実験に不可欠なネットワーク環境の提供とともに、これらの知見が今回の成功に大きく貢献したとしている。

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