情報・通信

ニューロフィードバック技術を開発 NICTなど

【2016年12月26日】

 国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の脳情報通信総合研究所(川人光男所長)、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の脳情報通信融合研究センター(CiNet)(柳田敏雄研究センター長)、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校の研究グループは、前頭前野と頭頂葉を含む高次脳ネットワークにおける空間的脳活動パターンを、被験者が自ら操作するニューロフィードバック訓練(DecNef、Decoded Neurofeedback)を実施した。その結果、物を見たときに感じる確信度を上げ下げすることに成功した。つまり、「確かに見えた」というように知覚への確信を強めたり、「見えた気がするけれど確かでない」というように確信を弱めることが可能となった。さらに、この効果は、1週間で8割以上維持され長期的だった。
 自らの知覚経験を振り返るメタ認知は、状況に適した振る舞いをするために不可欠だ。実際、こうしたメタ認知の異常は、依存症、統合失調症、強迫性障害など複数の精神疾患に関連すると言われている。例えば、自分が想像したことと、実際に見たことを正しく区別して認識できなければ、統合失調症にみられるような幻覚や幻聴に繋がる可能性もある。また、自分の行為(例えば、鍵を締めたかどうか)に確信を持てなければ、強迫性障害にみられるような不必要な確認の反復に繋がることもある。同研究成果は、メタ認知の異常が重要な原因と考えられているそれらの精神疾患の治療につながる可能性が期待できるものとしている。
 具体的には、同研究は、知覚経験の確信度を上げ下げするというように、認知状態を両方向に変容することに成功した。こうした結果は、DecNef訓練を多方面に応用していく上で非常に有益と考えられる。とりわけ、精神疾患の治療にDecNef訓練を応用する際には、そのときの患者の状態に応じて、必要な方向に脳活動を操作することが可能になり、操作方向を制御できるので、より適切な治療へと繋げることが期待できる。
 メタ認知の異常は、依存症、統合失調症、強迫性障害など複数の精神疾患につながる可能性が指摘されている。本成果は、そうした精神疾患を、メタ認知の訓練を通して改善させる臨床応用に繋がる可能性が期待できる。また、メタ認知を鍛えることは、効果的な学習に繋がると考えられており、DecNef訓練の教育面への応用も期待できる。
 これまでは、「知覚」そのものを支える神経基盤と、「メタ認知」を支える神経基盤が同じなのか否かについて決着がついていなかった。その理由は、従来の脳科学的手法ではこの2つの神経基盤の乖離を示すことが困難だったためだ。同研究では、DecNefを用いて脳活動パターンを操作した結果、メタ認知(知覚を俯瞰した際に得られる確信度)は変容する一方で、知覚そのものは変容しないことを示すことができ、メタ認知と知覚の神経基盤の乖離を示すことができたという。

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