NICT 「オープンハウス2018in小金井」を開催|電波タイムズ

情報・通信

NICT 「オープンハウス2018in小金井」を開催

2018718日】

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見えないところを飛ぶドローンをあやつる

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8K非圧縮映像配信デモンストレーション

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『フーコーの振り子』をデモ

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情報(コンテンツ指向ネットワーク技術

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、6月29日・30日にNICT本部(東京都小金井市)で、NICTの最新研究開発成果について講演・技術展示・ラボツアー(事前予約制)・ブース展示等により紹介する施設公開行事「オープンハウス2018in小金井」を開催した。テーマは「ICTで拓く未来」。平成30年度情報通信月間参加行事として行った。今年から、これまでの『秋開催』から『6月末の金・土開催』となった。6月30日の土曜日には、中学生、高校生、大学生らの次世代層による研究発表会(ポスターセッション)のほか、研究者による次世代層向けのサイエンストークなどを行った。また学生向けにポスタ―セッション、サイエンストークを開催した。
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 NICT4号館2階大会議室で6月29日午前10時から開かれたオープニングセッションでは、徳田英幸理事長が主催者挨拶した。新たな中長期計画期間に向けた平成30年度の活動のコアコンセプトなどを述べた。NICTでは、オープンイノベーション推進のための取り組みを進めている。徳田理事長は具体的には、産学官や地域などの新たな価値創造を目指すプレーヤーが、オープンな環境の中で先端成果を共有し、それぞれの取り組みに適応しながら検証するスタイルの開拓が必要―と述べた。そしてNICTではオープンイノベーション推進本部を設置。社会的実証重視型の研究開発の計画・推進や支援活動などを一体的に推進していく体制を整備することで、社会における新たな価値の創造に貢献する―と話した。
 NICTの運営方針では「Collaboration」「Open Mind,Open Innovation」「Challenger’s Spirit」であるとし、「Collaboration」では世界最先端の研究開発を推進するためには、自主研究のみならず、国内外の研究機関・企業・大学・自治体といった様々なステークホルダーとのコラボレーションが重要。技術の開発と普及を目指したコンソーシアムやアライアンスの形成、専門分野以外とのコラボレーションによる新分野の創出である―とした。「Open Mind,Open Innovation」ではオープンイノベーション推進本部の設置を掲げて、オープンマインドで様々なステークホルダーとの拠点活動を始動。技術的・社会的イノベーションによる「イノベーションエコシステム」の確立を目指すとした。「Challenger’s Spirit」では、NICTを世界最先端のICT研究機関とすべく、絶えずチャレンジャー精神を持って活動する―とした。
 新たな中長期計画期間に向けた平成30年度の活動のコアコンセプトでは、研究者、有識者、NICT関係者との意見交換、多様な人・組織を巻き込む社会的な活動、将来に向けた研究課題の検討、組織改革、業務改善、機構内連携の推進―がポイントとして、外部連携及び研究者によるアカデミックな議論、多種多様な社会的な活動とアイデアの創発をさらに強めるとした。
 続いて、特別講演が午前10時30分から行われた。「テクノロジーの進化は、サンフランシスコ・ベイエイリアの人々の日々の生活や価値観をどう変えたのか?」と題して、Scrum Ventures Partner/First Compass Group,General Partner/前Evernote Japan会長の外村仁氏が行った。
 次に各種展示でピックアップして紹介する。
 1号館(本館)には『フーコーの振り子』を展示した。NICTの経営企画部情報通信システム室電波利用管理・試作グループは、一般の来場者に科学技術の一端に触れてもらうことを目的に、モノ作りの技術者が試作開発力を駆使してNICTのフーコーの振り子を製作し展示した。地球上で振り子を振ると、地球の自転に影響を受けずに振動するため、地上の観測者からは振り子の振動面がある速度で回転しているように見える。フランスの物理学者レオン・フーコー(1819~1868)は、この現象が地球の自転で起こることに気付き、1851年1月に振り子を使って地球が自転していることを初めて実験的に証明した。
 同じく1号館では『8K非圧縮映像配信デモンストレーション』を実施した。NICT総合テストベッド研究開発推進センターは、国内の企業、大学等研究機関における実証実験の場として、ネットワークテストベッドJGNをはじめとする様々なテストベッド環境を提供している。今年2月の報道発表では、NICTと産学官53組織がそれぞれ技術や人材、機材を持ち寄り実現した実証実験において、北海道札幌市で2月に開催された「さっぽろ雪まつり」及びシンガポールとの国際連携による同国からの超高精細8K非圧縮ライブ映像を用いて、複数の国際回線を使った映像の多重配信に世界で初めて成功した。これは、送信時に複製した映像データを複数の回線で同時配信することで、物理回線断時にも途切れることなく8K映像ライブ配信を行えることを実証するもの。2月の実験では、NICTが提供するテストベッドStarBEDにて、8K映像の録画、再送も実施した。映像配信は、NICTと共同研究を行う神奈川工科大学での実験システムを中心に、実験システム構築は、多くの企業が参画することにより可能となった。ネットワークや8K映像配信の実験環境は、各企業が持ち込んだ開発中プロトタイプ機器や製品を組み合わせて構築したマルチベンダ構成であり、実験を進める中で開発チームが自らソフトウェアの改良やハードウェアの組換えを行い実現した。
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 4号館ではデモンストレーションとして『超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)を利用した洋上の調査船とのリアルタイム高速伝送』を行った。NICTのワイヤレスネットワーク総合研究センター宇宙通信研究室では、次世代の海洋資源を調査するため、鹿児島県奄美大島近くの洋上を航海中の調査船とNICT本部を、超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)で接続し、船上から映像等のデータをリアルタイムで伝送する実験を行っている。船舶用衛星地球局と小金井市のNICT本部の船舶用衛星地球局間の伝送速度は10Mbps。海洋上からの伝送速度では世界最大級という。そして、オープンハウス期間中、船上からの映像や船員との通話ができる双方向対話のデモを実施して注目を集めた。
 同じく4号館では『見えないところを飛ぶドローンをあやつる』を紹介していた。NICTのワイヤレスネットワーク総合研究センターワイヤレスシステム研究室では、電波をリレーしてドローンを飛ばす「コマンドホッパー」と、飛ぶモノどうしがお互いの位置を知る「ドローンマッパー」を展示した。「コマンドホッパー」は、電波をリレーしてドローンを飛ばす。他のドローンが間に入ることで電波をバケツリレーのようにつなぐ技術だ。現在の技術では、飛行中のドローンが山や建物のかげに行ってしまうと電波が届かなくなり、ドローンをコントロールできず、どこを飛んでいるかがわからない。それを解決する技術だ。「ドローンマッパー」は、飛行中のドローンが電波を使ってお互いの位置や高度、相手の情報を知ることができるシステム。安価で誰でも操作しやすい小型の装置を用いている。タブレット画面を見れば、自分の近くにどのようなドローンやヘリが飛んでいるのかがすぐわかるため、安全に飛行できる。最近の実験では、ヘリとドローンが約9㌔㍍離れていてもお互いの位置を知ることに成功した。
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 5号館ではNICTのネットワークシステム研究所・ネットワーク基盤研究室が『情報(コンテンツ)指向ネットワーク技術(ICN/CCN)』を展示した。これは、IPアドレスではなく、情報識別子(コンテンツ名)を用いた通信技術を駆使し、効率の良い、低遅延・高品質なサービスを実現するもの。ICN/CCNは情報識別子(コンテンツ名)を中心に据えて設計された次世代の通信技術。現在世界中で利用されているインターネットプロトコル(IP)通信は、端末の場所(IPアドレス)に基づいて設計されたネットワーク。こちらは、通信の識別子としてコンテンツ名を利用し、ネットワーク内部で様々な処理を行い、通信の効率化を実現する。具体的には、中継ルータで同一コンテンツへの要求を集約・配信することで、大規模マルチキャストストリーミングを容易に実現。中継ルータにコンテンツのキャッシュ(コンテンツデータのコピー)を置き、コンテンツ要求者に近いルータが応答することで、高速・低遅延の通信を実現する。通信チャネルを暗号化するIPと異なり、コンテンツ自体を暗号化して通信することで、セキュリティーやプライバシー保護を強化している。そしてここでは、CCN通信を実現するソフトウェアプラットフォーム「Cefore」とCeforeを用いて広域ネットワーク環境をエミュレートするCefore―Emuを開発。Ceforeを用いた大陸間動画ストリーミングをデモした。模倣インターネット上にCeforeを導入した仮想的なCCNネットワークに現実のAPを接続したハイブリッド環境での動画配信実験となっている。
 同じく5号館では、NICTの先進的音声翻訳研究開発推進センター統合システム開発室が『リアルタイム多言語字幕付与システム』を紹介した。短い文をやりとりする対話の場合は、NICTの音声翻訳アプリ「VoiceTra」のように発話単位で音声翻訳処理を実行する方式でも大きな遅延は生じないが、講演や会議のように一人の話者が複数文を話し続ける場合は、発話単位で処理する方式では遅延が非常に大きくなり実用的では無い。この問題を解決するために人間の同時通訳者のように、処理できる最小単位で音声翻訳を実行するシステムの研究開発をNICTは進めている。今回の展示は、その仕組みを説明すると共にリアルタイムに多言語字幕を付与するプロトタイプシステムのデモを行った。単語列を翻訳できる単位にまとめる。短い文だと翻訳/合成の処理時間が短くなる―のがポイントだ。デモではほぼリアルタイムで動画に字幕をオーバーレイ表示しているところを見せた。

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