情報・通信

NICT理事長記者説明会を開催

20181015日】

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会見する徳田理事長

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、徳田英幸理事長が10月11日に情報通信研究機構イノベーションセンター(東京都千代田区)で第16回NICT理事長記者説明会を開催して、最近のトピックスを話した。「今日の説明会の内容は、テーマ『光ネットワーク基盤技術の社会展開』において、ひとつ目は『空港滑走路システムと高速鉄道通信システム』、2つ目は『直径0・16㍉㍍の4コア・3モードの光ファイバで毎秒1・2ペタビット伝送成功』である。特に2つ目は、9月27日、イタリア・ローマにて開催された光通信分野における世界最大級の国際会議『ECOC2018』において、既存光ファイバとの接続性を確保しつつ、格段に容量が大きい新型光ファイバの早期実用化に寄与するとして最優秀ホットトピック論文に採択された」と話した。
 続いて「空港滑走路システムと高速鉄道通信システム」と題してネットワークシステム研究所ネットワーク基盤研究室の山本直克室長が会見した。要旨は『5Gインフラの低コスト化実現のため、電波のアナログ信号をそのまま光ファイバに乗せる「光ファイバ無線」と「リニアセル方式」とを合わせた新しい取り組みとして、2016年から成田空港等にて実証実験が行われている「空港滑走路監視システム」と今後の実用化が期待される時速500㌔㍍でも接続の切れない「高速鉄道通信システム」の開発について』である。
 「光ファイバ無線で重要なデバイス技術は、周波数が高い電波を伝送するために高精度で高性能なデバイス技術が必要だ。NICTは、光の波形信号を電気の波形信号に変換する、小型で高機能な光電変換デバイスなどを開発した。この光ファイバ無線と、無線のカバーするエリアを直線的に配置する構成である『リニアセル方式』によって、空港滑走路上の3㌢㍍程度の異物を30秒以内に検出する『空港滑走路監視システム』を開発した。ポイントは光技術を用いた新しいミリ波レーダーシステムだ。実証実験ではレーダーから250㍍先のナットの検出に成功した」という。
 電波の周波数の最適化、広い帯域を確保する90GHzミリレーダーを用いた。90GHzミリ波信号のための高精度周波数差を光ファイバで各レーダーへ伝送する。すなわち、光電変換デバイスが受け取った光信号を90GHzミリ波に変換して、90GHzミリレーダーからミリ波を放射して、異物から反射する電波を検出する仕組みだ。光と無線を効率的かつシームレスに利用するための基盤技術研究の成果となっている。
 続いて、「直径0・16mmの4コア・3モード光ファイバで毎秒1・2ペタビット伝送成功」と題してネットワークシステム研究所フォトニックネットワークシステム研究室の淡路祥成研究マネージャーが会見した。
 NICTネットワークシステム研究所とフジクラは、北海道大学、オーストラリアMacquarie大学MQ Photonics Research Centreと共同で、直径0・16㍉㍍の4コア・3モードの光ファイバと、コアとモードを一括で多重/分離するカプラを開発し、368波長全て256QAMという非常に高密度な多値変調を行い、毎秒1・2ペタビットの伝送実験に成功した。
 これまでの毎秒ペタビットを超える大容量光伝送の研究では、12コア以上で直径が0・21㍉㍍を超えた光ファイバを用いていた。今回、世界で初めて曲げや引っ張りに強い直径0・2㍉㍍以下の光ファイバで毎秒1ペタビットを超える伝送に成功した。また、既存光ファイバとほぼ同サイズのため、ケーブル化や既存ファイバとの接続が容易であり、早期実用化に向けて大きく前進したもの。
 淡路氏はまず「総務省によるわが国のインターネットにおけるトラヒックの集計結果では、その情報流通量は8年間で約10倍に増加している。今やすべてのデータ通信が光ネットワークに集中しており、既存光ファイバの伝送容量の限界もあって、2020年代には商用光伝送システムで需要の予測が限界を超える」と光ファイバ容量の危機を示した。そして、今回、世界で初めてクラッド直径0・16㍉㍍で容量1・2ペタのマルチコア光ファイバを開発したと発表。「新型ファイバの実用化の鍵は、光ファイバの太さとケーブル化や敷設作業との関係にある。ガラス製の光ファイバは太くなるとしなやかさが失われ、糸よりも棒の性質に近くなる。すなわち、機械的強度を保てる実用的な直径の上限がある。そこで、今回の研究開発の技術ポイントだが、クラッド直径においては既存光ファイバに近く破断確率が同程度、十分な機械的強度を有した。被膜外径においては既存光ファイバと同じ、テープ芯線やケーブル加工の際に製造上の互換性を持たせた。他の大容量マルチコアファイバとの比較では、クラッド直径が細いため、同サイズの母材から長いファイバが得られる製造性の高さがある。光ファイバ同士の接続では、融着接続作業の難易度が既存光ファイバと同等、さらに接続損失も低い」と話した。
 シングルコアファイバとの接続技術では、小型石英基板内に短パルスレーザ光を当てることによって、高い位置精度で自由自在に導波路を配置する技術によって、低損失かつ長時間にわたり安定した大容量伝送を実現した。

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