情報・通信

電気通信普及財団 武内理事長インタビュー

2020427日】

写真 1
武内信博理事長

 公益財団法人電気通信普及財団は1984年の発足以来、35年にわたり、情報通信に関する学術研究に資する助成・援助・表彰事業を展開してきた。35年間の助成・援助・表彰の総額は85億円。情報通信のさらなる発展に資する優れた著作や研究論文を表彰する電気通信普及財団賞では775件を表彰、表彰金額の合計は2・3億円。助成・援助の総件数は8800件、助成・援助の合計は83・3億円となっている。武内信博理事長に2020年度の新規施策などを聞いた。

 ――昨年6月に電気通信普及財団理事長に就任されました。ここまでお感じになったことをお聞かせ下さい
 「理事長に就任して、業界の方々に挨拶に伺ったところ、情報通信の学術研究に従事されて今や〝大御所〟となられた研究者の方々が、若い時に当財団の助成・援助を活用して研究を進展させ、財団賞を受賞されていることを知った。財団設立以来35年、研究助成を続けてきたという意義を改めて感じた。35年にわたる財団の助成・援助・表彰の事業を通じて、情報通信に関する学術研究者の方々の成長に貢献してきたと自負している。今後も引き続き、研究者と歩みをともにして財団の事業に取り組んでいく」

 ――電気通信普及財団設立35周年記念事業についてお話しください
 「財団設立35周年記念事業として、『情報セキュリティ』と『防災ICT』という最近重要性を増しているテーマに限定した研究調査助成を別枠で募集した。当初の想定を大きく上回る応募をいただき、人文・社会科学分野、技術分野、両分野にわたる分野のそれぞれにおいて、意欲的なテーマの研究調査助成を採択することができた」

 ――2020年度の新規施策として、学術研究出版助成を行うとお聞きしました
 「学術研究出版助成は、情報通信に関連する学術研究調査成果の書籍出版を助成するもの。研究の活性化に資するものとしたい。対象は人文・社会科学分野、技術分野、または両分野における情報通信に関する研究。近年、学術研究者の方々の書籍出版の環境が厳しくなっている。電気通信普及財団賞でこうした優れた著作・研究論文を表彰してきたが、最近は出版すること自体が非常に厳しいと聞く。こうした背景から、なかでも若い学術研究者らを支援していきたいと考えた。いうなれば〝欠けたピースを埋めていく〟といった気持ちだ。こうした活動で出版されたものから、さらにすばらしい著作が出てくれば、それは財団賞にも応募していただけるようにする」

 ――3月の電気通信普及財団賞贈呈式はウェブで行いました。何か感じたことがありましたか。
 「今年は、新型コロナウイルス感染症の影響拡大で、35年で初めてホームページ上でのバーチャルな電気通信普及財団賞贈呈式となった。改めてICTの利便性を感じた次第だ。合わせてフェイス・トゥー・フェイスで行う価値も再認識した。これはもう財団賞というよりは、当財団の活動全般について言えることかもしれないが、そういうICTの利用については、リアルを代替することだけではなくて、ICTの持つ独自の特徴をどうやって活かしていくかが重要だと感じた。リアルとバーチャルの使い分け、組み合わせを、どうしたら最大化できるのか。当財団も含めて様々な業界の課題であると、今回の贈呈式が考えるきっかけとなった」

――もうひとつの新規施策として、電気通信普及財団賞の表彰金に関しても変更すると聞きました
 「創設以来、据え置かれていた電気通信普及財団賞の表彰金を大幅に増額することとした。財団賞は長い間表彰金が変わっていなかったので、ほぼ倍増することで、魅力を高めてさらに幅広く応募されることを期待する。情報通信に関する研究者にとってより魅力のある表彰となり、学術研究の活性化につながればと思う。毎回、非常にたくさんの応募をいただき感謝している。今後も、特に大学生も含めた若い方々からのたくさんの応募をお願いしたい。東京近辺だけではなく、地方からの応募も期待している」
 
 ――従来からの財団の事業についてポイントをお聞かせ下さい
 「設立35周年となる2019年度における、助成・援助・表彰は全体で215件1億9000万円。電気通信普及財団賞では、17件500万円、助成・援助が全体で198件1億8500万円となった。研究助成、あるいは社会的課題の解決に向けた事業に関しては、私どもは〝レイヤー〟と呼んでいるが、物理的なネットワークから徐々に、利活用する方向へ課題が移ってきている。物理的なネットワークの研究にはあまりこだわらず、様々な社会的課題に結びついた分野について助成なり表彰なりの対象に広げていくべきではないかと考えている。製造業、農業、医療、教育、公共サービスなど様々な分野・業種が『ICT活用の促進』を進めて、社会的な課題を解決していくことが重要になってきた。例えば5G、ローカル5Gにしても異業種とコラボレーションして社会的課題の解決に貢献しようとしている。財団は従来から、こういったところに対して研究助成を行ってきたが、今後はさらに進めていかなければいけない」

 ――従来からの財団の事業についてポイントをお聞かせ下さい
 「設立35周年となる2019年度における、助成・援助・表彰は全体で215件1億9000万円。電気通信普及財団賞では、17件500万円、助成・援助が全体で198件1億8500万円となった。研究助成、あるいは社会的課題の解決に向けた事業に関しては、私どもは〝レイヤー〟と呼んでいるが、物理的なネットワークから徐々に、利活用する方向へ課題が移ってきている。物理的なネットワークの研究にはあまりこだわらず、様々な社会的課題に結びついた分野について助成なり表彰なりの対象に広げていくべきではないかと考えている。製造業、農業、医療、教育、公共サービスなど様々な分野・業種が『ICT活用の促進』を進めて、社会的な課題を解決していくことが重要になってきた。例えば5G、ローカル5Gにしても異業種とコラボレーションして社会的課題の解決に貢献しようとしている。財団は従来から、こういったところに対して研究助成を行ってきたが、今後はさらに進めていかなければいけない」

――情報通信の研究者のステップアップと電気通信普及財団の助成・援助・表彰について具体的にお話しください
 「電気通信普及財団は、情報通信に関する学識研究者のために、若手研究者としての駆け出しの時期から、研究業績を積み重ねていき、さらには、学術研究の広がりや継承のための中心的な役割を果たしている。今まで以上に、研究者として進展していく道程において、電気通信普及財団の助成・援助を活用してもらえるようにしていく。さらに、その研究成果を電気通信普及財団賞によって顕彰していく。若手研究者として海外渡航旅費援助により海外の学会で研究成果を発表する。優れた論文であれば、電気通信普及財団賞学生賞を授賞する。その後、研究調査助成を活用して研究業績を積み重ねて伸ばしていく。研究成果をとりまとめて、学術研究出版援助を活用して研究成果を出版する。海外の大学院等の研究室における研究の機会を拓き、長期海外研究援助を活用して海外での研究成果を上げる。研究業績を確かなものとしていくなかで、優れた著作/研究論文については財団賞を授賞する。学会の中心メンバーとして情報通信関連の学術研究の向上のために、シンポジウム開催援助を活用して国際会議を実施する。特別講義開設援助を活用して、大学教育における情報通信関連の講義を充実していく」

――今後の抱負をお聞かせください
 「新型コロナウイルス感染症の影響拡大で、4月16日、全国に緊急事態宣言が出された。感染予防と社会・経済活動を両立させるうえで、情報通信への期待と役割は大変に大きなものとなっている。そして、そのような情報通信に関する人文・社会科学分野、技術分野、両分野にわたる学術研究の活性化が、情報通信をより社会・経済への貢献度の大きなものとしていく。当財団は、助成・援助・表彰を通じて、情報通信に関する学術研究に貢献していきたいと考えている。『Society5・0~超スマート社会の実現~』に向けて、多業種での『ICT活用の促進』が必要とされてきた。今回、未曾有の状態となったことを契機に、私は社会全体の体質が変わるのではないかと考えている。これまで関係省庁などが『ICT活用の促進』と打ち出しながら、それほど浸透しなかった理由は、今回のような〝認識の変化〟が起こらなかったからではないか。もっというと、制度面や組織の運営自体まで『ICT活用の促進』に必要な認識の変化が起こらなかった、踏み込めていなかったのではないか」

「『ICT活用の促進』は、これまではいわばスローガンだった。未曾有のインシデントではあるが、感染症の影響を契機として、そこまで考えなければいけない段階になったのではないか。今回のことをきっかけにリモートワークにしても遠隔医療、遠隔教育にしても、またそれに伴う制度面、会社の組織のあり方や運用の仕方とかも含めてすべて見直すことになるのではないか。そして、おそらくこれからはICTの活用がごく日常になってくるのではないか。そうすると、ICTがほかの社会活動とほぼ渾然一体になるのではないか。ICTを使って社会的な課題を解決する―のではなくて、〝ICT的〟なその活動自体がその中に一部組み込まれていくようなイメージだと思う。そういう時を目指して、私ども財団が研究助成などを、どのように進めていくべきなのだろうか熟慮したいと思う」

情報・通信一覧へ  トップページへ