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イートラスト 酒井社長インタビュー クラウド型防災監視カメラシステム

202061日】

写真 1
酒井龍市社長

写真 2
「eT001s」筐体写真

写真 3
「eT001s」設置現場

 イートラスト(東京都台東区、酒井龍市社長)は、自社開発の簡易型河川監視カメラ、危機管理型水位計を多くの自治体に納入している。「防災IoT特集」にあたって、酒井龍市社長に話を聞いた。
 イートラストは、簡易型河川監視カメラで、国土交通省「革新的河川技術プロジェクト(第3弾)」(2018年度)実証実験に参加。その目的は『氾濫の危険性が高く、人家や重要施設のある箇所に簡易型河川監視カメラを設置し、河川状況を確認することで、従来の水位情報に加え、リアリティーのある洪水状況を画像として住民と共有し、適切な判断を促す』である。プロジェクト目標は2020年度末までに全国約3700ヵ所の設置を行うとなっている。
 その中でイートラストのクラウド型防災監視カメラシステム「eT001」の導入が相次いでいる。
 酒井龍市社長はその理由を次のように述べた。
 「令和元年度が終わって、国交省直轄と15都道府県で約800台の受注することができました。半分の約400台が設置工事が終わって順次稼働に入っています。これは当初の予想以上の数字ですが、私どもは、平成16年(2004年)7月新潟・福島豪雨災害の頃からこの取り組みを進めており、豪雨災害に関してはずっと先頭を切って取り組んできた自負があります。その点が結果として現れたと思います。当社は、2004年から本体制御装置、電源BOX装置、ソーラーパネルで構成されて、携帯電話の回線で静止画を送ってくるタイプの簡易型河川監視カメラを、国交省が基準を策定する以前から取り組んできました。競合他社は近年、製品化したところがほとんどで実績もない。私どもは、すでに平成30年度までで約200台の実績がありました。5年以上の運用実績が十分あったことも奏功しました」と話した。
 「eT001」の特長は、インフラ条件に左右されずにすぐに設置可能。配線工事不要のため、利用者による容易な設置が行える。災害時に通信や電気が遮断されても、遠隔で災害現場の情報を受信できる。完全ワイヤレスで撮影画像、測定データを取得し、クラウドサーバーへ送信する。電気設備等の整っていない場所でも容易に設置・加工ができる。ニーズに合わせ、気象センサーや水位センサーなど多様なセンサーを組み合わせたカスタマイズが可能。星明かり程度の明るさでも現地画像の確認が行える。クラウドサービスによりいつでもどこからでも画像・データを確認できる。
 同社は、クラウド型防災監視カメラシステムで基本機能を踏襲しながら、カメラ本体が小型軽量化した「eT001s」を昨年、製品化した。その特長はレンズカバーが小さくなって水滴の影響が減少。風圧加重が少なくなった。設置場所の自由度が向上した。目立ちにくくなって景観への負荷も減少した。従来機と同様、設置工事も簡単―など。
 「同業他社は、市販の動画のネットワークカメラをLANでつないで、モバイルルーター、バッテリーと組み合わせてシステムアップしているので、結果的に消費電力が大きくなってしまいます。特にソーラーパネルは常時稼動を考えると大きくなってしまいます。当社の場合は、もともと携帯電話のデバイスを活用しようということで設計しており、静止画に特化した作りをしていますので小型軽量化が可能。もともと小さい基板に工業用のUSBのカメラを実装してカメラに仕立て上げていますので消費電力が極めて小さいし、基板等も非常に小さいのでコンパクトな筐体の中に集約できました。合わせて30㍗のソーラーパネルと26アンペアのバッテリーの組み合わせで低消費電力が実現しました。ソーラーパネルとバッテリーの大きさは他社製品と比べて最も小型となっています。そして基本機能を踏襲して小型軽量化した『eT001s』も大変評価を得ています。従来機の『eT001』はカメラ部分がドーム型で、レドーム部分も球状でした。『eT001s』はそれを箱型としたことで製作の手間とコストが削減できました。レドームが球状ではないので、雨粒の影響が軽減されるメリットがあります。『eT001』と仕組み的にはほとんど変わりません。筐体の収納部分が違うだけで基板など使っているモジュールはほとんど変わっていません。ただ、最低被写体照度で、カメラの感度を高いものに変更しました。最低被写体照度を0・02ルクスに上げています。『eT001s』はすでに昨年秋から導入が開始しました。昨年末以降の受注に関しては『eT001s』に一本化しています。おかげさまで百数十台単位で導入いただいた自治体も出ており、大きな評価を得ていると感じています。例えば、熊本県の事例では、5分ごとに静止画をクラウドサーバーにアップするシステムとして数百台規模のクラウドサーバーの稼働が始まりました」(同)。
 イートラストは、国土交通省「革新的河川管理プロジェクト(第1弾)」と「革新的河川技術プロジェクト(第2弾)」のどちらにも参加して水位計の開発を行ってきた。同社は、水位の計測方法がレーダー式・76GHzの水位計「eWL001―D」を展開してきた。前年度は、バージョンアップした新製品を投入。国土交通省危機管理型水位計仕様に準拠した製品で、小型(幅100、奥行き100、高さ60㍉㍍)、軽量(約350㌘)で取付け工事も軽減。非接触の電波方式でメンテナンスフリー。霧や降雨・降雪時においても測定可能。最大50㍍まで計測可能。低消費電力を実現する。センサタイプは非接触型電波式・24GHzとなっている。
 「国交省の危機管理型水位計の納入は、ほぼ今年度終わります。今後は、自治体の各市町村が単独で納入する動きになるので、当社はそこをねらいます。単品販売ではなく、簡易型河川監視カメラと危機管理型水位計及び雨量計をトータルソリューションとして拡販します。例えば、河川監視カメラ4台と水位計2台をセットにしたオーダーなど、それぞれ複数台の受注が決まっているケースがすでに出ています。例えば、クラウドサーバーと合わせて工事費込みで1000万円弱の小規模案件なども様々な自治体様から問い合わせが入っています」
    ◇   
 安否・在籍確認システム「AZ BOARD」(エーゼットボード)は、過去の災害経験をもとに開発され、普段から在席確認(行き先掲示板)として、また社員間の連絡手段として日常的に使えるシステムとなっている。そのため、災害発生時などの緊急時に大変効果のある3つの特長を備えた。
 ひとつ目の特長は『同じ画面を使うので訓練なしで緊急時も利用可能』。「AZ BOARD」では緊急連絡メールを普段使用している一斉連絡メールと同じ操作で送ることができる。緊急連絡に対する回答状況も普段と同じ画面上で行える。
 2つ目は『緊急事態発生時の社員の状況がわかる』。「AZ BOARD」では普段から行き先を入力しているので、緊急事態発生時に誰がどこで何をしていたのかがわかる。災害発生時の社員の居場所に応じて、対応の優先付けをスムーズに行うことができる。
 3つ目は『どこで緊急対応しているのかが共有できる』。「AZ BOARD」では、災害発生時の状況確認が済んだ後も、緊急対応を開始した社員の作業状況確認に利用できる。現在の作業場所と安否の状況、2つの視点から社内を把握することができ、情報を利用する社員の立場に応じた状況把握が行える。
 「私どもの本店は、創業の地である新潟県長岡市です。『AZ BOARD』を開発した背景は、2004年に発生した新潟中越地震です。当時、私どもの社内で、社員の誰が避難している、誰が現場に行っているとホワイトボードに書いていましたが、これをデジタル化しようと製品化しました。当社の社員は始業時に一番最初にこの画面を見て確認作業をしています。社内での実践を経て、新潟県の会社などに導入しています。緊急メールを単に送信するツールではなくて、誰がどこに行っているか、例えば夕方5時半まで点検作業に入っています、クルマで移動中ですといった情報が見られます。社内では『AZ BOARD』によって『会社の動きが手に取るように分かる』『疎外感を感じないで済む』『グループ会社の状況もよくわかる』といった声が出ています。テレワークの観点ではディスプレイ上で在宅勤務の人を色分けしてすぐに把握できるようになっています。以前導入した長岡市様の職員向け緊急メールシステムを昨年、リニューアルしました。一斉メールや消防担当の人のみに送るグループメールといった運用で評価を得ています。今後も、防災に携わる自治体や建設業などに向けてシステム提案をしたいと考えています。テレワーク導入企業が増えている現在、この『AZ BOARD』をうまく活用いただけないかシステム提案を行っています。スマートフォンなどのモバイルとの連動も次のバージョンアップで考えています。このツールは、役所の方が情報の連絡を密に行って防災活動を支援するツールですので、具体的には見えていませんが、コロナの感染症対策も含めた何か新しい提案ができればと思っています」(同)。
 さらに「各自治体様には、この夏の豪雨対策はもう待ったなしなのです。先日も東北に出張してデモ説明をしましたが、コロナのこういう状況で、大災害が起こったらどうしようと。九州のある市役所の方に3月末に話をうかがったところ、この状況で水害が来たらどうしようと、避難するにしても避難所は〝3密〟じゃないですかと。要は的確な情報判断と指示がますます必要になるので、これは待ったなしなんだと。5月末に河川監視カメラが稼働できるか、あるいは去年の台風の修復が終わっていないがそこに河川監視カメラを付けたいといった声もあります。コロナはあるがこっちはこっちで待ったなし。コロナ騒ぎがあるがゆえに、的確な情報判断が必要だということで危機意識が急に高まっている感じがします」(同)。
 最後に今後の展望を聞いた。「当社は、今年度も河川監視カメラを積極的に拡販していく考えです。一方で、新型コロナウイルス感染症の影響がいつになったら終息するのかは誰も予測できません。企業活動では事業がスムーズに進めなくなる局面もあるでしょう。コロナがなければ、昨年度以上に防災に対する国の予算が出て、各自治体の防災対策が間違いなく加速したとみています。ただ、コロナがあったとしてもなかったとしても、近年の台風災害などを考えれば、防災への取り組みは止まることなく進んでいかなければいけません。当社は、今まで以上に河川監視カメラなどの拡販を通じて、安心・安全につながる防災・減災システムを自治体様に導入いただき、住民の〝命〟を守ることに貢献したいと思っています」(同)。

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