「脈動オーロラ」同時観測
電気通信大学大学院情報理工学研究科博士前期課程修了の伊藤ゆり氏(現国立極地研究所宇宙圏研究グループ特任研究員兼総合研究大学院大学博士後期課程1年)、及び細川敬祐電気通信大学大学院情報理工学研究科情報・ネットワーク工学専攻教授を中心とする研究グループは、ノルウェーのトロムソに設置されている全天型オーロラ撮像装置と、大型大気レーダーで観測したオーロラや超高層大気の電子密度と、地球近傍の宇宙「磁気圏」で観測された波動や電子のデータを比較することにより、点滅するオーロラ「脈動オーロラ」の形状、磁気圏から大気中に降り込んでオーロラ発光を引き起こす電子、並びに磁気圏における電子密度の管状構造「ダクト」の関係を明らかにした。最近の研究で、脈動オーロラの発生時には、地球大気中に降下してオーロラを光らせる電子のほかに、より高エネルギーの電子(相対論的電子)も降下して中間圏・上部成層圏のオゾン破壊を誘発することが示唆されている。研究グループの今回の成果は、相対論的電子の宇宙区間における分布の可視化や地球大気中に降り込むメカニズムの解明に繋がるものと期待され、注目されよう。
極域の夜を彩るオーロラは、地球近傍の宇宙空間に形成されている磁気圏から地球大気中に降り込んできた電子(降下電子)地球大気中の窒素や酸素などの粒子と衝突することで発光する。脈動オーロラの発光をつくり出す電子(脈動オーロラ電子)は一般的に10キロ電子ボルト(keV)程度のエネルギーを持っており、その多くは磁気圏の赤道面で発生する波「コーラス波動」によって散乱され宇宙空間から地球大気中に降下していく。
最近の研究では、脈動オーロラが発生しているとき、脈動オーロラ電子よりも高いエネルギーを持った電子(相対論的電子)が同時に降下して、中間圏・上部成層圏のオゾン破壊を誘発していることが示唆されている。そのため、脈動オーロラの特性を理解することの重要性は高まっている。これまでに、脈動オーロラ電子のエネルギーが脈動オーロラの形状が斑状になるという観測例の報告がいくつかあった。
(全文は10月9日付紙面に掲載)
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