雲エアロゾル放射ミッション衛星「はくりゅう」からの画像を初公開
JAXA(宇宙航空研究開発機構)とNICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)は、日本と欧州が協力して開発を進め、2024年5月(日本標準時)に打上げに成功した雲エアロゾル放射ミッション「EarthCARE」(Earth Clouds、Aerosols and Radiation Explorer)衛星「はくりゅう」の運用状況を報告し、同衛星によって撮影した「シナジー雲画像」を初公開した。
EarthCARE(Earth Cloud Aerosol and Radiation Explorer)は、日本と欧州が協力して開発を進める地球観測衛星。搭載する4つのセンサ(雲プロファイリングレーダ、大気ライダー、多波長イメジャーおよび広帯域放射収支計)により、雲、エアロゾル(大気中に存在するほこりやちりなどの微粒子)の全地球的な観測を行い、気候変動予測の精度向上に貢献する。
気候変動予測は、コンピュータによるシミュレーションで行われているが、このシミュレーションの正確さは、自然現象をいかに正確に反映しているかが重要となる。しかし、気候変動に関係する自然現象がすべて明らかになっているわけではないことなどから、現在の予測には不確実性が生じており、この不確実性が生じる要因でとりわけ大きいと言われているのが、地球大気の放射収支における雲やエアロゾルの効果という。
日本が開発を担当した、雲プロファイリングレーダ(Cloud Profiling Radar、CPR)は、衛星軌道上から地球に向かってミリ波帯電波を送信し、雲粒によって散乱されてくる電波を受信することで、どの高さにどのような雲が存在するかを観測することができる。これまでの衛星搭載雲レーダーよりさらに高感度で雲を観測できることに加えて、衛星搭載レーダーとして世界で初めて雲の速度(上昇や下降)を計測できるという。
2024年5月29日7時20分(日本標準時)に打ち上げられた同衛星は、順調に観測を続けており、6月12、13日にかけて初観測を実施した。日本の東海上にある梅雨前線上の雲域の内部を捉え、世界で初めて宇宙から雲の上下の動きを測定することに成功した。
はくりゅうの観測の特徴は、雲プロファイリングレーダ、大気ライダー、多波長イメジャーおよび広帯域放射収支計の4つのセンサによってひとつの対象地点を同時刻に観測する「シナジー観測」。各センサのデータを複合的に組み合わせることで、ひとつのセンサだけではわからない新たな情報を提供することができる。この4種類のセンサが1つの衛星に搭載されるのは初めてのことといい、JAXAは、NICT、九州大学、国立環境研究所、東海大学、東京大学、リモート・センシング技術センター(RESTEC)と協力してデータ処理手法を開発してきた。
(全文は10月16日付紙面に掲載)
この記事を書いた記者
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