画像と音楽由来の感情部位を特定

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター(CiNet)において、パナソニック株式会社エレクトリックワークス社及び同志社大学の研究者らと、fMRIを使った心理実験によって、映像視聴時に視覚由来、聴覚由来で感情が喚起された時に異なる活動をする脳部位を特定したと明らかにした。今回の発見と技術に対する研究開発により、今後、ヒトの感動(move)に関わる脳内過程の解明が促進されるとともに、ヒトの感動を喚起するモノやサービスの研究開発にも役立てられることが期待されるという。
 fMRI(機能的磁気共鳴撮像法、functional Magnetic Resonance Imaging)は、核磁気共鳴の原理を利用して、脳の神経活動に付随して生じる局所的な血流変化を計測し、画像化する手法。NICTによると、心理実験やfMRI実験を行い、映像(視聴覚刺激)を見て喚起される感情に関わる脳部位を特定することに成功したという。
 ヒトは見る、聞く、嗅ぐなどのいわゆる五感を通して、外界の情報を処理しているが、感情を喚起された時に活動する脳部位や脳情報の処理過程はいまだ解明されていない部分が多い。その主な理由として、多くの場合、何かを感じて喚起される感情は、見る、聞くなどの複合的な知覚や感覚がもたらした結果と考えられ、その脳部位の特定や脳内過程を調べることは難しく、映像によって喚起される感情そのものを科学的な研究対象とすること自体が大きな困難を伴う課題とされていたという。
 実験では、実験参加者(男6名、女6名、計12名。平均年齢26.6歳)の脳活動をfMRIで計測しながら、一つ40秒間の映像(計24種類、自然や風景の映像のバックグランドで簡単であまり有名でないピアノ演奏の曲が流れる動画)を視聴してもらった。そして、それぞれの映像に対して、主に画像(視覚刺激)により感情が喚起される映像であったか、もしくは主に音楽(聴覚刺激)により感情が喚起される映像であったかを報告してもらい、それらに基づき、「画像により感情が喚起された(visual―driven)映像」と「音楽により感情が喚起された(auditory―driven)映像」とに分けて結果をまとめた。それらの結果と脳活動を分析した結果、脳の聴覚野(auditory area)と島とう(insula)の脳活動パターンが、感情の喚起が画像由来か音楽由来かを決めることに深く関わっていることが証明されたという。

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kobayashi
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