総務省、電波利用料事務の実施状況

総務省は、令和2年度における電波利用料の事務の実施状況及び支出状況について取りまとめた。それによると、2年度支出額は719・8億円で、翌年度繰越額は544・9億円となった。主な項目をみると、電波資源拡大のための研究開発等で314・4億円、無線局データベースの作成・管理で111・8億円、電波監視の実施で78・5億円などとなっている。 電波利用料制度は、電波監視等の無線局全体の受益を直接の目的として行う行政事務(電波利用共益事務)の処理に要する費用について、その受益者である無線局免許人等に公平に負担してもらう制度である。現在、電波利用共益事務は電波法(昭和25年法律第131号)第103条の2第4項において定められているが、電波利用の一層の拡大に伴い、周波数のひっ迫状況の深刻化が見込まれることから、今後もその役割が増していくものと考えられる。このような状況の中、電波利用共益事務を適切に実施していくためには、その実施状況及び支出状況を公表することにより、電波利用料を負担してもらう無線局免許人等の理解を得ることが重要だ。このため、同法第103条の3第3項の規定に基づき、平成20年度より電波利用共益事務の実施状況及び支出状況の公表を行っており、このほど、令和2年度分について公表したもの。 2年度における電波利用共益事務に対して、次の通り支出を行った。2年度支出額は719・8億円(翌年度繰越額は544・9億円)となった。 ▽電波監視の実施78・5億円。免許を受けた無線局が適正に運用されないことや、免許を受けていない不法無線局を運用すること等を防止し、電波利用環境を保護するために、平成5年度から電波利用料財源により電波監視を実施している。また、平成22年度からは、重要無線通信妨害に係る申告受付の24時間対応体制を整備し、妨害の迅速な排除に取り組んでいる。2年度の混信・妨害申告は2039件であり、このうち航空・海上無線、消防無線、携帯電話などの重要無線通信を取り扱う無線局に対する混信・妨害は429件だった。電波監視業務によりこれらの混信・妨害等の迅速な排除が図られ、電波利用環境が良好に維持されている。 ▽無線局データベースの作成・管理111・8億円。 ▽電波資源拡大のための研究開発等314・4億円〈電波資源拡大のための研究開発、周波数ひっ迫対策技術試験事務、異システム間の周波数共用技術の高度化、公共安全LTEの実現に向けた調査検討、仮想空間における電波模擬システム技術の高度化、地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証、可搬型の同報系防災行政無線の導入に向けた技術的条件に関する調査検討、無線技術等の国際標準化のための国際機関等との連絡調整事務、周波数の国際協調利用促進事業〉。周波数のひっ迫状況を緩和し、新たな周波数需要に的確に対応するために、平成17年度より電波資源拡大に資する研究開発を実施している。2年度は、44件の研究開発課題を実施した。 ▽電波の安全性に関する調査及び評価技術14・1億円。電波が人体等へ与える影響を調査し、科学的に解明することで、電波をより安心して安全に利用できる環境を整備することを目的として、2年度には①生体への影響に関するリスク評価・電波の安全性に関する評価技術②電波の医療機器等への影響に関する調査の調査③電波の安全性に関する国際動向調査―等を実施した。 ▽標準電波による無線局への高精度周波数の提供7・1億円。 ▽電波伝搬の観測・分析等の推進13・7億円。太陽フレアの影響等により、電波の伝わり方に異常が発生した場合、電波を用いた通信・放送システム等への障害が発生する恐れがある。通信・放送システム等の安定的な運用の確保が一層重要となっていることから、電波伝搬を間断なく観測・分析し、伝搬異常の発生の把握や予測を行い、予報・警報の公表や登録者へのメール配信を行っている。また、電波の伝わり方の観測・分析技術等の高度化を目指す取組みを推進している。2年度は、宇宙天気予報について、休日を含め24時間の有人運用や設備の維持、電波の伝わり方の観測・分析技術等の高度化を行った。 ▽無線システム普及支援事業97・1億円〈携帯電話等エリア整備事業、地上デジタル放送への円滑な移行のための環境整備・支援、民放ラジオ難聴解消支援事業、衛星放送用受信環境整備事業、公衆無線LAN環境整備支援事業、高度無線環境整備推進事業、地上基幹放送等に関する耐災害性強化支援事業〉。このうち『携帯電話等エリア整備事業』では2年度において、基地局施設は52箇所、高度化施設は7箇所、伝送路施設(運用)は3箇所、伝送路施設(設置)は2箇所で事業を実施し、新たに携帯電話を使用できる環境などの整備を行った。『地上デジタル放送への円滑な移行のための環境整備・支援』では地上デジタル放送が良好に視聴できないため、暫定的に衛星を通じて番組を視聴している世帯等に対し、地域の番組が見られるようにするための対策などをこれまで実施してきた。それにより、平成26年度末までに地上デジタル放送への完全移行を完了した。現在は、外国波等による電波の影響を受ける世帯に対する受信障害対策や、福島県の避難区域解除等により帰還する世帯等における地上デジタル放送視聴環境の整備を支援するため、補助事業を実施している。2年度は297件の交付決定を行った。『民放ラジオ難聴解消支援事業』では2年度に11件の補助金等の支出をした。『衛星放送用受信環境整備事業』では、新4K8K衛星放送(平成30年12月1日開始)で用いられる中間周波数帯(2・2~3・2GHz)について、既存の他の無線サービスとの共用における懸念が指摘されている。他の無線通信に障害を与えるおそれのある衛星基幹放送用受信設備を改修し、適切な受信環境の整備を支援するため、平成30年度から補助事業を実施している。2年度は、対象となる受信設備の改修工事のため324件の補助金の支出をした。 ▽電波遮へい対策事業22・7億円。2年度においては、道路トンネルは8箇所、鉄道トンネルは14箇所、医療施設は4箇所で事業を実施し、新たに携帯電話を使用できる環境の整備を行った。 ▽周波数の使用等に関するリテラシーの向上1・8億円。 ▽IoTの安心・安全かつ適正な利用環境の構築13・8億円。 ▽ⅠoT機器等の電波利用システムの適正利用のためのICT人材育成1・4億円。  ▽5G導入に向けた電波の利用状況調査8・2億円。 ▽電波利用料に係る制度の企画、立案等35・1億円。