大阪・関西万博での高精度気象予測向け連携

 国立研究開発法人情報通信研究機構(徳田英幸理事長、NICT)、国立大学法人大阪大学(西尾章治郎総長)大学院工学研究科、国立研究開発法人防災科学技術研究所(寶馨理事長、防災科研)、株式会社Preferred Networks(西川徹代表取締役最高経営責任者、PFN)、国立研究開発法人理化学研究所(五神真理事長、理研)、株式会社エムティーアイ(前多俊宏代表取締役社長、エムティーアイ)は3月26日、2025年4月から開催される大阪・関西万博において、来場者等への高精度気象予測情報の提供に向けて、6者連携を開始すると発表した。
 豪雨の卵を早期に検知することが可能な次世代気象レーダ「マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ(MP―PAWR)」と、豪雨の規模や位置を正確に予測するスーパーコンピュータ「富岳」を用いた高精度気象予測を組み合わせ、気象予測情報の精度の向上を図るとともに、ゲリラ豪雨による危険回避を目指した実証を行う。「富岳」を使用した豪雨予測は万博開催期間中の約1カ月間のみ実施される。
 同取り組みは、「2025年大阪・関西万博アクションプラン」の一つである「リモートセンシング技術による高精度データの解析及びリアルタイム配信の実証(総務省)」に基づいている。
 近年、短時間での大雨の年間発生回数は統計的に有意に増加しており、強度の強い雨ほど増加率が顕著とされている。このような短時間に局地的・突発的に降るゲリラ豪雨による被害を減らすためには、豪雨の卵を早期に検知して豪雨の規模や位置を正確に予測することで、安全に係る情報を適時適切に生活者に提供することが求められている。
 こうした課題に取り組むため、雨雲を最短30秒間隔で高精度に三次元立体観測ができる次世代気象レーダMP―PAWRが開発された。
 MP―PAWRは、上空まで密に雨雲を観測できるため、上空の豪雨の卵を検知することが可能。一方で、MP―PAWRに限らず気象レーダの近くで強い雨が降っている場合、レーダの電波が雨粒で減衰する「降雨減衰」により、後方の雨が正しく観測ができない場合がある。また、MP―PAWRは高精度な三次元観測により膨大な観測データを生み出すため、研究機関等へのデータの配信に課題があった。
 2023 年から関西で 2 台の MP―PAWR が稼働を開始したことで、異なる方向からの雨雲観測により「降雨減衰」の解消が可能となった。さらに、捉えた高精度な三次元観測データを圧縮・配信するプラットフォーム「きゅむろん」が開発されたことで、研究機関や気象情報を扱う事業者に迅速にデータを配信し、いち早く生活者へゲリラ豪雨の危険性を通知することが可能になったという。
(全文は4月4日付紙面に掲載)

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kobayashi
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