気象庁/令和5年度予算542億円超と決定

 気象庁の令和5年度予算は、一般会計で物件費200億4400万円(前年度予算比1・05倍)、人件費341億8100万円(同1・00倍)の542億2500万円(同1・02倍)、うちデジタル庁一括計上(政府情報システムに係る経費)56億5300万円となった。 物件費の主要事項(政策経費等)では、次期静止気象衛星の整備等に5年度予算7億3700万円、4年度補正614億4700万円を計上。頻発する自然災害から国民の命を守るための次期静止気象衛星の整備が必要不可欠であり、線状降水帯の予測精度向上の最終的な切り札として整備する。 次期静止気象衛星の整備に6億9400万円、4年度補正609億8500万円を盛り込んだ。現行の気象衛星ひまわり8号・9号は令和11(2029)年度までに設計上の寿命を迎えることから、線状降水帯や台風等の予測精度を抜本的に向上させるため、大気の3次元観測機能「赤外サウンダ」など最新技術を導入した次期静止気象衛星の製作に令和4年度から前倒して着手し、11年度の運用開始を目指す。 次期静止気象衛星の最新センサー活用に係る技術開発に4年度補正4億6200万円を盛り込んだ。線状降水帯対策の切り札となる、最新センサによる大気の3次元観測データを気象予測の情報改善に繋げるには、打ち上げ後1年程度の期間を要するため、予め最新センサの模擬データを作成後、データ処理・利用技術開発を推進し、3次元観測データの早期利用を実現する。 次期静止気象衛星の周波数調整に係る作業支援に5年度予算2300万円を盛り込んだ。次期静止気象衛星では、姿勢の制御信号や観測データの伝送に電波を使用しているが、その電波は他の衛星通信・地上通信との混信を避ける必要があるため、国内・国際的な周波数調整に係る作業支援を実施する。 次期静止気象衛星運用等のPFI事業導入に係る作業支援に5年度予算2000万円を盛り込んだ。次期静止気象衛星運用に係るPFI事業者を決定するため、PFI事業の業務内容策定、民間事業者からの質問対応等において外部コンサルタントの専門知識やノウハウを活用する。 線状降水帯・台風等の予測精度向上等に向けた取組みの強化には、5年度予算3億2200万円、4年度補正予算44億4000万円を計上。線状降水帯は、現状の観測・予測技術」では正確な予測が困難なため、水蒸気観測等の強化、気象庁スーパーコンピュータの強化や「富岳」を活用した予測技術の開発等を早急に進め、速やかに防災気象情報の高度化に反映し、住民の早期避難に資する情報を提供する。 一つに観測の強化。▽陸上の水蒸気等観測の強化:アメダス更新(湿度観測を追加)により、大気下層の水蒸気等の大気状況を正確に把握するための観測能力を強化▽局地的大雨の監視の強化:二重偏波気象レーダーにより、正確な雨量、積乱雲の発達過程を把握し、局地的大雨の監視能力を強化する。二つに予測の強化。気象庁スーパーコンピュータシステムの強化等:計算能力の向上及びクラウド環境を新たに活用し、産学官連携の場として気象情報・データを共有し、技術開発を推進する。 気象防災アドバイザーの拡充による地域防災力の向上に5年度予算1200万円を盛り込み、高度化した防災気象情報を活用したホットラインの実施等、気象台が自治体の防災対応を引き続き支援するとともに、防災行政経験の少ない民間気象予報士に、防災に関する研修を一定期間受講させることにより、自治体の避難情報の発令判断時などに気象の専門的な知見に基づき自治体に助言・支援できる気象防災アドバイザーを育成する。 台風・集中豪雨等の予測に資する大気環境観測網の構築に4年度補正2億5900万円を盛り込み、台風・集中豪雨等の予測に用いる気象衛星の観測データ及び数値予報モデルの精度向上に資するため、南鳥島などの温室効果ガス観測装置等を更新し、持続的・集中的な大気環境観測網を構築する。 大規模地震災害・火山災害に備えた監視体制の確保に5年度予算1億2500万円、4年度補正5億200万円を計上。切迫化する大規模地震災害、いつ起こるか分からない火山災害から国民の命と暮らしを守るため、防災行動及び応急対策の支援強化等を図る。 火山災害に対する防災対応の支援強化に5年度予算1億2500万円を盛り込み、火山活動の監視、噴火警戒レベルの判断、噴火警報等の住民、防災関係機関及び報道機関等への提供をより適切に実施するため、広範囲の観測機器のデータを取り込み解析する機能を新たに搭載し、火山深部のマグマの挙動をリアルタイムで監視するシステムを構築する。 火山監視・観測用機器の整備に4年度補正1億9900万円を盛り込み、老朽化する観測機器(監視カメラ・地震計・空振計)を順次更新し、噴火警報や噴火速報等の迅速かつ安定的な発表体制を維持する。▽監視カメラ:噴煙や噴出物の状態の変化等を常に監視▽地震計・空振計:熱水やマグマの動きを示す地震や噴火による空気の振動を観測。 地震観測施設の整備に4年度補正3億300万円を盛り込み、老朽化する多機能型地震観測装置及び震度観測装置を順次更新し、緊急地震速報や津波予警報等の迅速かつ安定的な発表体制を維持する。▽多機能型地震観測装置:観測した地震波から、各地の強い揺れの到達時刻や震度を予測し、緊急地震速報を発表▽震度観測装置:地面の揺れ(地震動)の大きさを計測し、防災対応の基となる震度情報を発表。