第40回九都県市合同防災訓練-関東総合通信局
総務省関東総合通信局では、非常災害時における情報伝達手段の多様化・多重化などICTを利活用した防災・減災のための対策を推進している。その一貫として、9月1日に千葉県船橋市で開催された「第40回九都県市合同防災訓練」において、関東地方非常通信協議会と連携して、最新の災害対策用無線システムなどの展示・デモンストレーションを行った。 関東総合通信局は、衛星通信トランシーバー「IC―SAT100」(ICOM社製)を展示した。端末同士が直接通信するタイプの従来のトランシーバーは、通話距離が限られている。その限界は、電波の届く範囲となり、トランシーバーのパワーに大きく左右される。1㌔㍍以上をカバーするようなハイパワーのトランシーバーは、使用に当たって総務省に登録したり、免許を受けたりする手続きが必要なものが多い。「IC―SAT100」は免許や使用資格も不要で、誰でもすぐに情報を伝えることができる。また、IPトランシーバー「IP502H」(ICOM社製)は、NTTドコモの3G/LTE回線、もしくはauの4G LTE回線を使うことで、日本全国が通話圏内となる。従来のトランシーバーのように、通話距離の制約や不感地帯を気にせず、タイムリーな情報伝達を実現する。また、デュアルSIMに対応し、本体操作でキャリアを切り替えて使用できる。第3世代地域衛星通信ネットワーク対応の平面アンテナ可搬型衛星通信装置「JUM―5000シリーズ」(日本無線製)は、衛星回線を利用したIPデータ通信回線を、いつでも、どこでも、誰にでも、素早く構築することができる。平面アンテナの採用により運搬、組立設置、衛星補足が非常に簡単で、車や衛星通信車で行けないような現場にも持ち込め、誰でも簡単に設置操作、運用が可能。そのほか、消防・防災無線機器、特定小電力無線機器、ポータブルICTユニット、Lアラートなどを展示した。地震・風水害等大規模災害発生時や発生するおそれがある場合、関東総合通信局では、地方公共団体及び災害復旧関係者へ無償で移動通信機器や災害対策用ICTユニットなどを貸与している。地方公共団体等からの要請により、衛星携帯電話、MCA無線や簡易無線の移動通信機器を貸与し、初動期の被災情報の収集伝達から応急復旧活動の迅速かつ円滑な遂行に必要不可欠な通信を確保する。 一般財団法人移動無線センターは、mcAccess e+携帯型無線機「EK―6180A」を展示した。災害に強いMCA無線とエリアが広いIP無線を1台に融合した。MCA無線(自営網)とドコモ通信ネットワーク(LTE)に対応する。シンプルな操作性で、MCA無線の月額利用料のみで利用可能。17時間以上の連続運用ができる。高性能GPSアンテナを内蔵し、位置管理アプリケーションに対応する。緊急ボタンを搭載し、端末間で緊急通報、連絡が行え、緊急通報と連動した音声モニタが可能。携帯機同士でIP回線を使ったデータ伝送に対応し、簡易な画像や動画ファイルの伝送もできる。 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、音声認識・翻訳・音声合成技術を活用した音声翻訳アプリ「VoiceTra」を展示した。話した内容を外国語に翻訳するもので、31言語に対応する。ダウンロード・利用は、すべて無料となっている。また、NICTは、大規模災害時の被災状況把握システム「DISAANA&D―SUMM」を展示。対災害SNS情報分析システム「DISAANA」は、テキストを意味的に深く分析し、「熊本県で何が不足していますか?」といった質問にリアルタイムに回答する。回答は幅広に提示され、被災状況の全体像が把握できる。災害状況要約システム「D―SUMM」は、指定エリアに対し、膨大なツイートから被災報告を人工知能が自動抽出、分かりやすく整理・要約する。エリアごと、あるいは意味的なカテゴリーごとに要約し、被災状況の全体像を把握できる。DISAANA・D―SUMMの共通事項として、今まさに流れているツイートをリアルタイムに分析し、リアルタイムに回答する。ツイート中の地名を解析することで、GPS情報なしに回答を地図表示でき、全体像が把握可能。回答とそれに対して矛盾する情報を両論併記することで、デマの可能性も検出できる。今後、深層学習など最新のAI技術を取り込みつつ、気象データなどセンサー由来の観測情報とともにより高精度な分析が可能なシステムへと発展させる。 一方、主会場の高瀬町運動広場では、倒壊建物からの救出救助、消火活動訓練、医療救護訓練、また副会場の京葉食品コンビナート協議会南岸壁では海上捜索・消火訓練、洋上医療拠点訓練などが行われた。
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