総務省、携帯電話の上空利用拡大でFDD等の技術的条件等整備へ

 総務省は1月24日、情報通信審議会(会長・遠藤信博NEC特別顧問)から、平成28年10月12日付け諮問第2038号「新世代モバイル通信システムの技術的条件」のうち「携帯電話の上空利用拡大に向けたLTE―Advanced(FDD)等の技術的条件等」について一部答申を受けた。総務省では今後、一部答申を踏まえ、関係規程の整備を速やかに行う。 昨今の無人航空機(ドローン)の活用分野の拡大を受けて、携帯電話をドローンに搭載し、ドローンの制御や画像・データ伝送等を行いたいとのニーズが高まっているほか、救急・防災機関等におけるヘリコプターでの利用や5Gの利用等の新たなニーズがあるなど、携帯電話を上空で利用する際の技術的条件の拡大が求められているところだ。 こうした状況を踏まえ、情報通信審議会において、携帯電話を上空で利用する際の技術的条件の拡大に関する検討が進められてきた。加えて、地域ニーズや個別ニーズに応じて様々な主体が利用可能な第5世代移動通信システムであるローカル5Gについて、導入や普及を一層推進するための新たな利用ニーズを踏まえた制度改正に向けた検討が、同審議会で進められてきたもの。 一部答申の概要は次の通り。 携帯電話の上空利用に係る制度の現状をみると、携帯電話をドローンに搭載して上空で利用するニーズに対応するため、 2016年7月に地上の携帯電話システムに影響を及ぼさないよう、飛行台数を監理して使用を認める「実用化試験局制度」を導入した。これは、携帯電話システムは地上での利用を前提に基地局を整備しており、携帯電話をドローンに搭載して上空で利用すると、同じ周波数の電波を用いる他の基地局と混信を引き起こし、地上の携帯電話の通信が途切れるなどの影響を及ぼすからだ。 そして、実用化試験局の手続には、事前準備も含めて通算2ヵ月程度の期間が必要であり、昨今のドローンの利用拡大に伴い、手続きの簡素化や運用開始までの期間の短縮が求められていた。 このため、情報通信審議会(新世代モバイル通信システム委員会)において技術上・運用上の課題等を整理し、2020年12月に手続の簡素化等の制度整備を実施。携帯電話事業者が整備するシステムにより、利用者がWeb経由等の簡易な手続で1週間程度で飛行可能となる環境が実現した。 なお、簡素な手続による上空利用に当たり必要な条件では周波数帯が『無人航空機等に移動局を搭載して上空で利用する場合にあっては、800MHz帯、900MHz帯、1・7GHz帯、2GHz帯に限り、地表からの高度が150㍍未満に限る』とした。送信電力制御が『特に、上空で利用される移動局にあっては、移動局が上空に存在していることを前提とした基地局からの制御情報に基づく空中線電力の制御を自動的に行える機能を有すること』とした。 また、携帯電話の上空利用に関する新たなユースケースでは、ドローンを活用したインフラ設備の点検、ヘリコプターの動態管理、気象情報や上空映像のリアルタイム伝送、空飛ぶクルマの技術検証など、高度150㍍以上における利用ニーズが顕在化している。海外では、ドローンと高速・低遅延な5Gを組み合わせた映像伝送を活用した実証が進展。国内においても、ドローンによる空撮映像を携帯電話網システムにより伝送するニーズがある。現在上空で利用可能なFDD―LTE帯域について、5Gでも利用可能とすることが望まれている―と指摘した。 地上携帯電話ネットワークへの影響の検討では、上空の端末が電波を発射した場合の地上の基地局への干渉(特に、接続可能な最も遠い基地局と接続している場合の、最も近い基地局に対する干渉)について、計算機シミュレーションを実施したとして、計算機シミュレーション結果で上空端末用の送信電力制御を適用した場合は、送信電力制御の効果により、干渉増加量が抑えられていることが判る―と記載した。 地上携帯電話ネットワークへの影響に関する考察で、地上携帯電話ネットワーク(LTE)への影響について、高度150㍍以上でも、上空端末用の送信電力制御の適用により、地上携帯電話ネットワーク(LTE)への干渉影響は回避可能と考えられる―とした。そして、上空用送信電力制御の効果について『地点、上空端末台数、上空端末送信電力初期値について、携帯電話事業者が自らの判断で適切な管理を行うという現状の前提を維持したうえで、上空用送信電力制御を適用すれば、150㍍以上の上空利用についても、大きな問題は発生しないことがわかったとまとめた。