NICT、AI活用した医薬業界向け自動翻訳システム
アストラゼネカ(大阪市北区、ステファン・ヴォックスストラム社長)と国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、東京都小金井市、徳田英幸理事長)は、自動翻訳システムの共同研究に関する実施契約をこのほど締結した。今後、両者で医薬業界に特化した自動翻訳システムの実用性を検証する。 近年、AIを活用した翻訳サービスの導入が各業界で検討されており、特許分野など、一部の専門領域においてはAIによる自動翻訳が実用化されている。一方、製薬業界においては、同技術は開発途上といえるが、多くの企業において、日本と海外の国とが同時に治験を実施する国際共同治験が主流となってきていることから、迅速かつ適切な翻訳へのニーズが高まっているところだ。 こうした背景を踏まえ、両者は、NICTの最先端のAI翻訳エンジン「TexTra」を用いて、医薬分野に特化した精度の高い自動翻訳システムを開発するという共同開発に合意したもの。 NICTは総務省とともに「翻訳バンク」の運用を行っており、翻訳データを集積して日本の翻訳技術の多分野化・高精度化に取り組んでいる。NICTにとって、今回の契約は製薬企業との初めての取り組みとなる。 アストラゼネカは、NICTに自社の対訳データを提供し、医薬分野に特化した翻訳システムの実用に向けて共同で検証を行うとともに、カスタマイズされた翻訳システムの使用権利を得る。 医薬分野に特化した精度の高い自動翻訳システムが開発されることで、翻訳作業が効率化し、新薬をはじめとする薬事申請をより迅速に行うことが可能となるとしている。 NICTでは、AI技術で多用される深い階層構造を持つニューラルネットワークを用いた自動翻訳技術(ニューラル翻訳)の研究開発を推進し、研究成果である高精度自動翻訳エンジンを「TexTra」と名付けて公開している。 一方、ニューラル翻訳による自動翻訳の精度向上のためには、ニューラルネットワークのアルゴリズムの改良が有効であることに加えて、翻訳データ量の影響が大きいので様々な分野の翻訳データの確保が重要だ。NICTは総務省と「翻訳バンク」の運用を進めながらさらなる翻訳データを集積し、日本の翻訳技術の多分野化・高精度化に取り組んでいる。
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