寺田稔総務大臣インタビュー 世界市場で勝てる技術を育てる

 寺田稔総務大臣はこのほど、大臣室で総務省のテレコム記者会加盟各社の取材に応じ、今後のBeyond 5G技術戦略推進や来年のG7・デジタル技術大臣会合への期待、デジタルインフラの地方分散による通信ネットワーク拠点の整備に向けてなどの取組を話した。Beyond 5G(6G)については「総務省では2020年にNICTに基金を設け、テラヘルツ波や衛星等の研究を行ってきているなど、取組を進めていることや、「総務省は、本年3月に『デジタル田園都市国家インフラ整備計画』を策定し、十数カ所のデータセンターの地方拠点を5年程度で整備することや、日本を周回する海底ケーブルを3年程度で整備すること等の目標を掲げている」点などを述べた。 ――令和5年度予算概算要求において、Beyond5G技術戦略を推進するため、150億円の経費に加えて、NICTへ恒久的な基金の造成を事項要求されました。恒久的な基金造成のねらいなど、今後のBeyond 5G技術戦略推進についてお聞かせください。 大臣 Beyond 5G(6G)については、総務省では2020年にNICTに基金を設け、テラヘルツ波や衛星等の研究を行ってきているなど、取組を進めています。他方、主要各国も研究開発投資の拡大や研究計画の具体化を進めており、世界的な開発競争は年々激化しております。また、情報通信分野の消費電力の増大や「利用者がいつでもどこでも安心して通信できる」といった社会ニーズへの対応の必要性も高まっています。このため、総務省では、世界市場で勝てる技術をしっかり育て、様々な課題解決に貢献し、ひいては、日本の活力につながるような「未来への投資」を加速すべく、必要な予算の獲得など国としてもしっかりと支援を進める考えです。 6Gでは衛星や、成層圏を飛ぶ通信基地局であるHAPS(ハップス)などを活用して、山間地域、離島、海洋も含めて広大な国土をカバーしたり、光技術をフル活用して低消費電力の環境負荷の少ないネットワークを作ることが可能になると期待されています。こうした技術を世界に先駆けて実現し、日本が世界をリードするためには、更に長期に渡り柔軟な研究開発支援が可能な基金を創設し、思い切った予算措置を講じることが必要と考えていることから、今般の概算要求を行ったものです。 また、研究開発に加え、具体的な社会実装に向けた取組や、日本企業が収益を確保するための知財・標準化戦略、海外との連携など、総合的な取組を進めることが重要と考えており、産業界にも一層の努力を期待したいと考えます。 ――ICT分野における戦略的な研究開発や標準化活動、海外展開活動などをはじめ、総務省が幅広い分野で進めている海外展開の取組を、オール総務省として総合的・戦略的に推進されていますが、近年ではアフリカに対する支援や、ロシア侵攻を機にした経済安全保障の問題が重要になってきております。また来年日本で開催されるG7広島サミットの関係閣僚会合として、G7デジタル・技術大臣会合の開催も決まりました。今後の国際連携・海外展開活動へ向けたお考えと、来年のG7・デジタル技術大臣会合への期待、意気込みなどをお聞かせください。 大臣 現在の国際情勢は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行やウクライナ情勢等も相まって、一層複雑化し、経済安全保障上の課題を含めて様々なリスクが顕在化しています。また、我が国経済を支える先端技術も世界的に激しい競争に直面しています。こうした状況下において、我が国の自律性を維持し、国民生活の基盤をしっかりと担保するとともに、グローバルな課題解決に向けて積極的に貢献していくことが重要と考えています。そのため、本年7月に策定した「総務省海外展開行動計画2025」に基づき、5Gや海底ケーブルなどのデジタルインフラや、医療・農業分野のデジタルソリューションをはじめとするICT分野の海外展開に一層取り組むこととしております。 また、通信インフラの安全性・信頼性をグローバルに確保すべく、①5Gネットワークのサプライヤーの多様化、②海底ケーブルの強靱化、③セキュリティの確保などの取組を推進してまいります。さらに、我が国が議長国を務めるG7デジタル・技術大臣会合等を契機として、DFFTの一層の推進やインターネット上の偽情報対策、AIの利用、Beyond5Gや信頼性の向上に資する振興技術の促進など、デジタル分野を巡る様々な課題について議論を行い、国際的なルール形成に向けた環境を醸成してまいります。 総務省としては、デジタル分野での国際競争力を強化するとともに、国民が安心・安全にその恩恵を受けることができるよう、研究開発からその社会実装、デジタルインフラ・ソリューションの海外展開、国際標準化等を含む国際的なルール形成に至るまで、総合的に取り組んでまいります。 (全文は10月7日付1面で掲載)