関東総通局が「地域情報化広域セミナー2018in栃木」
総務省関東総合通信局(関啓一郎局長)は、一般財団法人全国地域情報化推進協会(APPLIC)と共催で、2月8日に栃木県自治会館(栃木県宇都宮市昭和1丁目2―16)で「地域情報化広域セミナー2018in栃木」を開催した。後援は栃木県。 総務省は、2016年12月に「地域IoT実装推進ロードマップ」を公表した。ここではIoT、ビッグデータ、オープンデータ、AI等が、地域住民・行政・企業の住民サービスの充実、新たなビジネス・雇用の創出等の地域の課題解決のツールとして強く期待されている。 また、2016年12月に施行された「官民データ活用推進基本法」は、国・自治体・民間企業が保有する情報をオープンデータとして効果的に利活用することで、自立的で個性豊かな地域社会の形成、新事業の創出、国際競争力の強化などを目指している。 今回のセミナーは、これらについての最新情報を提供するとともに、自治体のデータ活用事例を紹介し、地域におけるICT利活用についての理解をより深めてもらうことを目的として開かれたもの。 セミナーの開会にあたり、関啓一郎関東総合通信局長が挨拶した。「アベノミクス、安倍政権のもとで、経済政策がうまくいっており、名目GDPが史上最高になった。7四半期連続、経済成長がプラスになった。47都道府県有効求人倍率が現在1・56になっている。また、4年連続賃上げということで、いろいろな人に聞いたところでも、この上ない好景気という状況だ。ただ、問題は安倍総理もおっしゃっているが少子化に伴う労働力不足、国内需要の減退である。必ずしも人口と経済成長は比例するものではないが、やはり人口減に伴って労働力が不足したり、需要が少なくなるのは事実であり、これを補うために昨年12月に安倍政権では新しい経済政策パッケージを出して、人づくり革命や生産性革命を2020年までに精力的に取りくんでいくことにしている。効率が良ければ生産性が上がれば人口が減っても経済成長は維持できる。それから働き方改革にも取り組んでおり、子育て支援などで働ける人を増やしていく。いずれにしても効率化が必要で、その手段として先般の通常国会での首相の施政演説でもあったがICT、IoT、AI、ロボット、ビッグデータなどを使っていくことをいわれている。今回のオープンデータについては平成28年12月に官民データ活用推進基本法ができて、その中にビッグデータ、IoT、AIの活用も書かれており、それに加えて27年には個人情報保護法が改正されて匿名加工情報ということで、個人情報を加工することでより使いやすく国民の利便性効率性を高めようという方向が打ち出されている。官民データ活用推進基本法については昨年、官民データ活用推進計画策定の手引きも出されている。ここでは、オープンデータなどで基礎的なところを述べたい。中小企業を含めて情報通信を活用することは効率化のために必須になっている。先般、関東総合通信局と関東経済産業局の局長級連携チームを発足させた。省庁を超えて政府を挙げて推進していこうと思っているので、ぜひご協力をお願いしたい」と話した。 次いで、同氏が「IoT/Big Data/AIの進展による新たな価値の創出」と題して基調講演を行った。「これは個人的見解だが、今私たちは〝脳・神経・五感の機械化〟の時代だ。知識・情報の時代で、知識が価値を生む時代。それ以前は〝筋肉の機械化〟の時代。今、『インダストリー4・0』『ソサエティー5・0』という言い方がされているが、20世紀後半から人間の知的処理能力の機械化の時代になってきているのではないか。日本はこの利活用の面では、少し心許ないのではないか。ところで、データ活用の意義だが、これは埋もれているデータを活用し、経済再生や社会的課題解決につなげることだ。〝個別のデータは地中に埋もれた鉱石〟。データをどう活用するかが課題で、これが新しい資源だ。では、ビッグデータ、IoT、AIとは何か。IoTとはいろいろなセンサによっては〝五感〟が伸びているもの。いろいろなデータが取れるようになった。AIはディープラーニングでたくさんのデータを分析することである種の知恵を生む。これらはセットで、手段でもある。補完関係でもあるものだ。人間が行うことで面倒くさいものは全てアルゴリズムに変えて機械が行って効率化を生み出すものだ。クラウドは何が良いか。モノを持たなくて良い。設備を買ってこなくて良い。しかも無尽蔵で安い価格で必要な分を得られて、最新のサービスを受けられるものだ。この点を日本の中小企業はあまり知らない」と述べた。 さらに、政府の動きを紹介し、安倍内閣総理大臣施政方針演説(平成30年1月22日第196回国会)、新しい経済政策パッケージなどを紹介し『政府全体でIoT・ビッグデータ・AIの活用を推進中』とした。「地域においても、IoT時代への対応が必要だ」と述べた。 続いて、インダストリー4・0/IoTによる産業構造変化について触れて「『モノ』単体のスマート化が進んでいる。これは、ネット接続による付加価値であり、〝モノからサービス〟要は顧客へのモノの販売から顧客が求める機能の提供―ということだ、建機メーカーの一例ではネットワークにつないで、移動時間、稼働時間、異常などのデータをモニタリングして故障が起こる前に直す、あるいは稼動していない時間に直すそういうユーザーに不便をかけないようにするものだ。さらにデータ活用に産業構造の変化では、製造業のサービス業化が進む。マザー工場が例えば運営指導サービスを行ったりする。業務プロセスのパッケージ化だ。例えばコンビニのPOSデータを吸い上げて本部が運営指導を行うといったものだ。こういう仕組みの中でどうオープンデータを活用していくかである」と話した。 続いて講演「官民データ活用の全国展開」を内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室の土屋宙司氏が行った。同氏は、官民データ活用推進基本法制定の背景、地方の官民データ活用推進計画、官民データ活用推進計画と施策、基本的な考え方についてなどを詳細に説明した。後半は「地方における官民データ活用と情報化推進の事例集」の内容を紹介した。最後に、地方の官民データ活用推進計画策定の手引に係るスケジュール等を紹介した。 続いて講演「地域課題解決に向けたオープンデータの利活用」を須田裕之国立大学法人筑波技術大学教授(全国地域情報化推進協会アドバイザー)が行った。「これからの世の中、社会生活のいろいろな価値変化があるように思う。市民と社会資本と自然資本、こういうものがひとつの豊かさの変化として市民を中心とした共生社会が求められているのだろうと思う。これからの行政、民間のサービスについてもそれぞれの中での豊かさというものを考える必要がある。その地域社会システムの中のキーワードは共生、自律、分散、協調である。ということで人間中心・新しいしくみの観点から多様な豊かさがこれからは求められていくのだ。今は多様な豊かさを高齢者、障害者、外国人等の利用者視点で考えていかなければいけない。多様な方々、多様な分野、多様な文化、多様な地域。分野間や地域間などに必要なのが〝情報コミュニケーション〟。このコミュニケーションをどう成り立たせるかがこれからの世の中である。インクルージョンとイノベーションの〝i〟から考えるユニバーサルコミュニケーション社会の確立を進めていくことだ」と述べた。 さらに「ビッグデータは、たくさんのデータの中からデータマイニング、つまり掘り起こすことが重要になっている。それに加えて、オープンデータは積極的に情報を流通させる意図が含まれている。オープン化というのはデータの拡散性を活用する、情報を出すことによってどんどん広がった状況をつくり、利活用する。提供者としてデータ拡散性を念頭においた取り組みが必要。データ活用としては、データ保有とサービスを分離していかなければならない。これからはアカウンタビリティ確保が重要だ。IoT、AI、ビッグデータを統合してツールとしてこれを利用していくだ」と述べた。 次いで、官民データ活用推進基本法制定の背景を説明。そして、情報化による新たな地域経済活動の展開については『API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)オープン化による新・経済圏の生成』だという。システム間の流通や整合をさせるには、データを統一すると同時に、アプリケーションのインターフェースもオープンにしていかないとデータは流れない。トータルなアプリケーション間でのAPIをオープン化することで新しい経済圏をつくる―とした。「今までは、データ流通に向けたデータ中心マネジメントなどが、主に行政サービスとして実施されていた。それが、自律・分散・協調で技術的なシステムとしては多層化の分離が考えられるようになった。そうすることで多層化の中で、データの蓄積・活用が成されてオープン化する。その結果、共同利用・共同開発でコストを低減し、きちっと考えて自前主義からの脱却につながる」と話した。情報サービス利用の変化ではこれからは「今だけ、ここだけ、あなただけ」に情報を提供できる多様化、個別に情報を提供することが重要となっており、利用者が選択できる情報インターフェースの必要性が出てきたという。続いて、地域社会情報システムの総合的なしくみづくり、地域共生社会の実現へ、地域課題解決の方向性について示して、地域社会システムの方向性は①ユーザ指向システム②総合的な情報流通③ハードとソフトの融合―と掲げた。地域創生・地域活性化における連携地域経済基盤として▽サービス連携、市民参加支援▽市民視点でのデータ活用と個人情報保護の確立―を、位置情報をキーとしたオープンデータ・官民データ活用として▽継続的な信頼性ある基本データ整備▽相互運用性(APIオープン化)の確保―であるとまとめた。 閉会挨拶を一般財団法人全国地域情報化推進協会の松村浩氏が行った。「今日の講演で今後、皆さまが各地で取り組みを進めていく上でのヒントになったのではないかと思う。APPLICでは今まで地域情報プラットフォームを中心として、地域情報化の取り組みをしてきたが、こういったIoT、AI、ビッグデータの時代になって今後は自治体向けの地域CIOの育成研修などもやらせていただいているが、そのなかにオープンデータの利活用なども取り入れていきたいと思っている。今後の取り組みについてもご支援をいただきたいと思う」と話した。
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