総務省、「地域におけるIoTの学び推進事業」実証事業成果発表会

 総務省は、3月6日にTKP品川カンファレンスセンター(東京都港区)で、「地域におけるIoTの学び推進事業」により実施した23件の実証事業の成果発表会を開催した。 総務省では、地域で自立的・継続的・発展的に児童生徒らがICTを楽しく学び合い、新しい時代の絆を創る「地域ICTクラブ」の構築のため、同推進事業を行っている。具体的には、地域ICTクラブは、地域で児童生徒、障害児・障害者、社会人、高齢者らが、3Dプリンターを使ったものづくり、デザイン創作、ロボット操作などを楽しく学び合う中で、プログラミングやアプリ制作等のICTに関して、世代を超えて知識・経験を共有し、新しい時代の絆を創るための仕組みである。総務省では、地域の特性に応じた様々なタイプのモデルの実証事業を行っている。今回の発表会では、全国23件の実証事業の成果について、機材やパネル等の成果展示及び代表者による成果発表を行った。 冒頭、國重徹総務大臣政務官が開会挨拶した。「今の小学生が社会の中心的な存在として活躍している2030年代から2040年代、このときはIoT、AIを活用して様々な社会課題を解決している社会になっていくだろうと見込まれている。そこでの人間の仕事というのは単純作業というよりは今まで以上に価値創造的なもの、人と人とのつながりが必要なものが中心になっていくと予想されている。こうした中でプログラミング教育は未来の社会を担う子どもたちに新しいものを生み出す創造力、論理的思考力を習得する手段として期待されている。2020年度から小学校におけるプログラミングが必修化されるが、私ども総務省としては学校における取り組みとも連携して社会全体としてサポートしていく必要があると考えている」と述べた。 また「総務省では、学校外で継続的にプログラミングなどのICTを学ぶ場として地域ICTクラブを整備すべくこれまで実証事業を進めてきた。皆さまに行っていただいている地域ICTクラブは、地域におけるヒト、モノ、カネ、ノウハウといった支援を活かしまして、それぞれの地域の特性に応じたプログラミング教育等を行う極めて重要な取り組みである。のちほど23件の成果発表が行われるが、それぞれが〝○○まちモデル〟といわれるようなすばらしい取り組みである。これらの発表から人の育て方、継続的な運営方法といった共通する課題や、それぞれの地域がどのような対応をされているかなど取り組みのポイントがわかるものとなっている。本日のイベントがすでに取り組まれている23ヵ所の皆さまには新たな課題解決のヒントや活動推進につながりますように、今後取り組もうとされている皆さまには今後のスタートの契機となるようなイベントとなるように期待している」と述べた。 続いて、基調講演に入った。まず総務省から田村卓也情報流通行政局情報流通振興課情報活用支援室長が「地域ICTクラブの実証報告と今後の展開について」と題して講演した。 田村氏は「地域ICTクラブ」事業の全体概要を述べた後「この事業の継続的な活動の実現に向けて必要な大きな柱は①クラブ組成・運営②メンター確保・育成③講座設計・運営―の3点だ。アンケートによると、約98%の児童生徒等が、講座に満足していた。内容的にはプログラミングそのものの習得を起因としたものが最も多かった。アンケートでは、講座を通じて、プログラミングスキルの習得のみならず、創意工夫する力や問題解決力の向上が実現したことが読み取れる。今後は他者との学び合いを促す取り組み等を取り入れることも強化ポイントとして考えられる。児童生徒等の約75%が講座参加を続けたいと回答。これからの課題に対しては、受講者の年齢や経験に適した教材の選定・講座設計や、メンター等による個々のペースに合わせた運営時のサポート強化がポイントとなる。今後は、地域ICTクラブのさらなる普及展開を目指し、ガイドラインの策定を予定している」と述べた。 続いて、文部科学省から折笠史典初等中等教育局情報教育・外国語教育課情報教育振興室長が「新学習指導要領における小学校プログラミング教育」と題して講演した。 折笠氏は「なぜ小学校にプログラミング教育を導入するのか?。それは、子どもたちの可能性を広げることにもつながり、プログラミングの能力を開花、創造力を発揮することで、起業する若者、特許を取得する子どもも現れるということだ。将来の社会で活躍できるきっかけになるからだ。コンピュータを理解し上手に活用していく力を身に付けることは、あらゆる活動においてコンピュータ等を活用することが求められるこれからの社会を生きていく子どもたちにとって、将来どのような職業に就くとしても、極めて重要なことだ」と述べた。 次に2会場に分かれて「地域におけるIoTの学び推進事業」23件の実証主体による成果発表が行われた。機材やパネル等による成果展示も行われた。 8つの実証団体によるパネルディスカッションも行われた。登壇者は次の通り(協議会名、登壇者及び代表団体名の順に記載)。▽十勝EdTechコンソーシアム、神山恵美子学校法人帯広コア学園理事長▽こどものミライ協議会、鷲崎弘宜早稲田大学理工学術院基幹理工学部情報理工学科教授▽新座IoTの学び推進協議会、坂本純子NPO法人新座子育てネットワーク代表▽かながわICTクラブ運営委員会、三枝勲株式会社教育ネットプロジェクトリーダー▽福井県こどもプログラミング協議会、福野泰介福井県こどもプログラミング協議会実行委員長▽川根本町地域ICTクラブ推進協議会、堤孝行川根本町情報政策課情報政策室室長▽MIHARAプログラミング教育推進協議会、岡田吉弘一般社団法人RoFReC代表理事▽モックアップ内子協議会、武田惇奨株式会社武田林業企画営業▽(ファシリデーター)地域ICTクラブ実証事業事務局、林真依PwCコンサルティング合同会社公共事業部マネージャー。 最後に、有木節二・地域ICTクラブ推進会議委員(一般社団法人電気通信事業者協会専務理事)が講評を述べた。「委員として、内子町の協議会の地域ICTクラブ(エリア=愛媛県、協議会名=モックアップ内子協議会、代表団体名=武田林業)に視察に行った。低学年から高学年の子どもたちの目が輝き、いきいきした様子であった。気づきから実行、喜びにつながるということに実感を得た。自治体、企業、商店街などがコミュニティを形成していくということが、事業にとって重要なことだ。われわれ事業者の団体でも2040年には技術者が80万人不足するとの危機感を持っている。今の小学生のお子さんが10年後、20年後にそこを補ってくれることに期待を持っている。総務省の実証事業をもっと発展させてほしいし、学校でのプログラミングの必修化の取組みももっと将来を見据えていって伸びていってほしいと思う」と述べた。