総務省、「未来をつかむTECH戦略」を公表

 総務省は、情報通信審議会情報通信政策部会に設置している「IoT新時代の未来づくり検討委員会」(主査・村井純慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科委員長環境情報学部教授)の中間とりまとめとして、2030~2040年に向けた情報通信政策のビジョン「未来をつかむTECH戦略」を公表した。あわせて、将来、行政の中枢を担う若手職員からなる「未来デザインチーム」において、委員会に提示した未来イメージを小説形式でとりまとめた「新時代家族~分断のはざまをつなぐ新たなキズナ~」を公表した。  総務省は 、平成29年11月から委員会を開催し、2030~2040年頃の未来社会を展望しつつ、IoT・AI・ロボット等のイノベーションの社会実装や、年齢・障害の程度等を超えて誰もがその能力を発揮し豊かな生活を享受できる社会の実現に向けて取り組むべき情報通信政策の在り方について検討してきた。そして、これまでの検討結果がとりまとめられたもの。なお、この検討の一環として、29年12月に「未来デザインチーム」を立ち上げ、委員会の議論と連動する形で、2030~2040年頃の未来のイメージについて検討してきたが、委員会に提示した未来イメージについて小説形式(総務省報道資料のホームページで読むことができる)でとりまとめ、あわせて公表した。 「未来をつかむTECH戦略」(~「静かなる有事」をチャンスと捉え、アグレッシブなICT導入により「変革の実行」へ~)では、同戦略の背景として▽人口減・高齢化などの「静かなる有事」が進行する日本は課題山積。既存の社会システムへのボディブローとなり、2030年代までには経済や組織、インフラ、福祉等のしくみが立ちゆかなくなるおそれ▽「静かなる有事」をチャンスと捉え、2030年代に実現したい未来の姿から逆算し、アグレッシブなICT導入により「変革の実行」に繋ぐための改革プランとして、「未来をつかむTECH戦略」を策定▽この戦略の実行を通じ、日本の中長期的な成長戦略に掲げる「Society5・0」の実現などに寄与―の3点を挙げた。 そして変革実行の8ヵ条「MOVE FAST」を掲げた。①【Moonshot】実現したい未来の姿(ムーンショット)を設定し、そこから逆算して対策を立案する②【Opportunity】芽生えた機会を逃さず、柔軟・即応のアプローチで挑戦する社会風土にする③【Value】評価基準を量(ボリューム)から質(QoL)に転換し、成熟国家の価値観へ脱皮する④【Economics】生産性を高め所得を増やすとともに、国内外の需要を徹底的に掘り起こす⑤【Focus】持続可能性を重視し、選択と集中を通じて、ムダなものは止める決断をする⑥【Aggressive】人口減・高齢化を迎える中で、あらゆる分野にアグレッシブにICTを導入する⑦【Superdiversity】年齢区分等による画一化を改め、誰でも希望に応じて活躍できる制度にする⑧【Trust】進展する技術の制御可能性、社会倫理、濫用回避等を確立し、信頼を高める―と掲げた。 2030年代に実現したい未来の姿を▽(人づくり)「I:インクルーシブ」▽(地域づくり)「C:コネクティッド」▽(産業づくり)「T:トランスフォーム」―で表現。「I:インクルーシブ」は、年齢・性別・障害の有無・国籍・所得等に関わりなく、誰もが多様な価値観やライフスタイルを持ちつつ、豊かな人生を享受できる「インクルーシブ(包摂)」の社会、「C:コネクティッド」は、地域資源を集約・活用したコンパクト化と遠隔利用が可能なネットワーク化により、人口減でも繋がったコミュニティを維持し、新たな絆を創る「コネクティッド(連結)」の社会、「T:トランスフォーム」は、設計の変更を前提とした柔軟・即応のアプローチにより、技術革新や市場環境の変化に順応して発展する「トランスフォーム(変容)」の社会―であるとし、これら未来の姿をビジュアル豊かに見せている。 これらを総括した「実現したい未来の姿」からの逆算による戦略策定及び「未来をつかむTECH戦略」政策パッケージ(案)を図表化して提案した。 「変革の実行」に向けた具体的な施策メニュー例として「I:インクルーシブ」では▽地域ICTクラブ等を中心とした新たな地域コミュニティの創造▽就業構造の変化に対応した成長産業への人材シフトに向けた投資▽高齢者等がICT機器を利活用し、より豊かな生活を送ることができるための環境整備▽年齢、障害の有無等を問わずICT機器の活用により社会参画できる環境整備▽当事者参加型の高齢者、障害者等を支援する先端技術の開発―を掲げた。 「C:コネクティッド」では▽デジタルファースト・ワンストップ等を徹底するデジタルガバメントやデータ利活用等の推進▽拠点都市におけるスマートシティのネットワーク化推進▽地域のサステナビリティ確保のための遠隔・自動プロジェクトの推進▽インバウンド6千万を始めとする国内外の需要の地方への呼び込み―である。 さらに、「T:トランスフォーム」においては▽「未来をつかむxTECHプロジェクト」の推進▽データ流通時代の競争力強化方策の検討▽人口減・高齢化をとらえた新市場の創出▽世界の課題解決に貢献するICT海外展開・国際連携―とした。