5・2GHz帯自動車内無線LAN 総務省

 総務省は3月22日、情報通信審議会(会長・内山田竹志トヨタ自動車取締役会長)から、平成14年9月30日付け情報通信審議会諮問第2009号「小電力の無線システムの高度化に必要な技術的条件」のうち「無線LANシステムの高度化利用に係る技術的条件」のうち「5・2GHz帯自動車内無線LANの導入のための技術的条件」について一部答申を受けた。 自動車内での動画視聴等の通信利用ニーズが高まっていることなどを背景として、5・2GHz帯無線LANを自動車内でも利用可能とすることが、2019年のITU世界無線通信会議(WRC―19)において決定された。 このような背景を踏まえ、情報通信審議会情報通信技術分科会の陸上無線通信委員会において、5・2GHz帯自動車内無線LANの導入のための技術的条件に関し、検討を行った結果を取りまとめた報告の内容について情報通信技術分科会で審議が行われ一部答申を受けたもの。  総務省では、一部答申を踏まえ、関係規定の整備を速やかに行う予定。  一部答申の概要では、5・2GHz帯無線LANの現状をみると、スマートフォン等の移動通信データトラヒックが大幅に増大する中、無線LAN(Wi―Fi)は携帯電話回線以外にデータトラヒックを迂回させ、携帯電話回線の負荷を減らすオフロード対策などとして活用されている。2020東京オリパラ大会等の競技場内における無線LAN環境の構築を図るため、平成30年に「5・2GHz帯を使用する無線LANの技術的条件」に関する情報通信審議会一部答申を得て、5・2GHz帯無線LANの利用拡大(屋外利用、e.i.r.p.1W化)に必要な制度整備を実施した。 5・2GHz帯高出力データ通信システムの利用状況をみると、2020東京オリパラ大会会場である国立競技場では、5・2GHz帯高出力データ通信システムのアクセスポイント(AP)を約1300台設置。多くのAPを高密度に設置することで競技場全体を無線LANでカバーした国内初の取組だった。 無線LANに求められる新たなニーズや利用形態に関しては、自動車内では、スマートフォンなどのテザリング機能を利用し2・4GHz帯及び5・6GHz帯無線LANの使用は可能であるが、走行中は5・6GHz帯無線LANはDFS機能の影響を受けやすく通信遮断が生じる恐れがあり、リアルタイムでの動画コンテンツなどの視聴には適していないとしている。諸外国では、5・2GHz帯無線LANを使用したユースケースが検討されている。 そして、自動車内無線LANの普及予測では、カーエレクトロニクス技術の標準化等について検討している一般社団法人JASPARの協力により、我が国における自動車内の無線LANの普及予測を調査・分析した結果、海外と同様に、自動車内での無線LANの利用が可能となれば、カーナビゲーションとスマートフォンが融合したAndroid Auto(AA) やCarPlay(CP)の実装が予想されるとした。 2019年11月のWRC―19において、欧州より自動車内の5・2GHz帯無線LAN利用に関して提案がなされ、審議の結果、5150~5250MHz帯の無線通信規則(RR)脚注5・446Aに付随する決議229を改訂することが決議された。 そして、技術的案件(案)の詳細を記述。次に今後の検討課題を3点挙げた。 ①無線LANの高度化に資する検討=5・2GHz帯自動車内無線LANシステムを含む将来の無線LANに関して、IEEE等の国際標準化の動向に注視し、新たな利用ニーズや技術方式に迅速に対応するため、無線LANの高度化に必要な技術的条件の見直しを図る。 ②周波数共用条件の見直しの検討=5・2GHz帯自動車内無線LANシステムの導入にあたっては、WRC―19結果を踏まえた周波数共用条件に基づき技術的条件を定めているが、5150―5250MHz帯周波数の電波を使用する移動衛星通信システムとの共用条件に影響を及ぼす事象が生じ、又は生じる恐れのある場合には、当該共用条件等の見直しを図る。 ③マイナス利得を有するアンテナの適用可能性の検討=自動車内に無線LANを設置する際に、大きさ等の制約から、必ずしも十分な利得を有するアンテナが利用できるとは限らず、特に海外ではアンテナ利得がマイナス7dBi程度の無線LANデバイスが存在するとの報告があり、このようなアンテナを使用すると空中線電力40mWでは十分なEIRPが確保できず、無線LAN機能が著しく低下する恐れがある。我が国の自動車通信機器メーカー等は、実装上支障が生じることはないとの見解がある一方、海外と国内の規定を一致させた場合、設計・製造の優位性がある点を考慮すべきとの要望もあることから、必要に応じて、マイナス利得のアンテナ適用等の可能性について議論を行う。