競争ルール検証で報告書 総務省

 総務省は、「電気通信市場検証会議 競争ルールの検証に関するWG」(座長・新美育文明治大学名誉教授)において取りまとめられた「競争ルールの検証に関する報告書 2020」(案)について、10月8日(木)までの間、意見を募集している。 本WGは、令和元年10月に施行された電気通信事業法の一部を改正する法律(令和元年法律第5号)において、通信料金と端末代金の完全分離、期間拘束等の行き過ぎた囲い込みの是正のための制度等が整備されたことを踏まえ、講じた措置の効果、移動系通信市場への影響、固定系通信市場も含めた競争環境等について、評価・検証を行うことを目的として、「電気通信市場検証会議」の下に開催され、令和2年4月から検討を行ってきた。 本WGでは、これまで、様々なデータを用いた分析や関係者からのヒアリング等を通じて、改正法の執行状況、移動系通信市場に与えた影響の評価・検証を行うとともに、移動系通信市場や固定系通信市場における現状の課題及び各課題への対応方針等について議論を重ねてきた。そして、これまでの議論が、「競争ルールの検証に関する報告書 2020」(案)として取りまとめられたもの。 本報告書(案)の概要は次の通り。 モバイル市場の競争環境に関する検証(通信市場の動向)の項では『改正法の施行に伴い、MNO3社は違約金の引下げや期間拘束のない料金プランを引下げ(約3割の値下げ)。しかしながら、我が国の料金は、国際的にみると依然として高位な水準。今後は、競争を通じて、低廉で分かりやすいサービスが提供されるよう、競争の阻害要因の見極めが必要』とした。 ここでの今後の方向性は『引き続き、競争を通じて利用者にとって低廉で分かりやすく、納得感のあるサービスが提供されるよう、公正な競争を阻害する要因を見極め、分析・検証を重ねていく必要。通信料金水準については、通信品質などと併せて分析すべきとの指摘があり、諸外国や民間における手法を研究』とした。 次にモバイル市場の競争環境に関する検証(端末市場の動向)の項では『MNO3社の端末売上台数・売上高は、改正法施行前後で大きな変化なし。3G契約は、2020年3月末現在、残り1624万契約。今後は、端末売上について新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を注視。また、不良在庫端末について、特例の適用状況を注視するとともに適切な運用をしていくことが必要』とした。 ここでの今後の方向性は『端末出荷台数について、今後、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響が顕著に出ると予測されることから状況を注視。機種別の売上台数等を把握し、分析することが望ましい。中古端末については、流通の状況を注視するとともに流通促進に係る課題などを確認していくことが必要。不良在庫端末については、特例の適用状況を注視するとともに適切な運用をしていくことが必要。廉価端末及び通信方式の移行については、特例の適用状況を注視』とした。 次にモバイル市場の競争環境に関する検証(新プランへの移行状況、事業者の経営状況)の項では『既往契約は、改正法の施行後の半年で18・1%の減少。事業法27条の3の規律に適合しない利益提供は、改正法施行後の半年で25・3%の減少。今後も、事業者は、利用者が漫然と更新することがないよう移行促進のための取組が必要。また、事業者の経営状況については、分析・検証に当たっての参考指標として動向を注視』とした。 ここでの今後の方向性は『各事業者は、利用者が漫然と更新することがないよう、引き続き、移行促進のための施策を講じる。総務省は、各事業者の移行促進のための取組について進捗状況を注視』とした。 このほか、MNPに関する事項(過度の引き止め行為の実施)では『現状、MNPの利用に際し、主にMVNOにおいて、自社プランへの誘導や利益提供による引き止め行為が多く行われているとの指摘。今後は、過度の引き止めについて、申込みの明確な意思表示のタイミングを踏まえた一定の規制が必要』として、『各事業者のMNP手続が引き止めルールに基づき適切に行われるよう、今後、総務省において、具体的な対応の手順等を整理』すべきと記した。 新型コロナウイルス感染症の影響拡大に対応するための取り組みでは『店舗における取組について、引き続き、事業者と販売代理店の両者が連携をして対策を行うことが必要。コールセンター対応の逼迫について、事業者は、コールセンターの機能の確保のための取組に係る検討が必要。需要の増加が見込まれるオンラインのチャネルについて、事業者は、利便性の向上に向けた取組の検討が必要。販売チャネルのバランスの変化に伴い、利用者のニーズとかけ離れた契約の勧奨など利用者利益に反する行為による混乱がないようにしていく必要。販売代理店の在り方に係る課題について、今後、議論を深めていくことが必要』と挙げた。