ディスプレイとリーダーが一体化したNFC搭載ディスプレイを開発 シャープ

 シャープは4月5日に都内で記者会見を開き、スマートフォンなどのNFC対応機器やICカードをディスプレイにかざすことで通信を行うことが可能となる、透明なNFCアンテナを搭載したディスプレイを開発したと発表した。 一般的に、NFCを利用したシステムはディスプレイとNFCリーダーが別々となっているものが多かったが、同機はディスプレイとNFCリーダーが一体となっており、ユーザーがどこにタッチをすればいいのか分からないといったような疑問が生じにくい、直感的なユーザーインターフェースとなっている。 同社ディスプレイデバイスカンパニー開発本部長兼LCD技術開発センター所長の伊藤康尚氏は「ディスプレイの指示通り見たままタッチをすればいいので誤操作が起きにくいのと同時に、タッチしたら結果がすぐにフィードバックされるのでヒューマンインターフェースとしてもユーザーとコミュニケーションをとることができます。また、従来は別途カードリーダーを設置する場所を容易する必要がありましたが、同機は2つの技術を融合することができましたので、省スペースとなり、デザインの自由度が増します」と同機の利点を語っている。 同機の開発にはディスプレイとしての性能を落とすことはできないことから、NFCアンテナの透明化とディスプレイ全面で複数同時検出が可能である必要があり、NFCアンテナ面積の拡大およびポジションフリー化が必須要件だった。NFCアンテナの透明化は、同社が従来から取り組んでいたタッチパネル技術を応用したもので、目に見えないほど細かいメタルメッシュ技術を応用した配線を開発したことで、アンテナ層の光透過率80%以上を確保した透明NFCアンテナを開発。また、アンテナ面積の拡大およびポジションフリー化については、ディスプレイ全面に不感帯なく感度を確保する電極レイアウト技術や、アンテナ線をスイッチングする回路技術や位置検出やアンテナ配置のアルゴリズム技術などにより、NFCアンテナを形成する技術開発に成功したため、画面のどこにタッチしてもデータを読み取ることが可能となった。伊藤氏は同技術の信頼性について「日本で日常的に使われているNFCカードリーダーと端末の通信距離は2・5㌢㍍が1つの基準になりますが、同技術は約3・5㌢㍍の通信距離と多点で測定した結果、全ての点で基準を満たしていました」と話している。 今後の同技術の利活用方法は、小売店や自動販売機といった場所での決済方法があり、医療の現場で患者情報を認証し、その情報を元に行動することでヒューマンエラーを減らす効果が見込めるほか、教育現場でも生徒・学生の入退場を認証するような例が挙げられる。伊藤氏は別途リーダーを設置しない省スペースのメリットがあることから「同技術をカーシェアリングサービスのカーナビに使用したり、小売店のレジ周りに設置をすることで、一番分かりやすい一等地で認証や決済を行えるようになり、自由な空間デザインを行えるようになります」と話しており、会場ではNFCを搭載したトランプゲームや、大型モニターに同技術を搭載してタッチ型のデジタルサイネージを展示するなど、アミューズメント分野での利活用も想定している。 同機の最大サイズは42型で、さらに大型のサイズのディスプレイは開発中。最小サイズはスマホ程度のサイズまで対応可能で、価格帯等は未定だがセンサーポジション位置が固定式の大型ディスプレイは2019年度中、ポジションが移動可能なディスプレイは2020年までを目途に実用化を目指している。