ASUSエグゼクティブインタビュー Peter Chang氏
ASUSは「COMPUTEX2024」に併せて世界各国からプレスを招いたプレスツアーを実施。ブースだけでなく、本社施設の見学やブリーフィングなど盛沢山の内容だった。今回はエグゼクティブインタビューを掲載する。
インタビューに応じたのは、Peter Chang(ピーター・チャン)氏/ASUS システム部門 アジア太平洋地域ジェネラルマネージャー、Alvin Chen(アルヴィン・チェン)氏/ASUS Japan 代表取締役社長、David Chu(デイビッド・チュー)氏/ASUS Japanシステムビジネスグループ コンシューマービジネス事業部 統括部長。
まず冒頭、AIに関する質問が多くなされた。AI PCの投入による具体的な効果については、デイビッド・チュー氏は「AIはPCメーカーにとって非常に重要なトピックであり、パートナーと話をしていて感じるのは、今後ユーザーはより具体的な目的を持って欲しい製品を探すようになる。つまり、ゲームをする、宿題や勉強をする、在宅勤務をするという複数のシナリオに合わせて、製品を具体的していくことになるでしょう。一方、まだAIとハードウェアの統合の初期段階にあります。今後は日本のチャネルパートナー様とのより深いコミュニケーションが必要で、まずはAI PCについて知っていただかなければいけません。
包括的な製品ラインナップを通じてチャネルパートナーとの連携を深め、今後エンドユーザーとともにさらなる可能性を追求していきたいと考えています」と述べた。
ASUSがAIをどのように取り入れていくかについて、ピーター・チャン氏はMicrosoftとGoogleがキーになるとし、両社とのコラボが重要だと語った。ASUSでは以前より様々な企業と協業しており、例えばIntelやAMDともかなり古くから協業してきた。これにより、製品開発の初期段階からIntelやAMDからサポート受けられ、開発をスムーズに行うことができた。今回のCOMPUTEXに併せて非常に多くの新製品を開発できたが、これは競合メーカーに比べても明らかに多い。協業のメリットによるもので、ASUSの優位点としていた。一方、協業・コラボは重要だが、それだけではダメで、独自性も必要だとした。ASUSでは独自のAI機能を新機種に搭載している。「例えば、AI PC製品を開発した際、我々は独自のコンセプトを持っていました。今回発表したCopilot+ PC準拠のProArtシリーズには、画像生成アプリ“Muse Tree”やデジタルアセット管理アプリ”StoryCube”などASUS独自のAI機能が備わっています。これにより、コンテンツクリエイターはデザインシンキングのプロセスにおいて、事実やアイデアを整理し、より短い時間で同じクオリティのコンテンツを作り出すことができます」(ピーター・チャン氏)。
続いてIntelのCoreUltraを筆頭にAIチップを組み込む動きが進んでいるAIチップを組み込むメリット、一般消費者にとっての具体的な利点は何があるのかについて、デイビッド・チュー氏は「AIチップに関してですが、現在AIと言うとNPUのことを指し、インテルだけでなくAMDやクアルコムも多くの製品を出しており、明日のComputexでも実際に製品をご覧になれると思います。AIは新しいスタートであり、PC業界においても完全に新しい歴史の始まりと言えます。
AIアプリケーションがIT業界に与える最も直接的な影響は、macOS/iOS、Chrome OS/Android、ARMアーキテクチャとx86アーキテクチャなど、異なるOSとプラットフォームの統合だと考えています。これによりソフトウェアの統合も促進され、さまざまなシステム間の互換性が向上します。
PCとハンドヘルドデバイスは、特に情報のインプット方法において、常に本質的な違いがありました。PCは主にキーボードとマウスを使って情報をインプットする一方で、ハンドヘルドデバイスは音声とカメラを使います。PCは従来、ソフトウェアを通じた編集やさまざまな情報のインプット操作を通じて生産性向上に不可欠なツールとして機能してきました。一方、ハンドヘルドデバイスは、主に音声とカメラを入力に使用し、コミュニケーションを円滑にします。今日のAIは、この2種類のデバイスからのアウトプットの品質とプロセスを簡素化し、強化させることができます」と語る。AI化をという大きな動きは同じだが、PCとハンドヘルデバイスではAI化のシナリオは異なると強調した。
次にROG製品に関する質問が行われた。ROG(Republic of Gamers)はゲーマー向けのブランドで世界のゲーマーから高い支持を得ている。ASUSでは昨年新たに「ROG Ally」を投入し大きな注目を集めた。ROG Allyの位置づけや今後の成長について、ピーター・チャン氏は「昨年ROG Allyを発売した後、私たちは非常に良い反応を得ています。日本は、本当に驚異的な成長を遂げ、ROG Allyがユーザーから最も受け入れられている国の1つです。ですから、このセグメントは引き続き大きなチャンスがあると考えています。
まず、PCゲームの全体的な状況を見てみると、ゲームユーザーの種類に関わらず市場はまだまだ成長し、増加し続けています。現在は1つのプラットフォームだけではなく、あらゆるゲームを1台でプレイできることが今後も重要になってくると思います。
実際に、現在ベンダーが持っている技術は既に整っており、この非常にコンパクトなデバイスの中でより多くのトリプルAゲームをプレイすることができるようになります。
今回新たに発表したROG Ally Xでは、USB 4 が新たに加わり、内臓バッテリーも増加しており、ハンドヘルドデバイスとして完璧な選択だと考えています」と述べる。
地域別の売り上げ状況は、米国が最も多いが、ついでアジアとなる、アジアでは日本が最も多く、オーストラリアも好調だったという。日本は初期に想定を上回る販売を記録、最近は落ち着いてきたが、このタイミングで新製品を投入するという。
競合製品も出てきているが、それらに対する優位点について、デイビッド・チュー氏は「ROG AllyのROG Armory Crateのソフトウェアサポートは、当社の最も重要な利点の1つです。お客様は、STEAM、XBOX、EPIC Gamesストアのような統合ゲームライブラリを通じて、すべてのゲームを保存し、ランチャーとしてすぐにアクセスすることができ、ボタン機能やゲームプロファイル、システムメモリとグラフィックリソースの割り当て、さまざまなパフォーマンスモードの設定を行うことができます。Armory Crateは、ハンドヘルドデバイス向けの最も使いやすいコマンドセンターの1つです。また、フレームレートを向上させ、スムーズな動きを実現するフレーム生成技術であるAFMFをいち早くサポートし、ゲームに勝つためのパフォーマンスを実現しています。
ハードウェア自体は、リフレッシュレート120Hz FHDディスプレイとZ1 Extremeの性能を最大限に引き出す強力な放熱技術に加え、バッテリー寿命とメモリ、ストレージを大幅にアップグレードしました」と語る。
当初はSteamDeckが競合と思っていたが、実際には大きく異なるという。ROG AllyのOSはWindows11であり、SteamDeckは独自のSteamOS(Linuxベース)。Windowsベースのデバイスという面から、AIも含めて発展性があると考えているようだ。
次にコロナ後の市場トレンドについて質問が行われ、コロナ禍による求められるデバイスの変化についてデイビッド・チュー氏は「ご存知の通り、コロナが与えたPC業界への影響は凄まじいと感じています。
コロナの前、私が本社と会議をするときはIP電話を使用していました。画面共有することはできませんでしたので、例えば同じパワーポイントを見て作業したいときは、『xxページを見てください』と口頭で補足する必要がありました。PCは情報のインプットにタイピングを使用していましたが、現在はTeamsやGoogle Meetの活用により、カメラとマイクを使って情報をインプットすることができるようになりました。また、オンライン会議に出ながら同時にメールを書いたりすることもできるようになりました。つまり、マルチタスクが可能になり、PCがさらにパワフルなものとなりました。
また、タブレットを用いて会議に参加をしても、チャットボックスに何かを入力したいときスタイラスペンやキーボードが必要です。そのため、多くのタブレットユーザーはキーボードを外付けします。リモートワークをしているか出社しているかに関わらず、キーボードが必要になるのです。ASUSはゲーミングPCでもデタッチャブルキーボードの製品を発売しており、キーボードがないと仕事を終わらせることが難しくなります。キーボードとモニターが同時に必要になるという点がコロナによる大きな変化の一つだと考えています」と述べる。
また、ASUSはゲーミングPCで強い存在感を示していますが、クリエイター向けノートPCではどのように存在感を示そうとするのかについては、「まず、我々はデザイン思考のアプローチを大切にしています。クリエイターがどのように考え、どのようにデバイスを使うかを、PCをデザインする前に知っておく必要があるということです。
実際、それを我々のゲーミングPCのラインナップから学ぶことができます。クリエイター向けシリーズであるProArtが発売される以前から、多くのクリエイターが我々のROGシリーズをコンテンツ制作向けに使っており、我々はそこからいくつかの知見を得ています。ですから、私たちがクリエイター向けのデバイスをどのように開発するかを考えるには、ここから学んだことを活用することもできます。
“Muse Tree”やデジタルアセット管理アプリ”StoryCube”は、クリエイター向けの市場やトレンドを取り入れ、市場で最も人気のあるPhotoshopやPremiereなどのアプリケーションと同等なものです。ISPやベンダーの皆さんと協力し、我々のデバイスでソフトウェアがスムーズに動作するようにする必要があります。
今回ComputexではAMDとクアルコムを搭載した製品を展示しておりますが、先週インテルがLunar Lakeを発表したのも踏まえて、今後製品ラインアップはさらに増えてくることが予想されます」(ピーター・チャン氏)。以前よりクリエイターが同社ゲーミングPCをクリエイターの仕事に使用しているケースが多かった。どのような機能・性能などを求めているかが非常に参考になったという。
最後にピーター・チャン氏は今後のPC業界およびASUSについて「過去を遡りますと、MS―DOSやWindowsのようなオペレーションシステムの登場によりPCの使い方は大きく変わりました。しかし、実はWindowsはMS―DOSのソフトウェアの1つから始まっています。今AIにも同じことが起こっていると思います。AIはPCの一つの特徴に過ぎず、これはまだ出発点です。
AIによりPCのエコシステムが変わり、我々の日々も変化し続けます。今日我々は幅広い製品を紹介しましたが、今後も色々なサービスを提供し続け、改革し続けていきます」と語った。日々変化していくことは、行わなければならないアクションであると強調した。
この記事を書いた記者
- 放送技術を中心に、ICTなども担当。以前は半導体系記者。なんちゃってキャンプが趣味で、競馬はたしなみ程度。
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