映像情報メディア学会冬季大会 インターネット経由のテレビ視聴は6割が受容
一般社団法人映像情報メディア学会(ITE、鈴木教洋会長)は、2024年12月24日(木)・25日(金)に、東京理科大学 森戸記念館(東京都新宿区)において、「2024年映像情報メディア学会冬季大会」を開催した。今回は企画セッション5「日・英における地上波デジタル放送をとりまく諸課題」についてレポートする。
総務省 情報流通行政局 放送政策課の小林祐介氏は「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会 ~ 小規模中継局等のブロードバンド等による代替に関する作業チーム検討結果 ~」と題して講演した。
地上デジタル放送は、地上基幹放送事業者の親局ならびに様々な規模の中継局、一般放送事業者による放送、様々な受信設備により成り立っている。人口減少や視聴スタイルの変化など環境が急速に変化する中、放送事業者の経営が今後さらに厳しくなると予想されている。しかし、放送事業者はあまねく普及義務のもと、中継局などの放送ネットワークインフラに係るコストを固定費として負担し続けなくてはならず、今後経営を圧迫する要因となることが予想される。
これにより、良質な放送コンテンツの全国の視聴者への提供に支障が生じることが懸念されるという。特に、小規模中継局およびミニサテライト局は、世帯カバー率が極めて小さい(NHK:4%、民放3%)にもかかわらず、全体に占める維持費は高額になっているという。
このため、IPユニキャスト方式の配信について、試作したアプリケーションを利用した実証事象を実施。また、実証実験を通じて、求められる品質・機能などの実装に係る技術的課題を検討した他、アンケート調査により視聴者の受容性を分析した。
「インターネット経由で番組視聴することになった場合、受け入れられそうですか」との質問には、「受け入れられない」が全体の約2割、「受け入れられる」
が同6割と、IPユニキャスト方式による代替が視聴者に受容されることが確認できたとしている。
東京理科大学 伊丹誠教授は、「地上波による超高精細度テレビジョン放送等の更なる高画質化を図るために必要な技術的条件」と題して講演した。
2000年にBSデジタル放送、2003年に地上デジタル放送、2018年には新4K8K衛星放送が開始された。地上デジタルに関しても高度化のための研究開発が進められ、2019年度からは総務省の「放送用周波数を有効活用する技術方策に関する調査検討(技術試験事務)」などによって技術的検討が進められている。
2023年7月の情報通信審議会 情報通信技術分科会において答申が行われ、2024年5月に地上デジタルテレビ放送の高度化に係る省令・告示が交付・施行された。現在、省令・告示に基づき標準規格の策定が進められている。
最後にマルチメディア振興センター 調査研究部の飯塚留美氏が「英国における地上波デジタル放送の現状と未来」と題し講演した。
英国の公共サービス放送(PSB)は、英国の視聴者が市民としてのニーズと個人としての関心に応える質の高い番組を幅広く楽しめるように、議会が策定した制度。
Ofcom(英国情報通信庁)は「Future of TV Distribution(テレビ配信の将来)」を公表。地上デジタルテレビを無期限に継続すべきという、放送業界のコンセンサスは崩れたとし、産業界と政府が検討すべき地上デジタルテレビの将来は大きく3つのアプローチがあるとしている。
1つは「より効率的なDTTサービスへの投資」で、継続的な投資や資金調達が可能であれば、より効率的だが完全な地上デジタルテレビを検討することができるとしている。
2つ目は「地上デジタルテレビをコアサービスに縮小」。最小限のコアチャンネル(例:主要な公共チャンネルを)のみを維持するもの。これにより、インフラの運営は全体として安くなるが、より少ないユーザーに分散することになる。
3つ目が「2030年代にかけてDTTスイッチオフに向けて移行(政府は少なくとも2034年まではDTTを維持することを約束)」。人々がインターネットTVサービスを使いこなせるようになることを支援するキャンペーンを計画的に実施すれば、地上デジタルテレビの停波を促進する可能性がある。これには、公共サービス放送の普遍性を確保し、誰一人取り残さないようにするための慎重な計画が必要だが、デジタルインクルージョンにとってもより広範な便益があるとしている。
この記事を書いた記者
- 放送技術を中心に、ICTなども担当。以前は半導体系記者。なんちゃってキャンプが趣味で、競馬はたしなみ程度。
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