映像配信高度化機構 8Kコンテンツを常設インターネット回線で配信/同時多拠点へも安定したストリーミング

 一般社団法人 映像配信高度化機構(理事長:中村伊知哉 i―U大学長)は、 8月24日(火)~25日(水)に、竹芝ポートホール(東京都港区竹芝)において、 総務省実証事業「高度映像配信システムによる8K大画面上映」「NIPPON 8K IMMERSIVE THEATER(8K “没入感”劇場 にっぽん」を開催した。 24日には、4K×400インチ横2面(横8K縦2K)で「DRUM TAO “祭響“ RELIVE(ドラムタオ“サイキョー“ リライブ)」、8K400インチで「富士山 森羅万象 大山行男」および「長岡まつり大花火大会」が上映された。いずれも、技術仕様に準拠した「高度映像配信プラットフォーム(PF)」を用いている。 これらのコンテンツは「富士通横浜データデンター」(神奈川県横浜市)から拠点に設置した配信サーバからCDN(content delivery network:コンテンツを一時キャシュするクラウドサービス)を経由して、nuro Biz(東京シティポート常設のインターネット回線)を使用してストリーム受信した。初めてアクセスするコンテンツは、配信サーバのコンテンツをストリーミングします。それと同時にCDNにそのコンテンツがキャッシュされる。同じコンテンツを2回目以降アクセスする場合(異なる場所や端末においても)、CDNに既にキャッシュしてあるコンテンツがストリーミングされる。この仕組みによって、同時に多拠点でストリーミング受信しても安定した配信を行うことができるという。 「DRUM TAO “祭響“ RELIVE(ドラムタオ“サイキョー“ リライブ)」は4K×400インチ横2面(横8K縦2K)で、竹芝ポートホールに常設している4Kプロジェクター2台を使用して上映した。一方、「富士山 森羅万象 大山行男」および「長岡まつり大花火大会」は、持ち込んだアストロデザイン製8Kプロジェクターを用いて上映。いずれもストリーミングながらほとんど破綻を感じさせない映像を実現していた。 nuro Bizの回線のスピードは、測定の結果、最低でも300Mbps以上で、700Mbpsに達することもあり、高い帯域幅を確保することができている。このため、キャッシュサーバからの遅延はほとんどないという。一方、同システムを用いたライブ中継などで会場からアップリンクする場合は、エンコードをしてクラウドの上げる必要があるため、約12秒程度となっている。遅延を縮小することは可能だが、回線が不安定になった場合を想定して、ある程度はバッファリングが必要なため、12秒程度に調整している。 また、8Kコンテンツはまず素材を符号化した後、H.265で圧縮して伝送する。8Kコンテンツであっても50Mbps程度で伝送することは技術的には可能だが、「我々は機構を通じて様々な実験を通じて、多くの専門家の方から100Mbpsだと8Kらしさが出ている。150Mbpsぐらい使用するとかなりクオリティが高いという評価を得ています。逆に100Mbps以下だと、専門家から見ると奥行き感や立体感が失われるようです。このため、100Mbpsがベターなのではないかと考えています」(映像配信高度化機構)。コンテンツは暗号化して配信するが、今回はDRM(著作権保護)付の暗号化を用いている。また、著作権保護は期間や回数、特定の端末以外では再生できないなど、様々な方法で保護することが可能。8Kの場合、再生用PCからHDMIケーブル×4で8Kプロジェクターに接続する。HDCP2・2対応のため、暗号化することができる。 8Kチューナー(シャープ製)も用意していた。スカパーからNTT東日本のフレッツ回線で竹芝ポートホールまでつなぎ、同様に8K放送を上映することもできる。さらに、クラウドを活用した低解像度プレビューも紹介した。一般に販売されているノートPCを用い、2K解像度でコンテンツを閲覧することができるもの。 さらに、竹芝以外でも、愛媛・東温市の「坊ちゃん劇場」で、劇場設備の8Kプロジェクターで400インチのスクリーンに投影を行った他、アストロデザイン本社(東京都大田区)の試写室でも上映会を開催した。 映像配信高度化機構では、この「高度映像配信システム」が普及することで、地方自治体等が所有する「4K8K上映施設」(例えば、体育施設、音楽ホール、美術館、博物館、図書館など)を有効活用し、多種多様でリッチな4K8Kコンテンツを、住民がそれぞれの地域で手軽に低コスト、しかし圧倒的な“没入感”で楽しめることとなるとしている。