TBSラジオとメディア・インテグレーション ラジオ音声DANTE活用実証実験実施

 TBSラジオ(東京都港区、林慎太郎社長)と、メディア・インテグレーション(東京都渋谷区、前田達哉社長)は、ラジオ業界における次世代の音声伝送技術を確立するため、Dante(Digital Audio Network Through Ethernet)を活用した、広域多チャンネル音声伝送の実証実験を2024年12月~2025年1月にかけて実施した。本実証実験では、フレッツ光などの安価な回線と本実証実験向けに開発したNTPベースのクロック装置を使用して実施された。このような構成での広域多チャンネル音声伝送は世界初の取り組みだという。実験期間中に開催された、日本男子駅伝の実業団日本一を決定する元旦「新春スポーツスペシャルニューイヤー駅伝2025」駅伝中継を汎用のフレッツ回線を活用し、コスト効率と安定性を両立したリモートプロダクションの実現可能性を実証・検証した。
 放送業界では近年、リモートプロダクションの需要が高まっており、スタジオ外からの生中継や収録を迅速かつ高品質に行う技術が求められている。しかし、専用回線およびGPSベースのクロック装置を使用する従来の方法では、非常にコストがかかるうえに、機材設置場所が限られるなど、コスト面や運用の柔軟性に課題があった。本実証実験は、広く普及しているフレッツ光回線を活用しながら、Danteプロトコルを用いて低遅延・高品質の多チャンネル伝送を安価かつ、柔軟に実現することを目的とした。
 具体的には、「新春スポーツスペシャルニューイヤー駅伝2025」の放送センターを構築する群馬県庁29階と、TBSラジオの赤坂放送センター間を繋ぎ、「多チャンネル音声伝送の安定性」および「汎用回線の適用性」を実証した。「多チャンネル音声伝送の安定性」は、最大16チャンネルの音声信号をフレッツ光回線を通じて伝送し、遅延やパケットロスの影響およびリモートプロダクション環境を構築し、拠点間でのリアルタイム音声伝送を行い、音声が途切れないことを確認した。「汎用回線の適用性」は、同一ネットワーク上に設けたNTPサーバ(Network Time Protocol)とDanteの同期機能(PTP:Precision Time Protocol)を利用した本実証実験向けに開発した、NTP―PTP変換装置を準備、各拠点に設置し、フレッツ光回線を用いた高精度なクロック同期を実現した。
 今回の実験により、Danteを活用することで、フレッツ光回線のような汎用回線上でもラジオの多チャンネル音声伝送が可能であることが確認された。これにより、専用回線引き込み場所に依存しない柔軟なサテライトスタジオ構築が可能になった。また、遠方に大量の機材を運搬し設営する作業の削減が可能となり、コスト効率の高いリモートプロダクションが実現できるという。両社は「今後は、さらなる実運用に向けた最適化と、ビデオ伝送やメタデータの管理などの音声伝送以外の分野への応用についても検討を進めてまいります」とコメントしている。


リモート中継回線構成イメージ