
放送記念日 特別対談 寺田健二理事・技師長×本社社長・麻生舞
3月22日、日本で放送が始まって100年を迎える。放送100年の歴史は、放送技術の歴史とも言え、様々な技術開発により、我々の生活の向上に貢献してきた。
また、インターネットを通じたテレビ・ラジオの番組の同時配信と見逃し・聴き逃し配信、それに番組関連情報の配信を必須業務とする改正放送法が成立、今年10月からサービスが開始される。
今回の放送記念日特別対談では、寺田健二理事・技師長に放送100年でNHKの技術が果たしてきた役割、基幹放送局提供子会社の設立の狙い、インターネット業務必須化に対しての取り組み、最新技術を利用したコンテンツ制作の取り組み、今後の技術部門の方向性などを、本社社長・麻生舞が聞いた。
麻生 放送100年の歴史で、NHKの技術が果たしてきた役割についてお聞かせください
寺田 1925年3月22日にNHKの前身のひとつである社団法人東京放送局がラジオ放送を開始してから、今年で100年の節目を迎えます。1923年の関東大震災発生により、いち早く正確な情報を伝えるラジオ放送を求める声が高まったと言われています。そして始まったラジオ放送に続き、白黒テレビ、カラーテレビ、衛星放送、ハイビジョン、スーパーハイビジョン、さらにはインターネットでの配信と、日本のメディアは今も進化を続けています。私たちNHKは、時代のニーズと将来あるべきメディアの姿を見据え、研究・開発・実用化に至るまで、最新テクノロジーを活用することでメディア業界の発展に取り組んできました。
放送100年の歴史は、まさに技術の歴史であり、それは私たちNHKだけではなく、皆さまとともに切磋琢磨しながら歩んできた100年です。
近年、メディアを取り巻く環境は大きく変化しています。自然災害の激甚化が進むなか、命と暮らしを守る緊急報道の重要性はこれまで以上に増し、デジタル化の加速が社会の利便性を高めた一方で、フェイクニュースの蔓延が社会の混乱を招くなど負の側面が課題となり、“正確で信頼できる情報”への期待は一層高まっています。こうした変化にしっかりと向き合い、視聴者・国民のみなさまの役に立つ存在であり続けるため、今後もNHK技術一丸となって取り組んでいきたいと考えています。
麻生 経営計画における技術部門の取り組みについてお聞かせ下さい
寺田 NHK経営計画(2024―2026年度)がスタートしてまもなく1年です。経営計画に掲げた計画や施策を着実に前進させるため、技術部門ではさまざまな取り組みを行っています。
今年10月、インターネットを通じた番組などの提供をNHKの必須業務にすることを盛り込んだ改正放送法が施行されます。これまで放送を主な業務としてきたNHKが、インターネットでもしっかりと公共的役割を果たしていく重い責任を担うことであり、改めて気が引き締まる思いです。より高い水準のサービス提供を目指し、サービス検討やシステム開発・構築などを進めています。
放送に関しては、ネットワーク効率化に向けた取り組みを行っています。昨年12月、基幹放送局提供子会社、いわゆる中継局の共同利用会社を新たに設立しました。業界全体での送信コスト効率化をめざし、NHKと民放の二元体制による放送ネットワークを維持していくため、尽力してまいります。
業務全般を大胆に見直す構造改革による経費削減にも取り組んでいます。
事業支出を段階的に削減しながら2027年度の収支均衡を目指すため、設備投資の選択と集中を継続的に行います。2026年度の本格運用に向けて渋谷・放送センターの情報棟整備に集中投資を行う一方、それ以外の設備投資は引き続き抑制を図ります。設備更新タイミングの見直しや、仕様・スペックの再精査を行い、コスト抑制を徹底します。平行して、制作設備のIP化・ネットワーク化、クラウド利活用など、コンテンツ制作のワークフロー改革や作業効率の向上に資するテクノロジーの導入については着実に推進し、将来に備えた先行投資も計画的に進めます。
さらに事業支出改革のひとつとしてメディアの整理・削減を行っています。衛星波再編に続き、2026年3月末、音声波であるR1、R2、FMを、AM1波、FM1波に再編します。技術部門では、放送設備や免許に関する課題整理や関係各所との調整を進めています。
このようにNHKは公共放送としての役割を果たすため、常に新しいチャレンジを続けています。私たちはNHKにおける技術の専門家集団として、あらゆる業務に先端テクノロジーの力を活用し、視聴者・国民のみなさまのお役に立てるよう、引き続き一丸となって取り組んでまいります。(全文は3月22日号4~5面に掲載)

NHK理事・技師長
寺田健二

本社社長
麻生 舞
この記事を書いた記者
- 放送技術を中心に、ICTなども担当。以前は半導体系記者。なんちゃってキャンプが趣味で、競馬はたしなみ程度。
最新の投稿
プレスリリース2025.04.01デル・テクノロジーズ、Copilot+ PCの実力を最大限に引き出す2つの新サービスを提供開始
放送2025.04.01フジテレビ、「浅い思慮により対応方針を決定」と批判
放送機器2025.03.31スタジオブロス、Epic Gamesの認定をトリプル取得
実録・戦後放送史2025.03.31「記念すべき6月1日①」