WOWOW、新音声中継車を公開~96kHzやDante採用など最新技術を導入

 WOWOWは11日、新音声中継車をメディア向けに公開した。
 前中継車は2009年3月に運用を開始しており、WOWOWの音声中継車としては15年ぶりの更新となる。なお、前中継車は子会社のWOWOWエンタテインメントの所属となり、WOWOWグループとして音声中継車は2台体制で運用される、
 新音声中継車の特徴はまずサンプリングレート96kHz対応がある。同社の音声中継者は48kHz対応だった。それでもCDよりは高音質なサンプリングレートであり、放送業界では一般的なスペックでの対応だった。今回2倍のサンプリングレートである96kHzに対応、いわゆるハイレゾオーディオと言われるものにも対応できる。アーティストからの要望があったほか、コンサート会場でのPAの制作も96kHzの音声で制作されることが多いので、ついに待望の対応ということになる。
 次はイマーシブ制作への対応だ。従来の車は5・1チャンネルのサラウンドで平面のサラウンドだったが、昨今DolbyAtmosやApple Musicなど空間オーディオと言われるような、上からも音が出るフォーマットを音声中継車でリアルタイムに制作することができる。
 また、システム系では、今回Solid State Logicの「System T」を導入している。それに伴い音声の伝送が全てインターネットプロトコル(IP)による伝送になった。幹線がLANケーブルや光ファイバーで構築され、ネットワークの信号として音声が伝送されている。これによりコンパクトなシステム構成が可能になったという。ここで重要なのが重量で、大幅に性能を向上させているため、従来だと車体重量が20tを超えてしまう。20tを超えると、日本の法律で規制があり、道路を走らせるためには色々な申請を行わなくてはならない。
 新音声中継車では最新の技術を活用することで、申請が要らない重量20t未満に収めることができた。これにより機動力を持った運用が可能になるとしている。
 また、四つ目が信号伝送と電源の冗長性。WOWOWの中継車として生中継でも放送事故などを絶対に防ぐということを重視して設計している。ネットワークによる信号伝送では、Dante規格を採用し、冗長性を確保した伝送を可能にした。電源に関しても、主要な機器に関しては電源が二重化している。車両後部には無停電電源装置を搭載し、電源の瞬断、もしくは数分の停電にも対応して事故なく放送を続けられるようなシステム構成になっている。更新になっている。加えて、車の後部にディーゼルの発電機を搭載し、電源が確保できないような場所における運用も可能だ。
 さらに、車体の一部が拡幅する構造になっており、作業する際に拡幅させて使用する。
 新音声中継車はTM NETWORKの40周年ライブで初運用された。2025年4月8日、9日に横浜アリーナで開催された同ライブで使用されており、その模様は、5月31日(土)午後9:00~「TM NETWORK YONMARU+01 at YOKOHAMA ARENA」(WOWOWプライム)で見ることができる。
 同社技術センター 制作技術ユニット エンジニアの戸田佳宏氏によるとこの新音声中継車の価格は「億レベル」だという。「この車はWOWOWの番組で、もちろん使うんですけども、子会社のWOWOWエンタテインメントという会社が技術の業務委託を受けてまして、いろんな現場、他局さんのお仕事があるかもしれませんし、パッケージの仕事ですとか今はもう多岐にわたる仕事をやっておりますので、ぜひいろんな皆さんに使っていただいて、素晴らしい作品をアーティストの皆さん、あるいはスポーツ選手の皆さんと、世界にお届けできればなと思ってます」と語る。(全文は4月16日号3面に掲載)

Bルーム

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戸田佳宏氏

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この記事を書いた記者

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成澤誠
放送技術を中心に、ICTなども担当。以前は半導体系記者。なんちゃってキャンプが趣味で、競馬はたしなみ程度。