KDDI センバツ高校野球で新たな視点での映像体験

 KDDIは、WAKONX Broadcastを構成するアセットとして、5Gスタンドアローン(5G SA)商用ネットワークでネットワークスライシングを活用したソリューションを、放送事業者向けに提供開始したことを発表した。同ソリューションは、スタジアムやアリーナなどの映像中継を実施する特定のエリアにて提供する。
 KDDIは継続的に通信品質向上に取り組み、国内最多となる5Gの大容量・高速な通信を実現するSub6(3・7GHz帯/4・0GHz帯)基地局約3・9万局を展開し、2024年度には、Sub6基地局の出力アップやアンテナ角度の最適化により利用可能エリアを拡大した。また、5G SAはSub6基地局全域で利用可能。
 同ソリューションは、観客などが利用する一般のスマートフォンのネットワークと、映像回線として利用するネットワークを論理的に分離することにより、映像中継に必要な通信品質を安定的に提供。ケーブルの敷設を必要とせず無線での中継が可能となるため、映像中継が大幅に簡易化されるなど、専用機器の置き換えによるコスト削減が見込まれる。また、スマートフォンカメラやドローンを活用した映像中継では、多様な視点による臨場感ある映像体験の提供が可能になる。
 中継での同ソリューションの活用について、毎日放送 総合技術局 制作技術センター テクニカルマネージメント担当 桂将太氏は、「第97回選抜高等学校野球大会の中継およびライブ配信において、若年層の視聴者にアプローチするため、アルプススタンドで応援する観客を主に被写体とした縦型動画を撮影・伝送し、試合中に速攻編集したVTRを再生する『みんなのサクラ』というコーナーを設けました。スマートフォン撮影による高い機動性と、単一キャリア回線で高品質映像を安定して伝送できる利便性を実感することができました」と述べている。
 スタジアムなどの屋外から安定した映像を生中継するには、ケーブル敷設を伴う複雑なオペレーションが必要であり、マイクロ波や衛星波を利用する中継車からのケーブル敷設作業、専用機器や多くの制作スタッフの確保など、多大なコストと労力が課題だった。
 KDDIは、2023年に5G SAスライシングを活用した全国高校野球選手権大会の中継技術実証に成功した。この実証により、作業負荷の大きい有線ケーブルやマイクロ波を使用した場合と比較しても申し分ない映像品質での伝送が可能であることと、無線ならではの自在なライブ伝送の有用性を確認した。
 これらの実証や通信品質向上の取り組みを通じ、さらなる映像中継の作業負荷解消と新たな映像体験に寄与するため、同ソリューションを提供開始する。
 同ソリューションの特徴は以下の通り。
 ▽高負荷な環境下における中継の安定性の確保:試合・ライブイベントなどでのネットワーク混雑時においても、中継に必要な通信品質を確保し、低遅延で安定性の高い映像・音声伝送をすることが可能。
 ▽コンパクトな構成での中継による業務効率化:大きな専用機器を使用しないコンパクトな構成での中継が可能となるため、煩雑なケーブルの取り回しなど、従来発生していた複雑なオペレーションを解消する。
 ▽臨場感ある映像体験を提供可:ケーブルに制限されず、さまざまな視点での映像撮影が可能となる。これにより、スマートフォンや、ドローンを活用した空撮映像、スポーツの審判に設置した小型カメラの映像の伝送を実現し、視聴者がより熱狂できる映像体験を提供可能。(全文は4月23日号3面に掲載)
TOP画像は「スマホで撮影した映像を中継で放送した様子」