
NHK、放送100年を支えた技術開発
NHKは24日、メディア説明会 「放送100年(技術編)」を開催し、NHKの技術、特に技術の研究開発に焦点を当てて放送100年を振り返り今後何を目指して研究開発に取り組んでいくのか説明した。また、来月5月最終週に開催されるNHK TECH WEEKの開催概要を説明した。
まず、放送技術研究所 研究部の中島奈緒氏が技術の進歩を説明した。
放送の歴史は放送技術の歴史と言われるほど、さまざまな技術革新を経て放送は進化を遂げてきた。この技術革新の歴史において、NHKは様々な世界初を達成するなど、先導的な役割を果たしてきた。
約100年前、電信・電話の発達に続いて、ラジオが登場している(1925年 ラジオ放送開始)。続いて音声のみならず、映像も無線伝送できるテレビが登場、1953年にテレビ放送開始、さらに映像をカラー化したカラーテレビ放送が1960年に開始された。放送をあまねくとどける技術として、1989年に衛星放送が開始した、。さらに、高機能・高画質なテレビとして、2000年にBSデジタル放送、2003年に地上デジタル放送、2018年に 新4K8K衛星放送が開始された。
この間、色々なイベント・番組が放送されたが、例えば1959年の皇太子殿下ご成婚パレード中継では、NHKと民放はテレビカメラ100台、放送要員1000人を動員。テレビ中継を見た人は1500万人に上った。また、NHKの受信契約数は前年の100万件から200万件になった。
1964年オリンピック・東京大会では今につながる新しい技術が一斉に登場している。オリンピック史上初の衛星放送による生中継に成功。電話回線用の静止衛星シンコム3号を利用し、テレビ信号をそのまま伝送する容量がなかったため、圧縮技術を使い、大会3日前に技術テストに成功した。オリンピック史上初のカラーテレビ中継を実現するともに、白黒の受像機の視聴者のため、白黒でも画質が落ちないよう設計されたカラーカメラを使用した。この他、VTRで収録して再生する「スローモーションVTR」、騒音の多い放送席でも良質な音声を収音できる「接話マイク」、送信アンテナが自動的に基地局に向く「ヘリコプター用テレビ中継装置」(マラソン全コースの中継を可能にした)などが開発されている。
このようなテレビの進化には、NHK技研は多大なるを貢献している。NHK技研は、放送施設の改善や受信機の低廉化を促進するため、ラジオ放送開始5年後の1930年に設立された。幻となった東京オリンピック(1940年)の世界初テレビ中継へ向けてテレビ研究を開始した、撮像、記録、伝送、受信、表示の、放送技術のすべての分野をカバーしており、先導的な研究開発と実用化・普及を繰り返し、放送文化の発展に貢献してきた。2025年6月1日に開所95周年を迎える。
実用化された、主な技研の研究成果としては、従来の標準テレビと比較して5倍以上の情報量を有するハイビジョンを世界に先駆けて開発(研究開始1964年、実用化1994年)、人の目で見えないほどの暗闇でも撮影を可能とする超高感度撮像デバイスを開発(同1985年、同1988年)、音声自働認識技術を開発しニュース番組の字幕表示を実現(同1996年、同2000年)、ハイビジョンと比較して16倍の解像度、色・明るさの再現範囲を広げた8Kスーパーハイビジョンを世界に先駆けて開発(同2000年、同2018年)。
この他、2024年ノーベル物理学賞(ジョン・ホップフィールド、ジェフリー・ヒントン)の説明資料で、2名の受賞につながる先駆的な研究として、元職員の福島邦彦氏の論文は紹介された。今日のAI技術の中核となる技術(ディープラーニングの原型)で、学習能力を持った神経回路モデルによるパターン認識に関するもの。
さらに、実用化から25年以上経過し、社会や産業の発展に多大な貢献をした歴史的業績を表彰する「IEEE Milestones」も受賞している。直接衛星放送サービス (2011年 認定)、緊急警報放送 (2016年 認定)、ハイビジョン (2016年 認定)の3件。
続いて「NHK TECH WEEK」を紹介した。NHKは2025年5月の最終週を「NHK TECH WEEK」とし、NHK技術部門の最新の研究開発成果や取り組みなどを一般の人に紹介する2つの一般公開イベント、「NHK TECH EXPO 2025」と「技研公開2025」を開催する。
まず「NHK TECH EXPO 2025」を5月26日(月)から28日(水)までの3日間、東京都渋谷区のNHK放送センターで開催する。番組制作や緊急報道、電波確保など、全国NHKの現場ならではのノウハウ・アイデアから生まれた機材やサービスなどを20項目展示する。入場は無料で、事前予約なしで誰でも入場可能。
一方、「技研公開2025」は、5月29日(木)から6月1日(日)までの4日間、東京都世田谷区のNHK放送技術研究所で開催する。未来を見据え、放送技術分野の基礎から応用まで幅広く取り組んだ研究開発の成果を紹介。 今年は「広がる つながる 夢中にさせる」をテーマに 18 項目を展示する。
中島氏は「画素数30Kの360度カメラで撮影した映像を中心に画素数15K相当のプロジェクターを用いた半球スクリーン装置に表示する他、触覚と香りで体感する3次元コンテンツやボリュメトリック技術など多彩の技術を展示します」という。
入場は無料で、事前予約なしで誰でも入場可能。

NHK TECH EXPO 2025

技研公開2025
この記事を書いた記者
- 放送技術を中心に、ICTなども担当。以前は半導体系記者。なんちゃってキャンプが趣味で、競馬はたしなみ程度。
最新の投稿
プレスリリース2025.04.30Preferred Networks エクステンションラウンドで総額50億円の資金調達を実施 一連の資金調達により累積調達額240億円に
放送2025.04.30NHK、放送100年を支えた技術開発
実録・戦後放送史2025.04.30「東京地区統合の動き②」
実録・戦後放送史2025.04.28「東京地区統合の動き①」