別世界のテレビ放送始まる 「新4K8K衛星放送」開始セレモニー開催

 一般社団法人放送サービス高度化推進協会(A―PAB)は12月1日、「新4K8K衛星放送」の開始セレモニーをホテルニューオータニ(東京都千代田区)で開催した。 セレモニーには石田真敏総務大臣や上田良一NHK会長、柵山正樹一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)会長ら放送事業者、のほか、4K8K推進キャラクターの深田恭子さんと関係者らによるカウントダウンも行われた。 12月1日10時からスタートした番組も、従来から放送されているBS・110度CS放送とは異なるラインアップが用意されており、12月1日および2日には「NHK BS 4K」では世界初となる4K中継を行ったほか、放送開始を記念して民放4社がリレー形式で放送する、ユーラシア大陸を横断する鉄道旅の番組も放送されている。 参入事業者は次の通り。▽「BS朝日 4K」(ビーエス朝日)▽「BSテレ東 4K」(BSテレビ東京)▽「BS日テレ(2019年12月1日より開始)」(BS日本)▽「NHK BS 4K」(NHK)▽「BS―TBS 4K」(BS―TBS)▽「BSフジ 4K」(ビーエスフジ)▽「ショップチャンネル4K」(SCサテライト放送)▽「4K QVC」(QVCサテライト)▽「ザ・シネマ 4K」(東北新社メディアサービス)▽「WOWOW(2020年12月1日より開始)」(WOWOW)▽「NHK BS 8K」(NHK)▽「J SPORTS1~4(4K)」(スカパー・エンターテイメント)▽「スターチャンネル」(同)▽「スカチャン1~2 4K」(同)▽「日本映画+時代劇 4K」(同)。 なお、同放送を受信するには専用のチューナーかチューナー内蔵テレビを購入する必要があるほか、一部BS・CS放送は従来のテレビ受信で利用されていた右旋とは異なる左旋を用いているため、専用のアンテナやブースター、分配器などに改修する必要がある。(2面につづく) 「新4K8K衛星放送」開始に際し、主催者を代表してA―PABの福田俊男理事長は「2000年のBSデジタル、2003年の地上デジタル放送の開始も、いずれも12月1日でした。そして今日も12月1日と、ある意味では3度目の新しい放送が始まる日となり、BS/110度CS放送で、一斉に17チャンネルが開始をするということになります。8K左旋を含めると世界に先駆けての放送となります。放送事業者並びにご関係者にとりましては、大変多くの作業を短期間の中で成し遂げていただきました。そのご労苦がようやく実る瞬間がやってきます。4K放送は、これまで一部の限られたサービスでしたが、今後は4000万を超える受信可能な世帯はBS/110度CSの基幹放送でご覧いただくことができます。新4K8K衛星放送のキャッチフレーズは『別世界』で、画質も音質も別世界です。4K8K推進キャラクターの深田恭子さんには、こうした新しい放送の魅力を随分あちこちでPRしていただきました。これからも続けていただきたいと思っています。新4K8K衛星放送は、様々な意味で放送が厳しい環境に置かれている中でのスタートになります。現時点での推計では、4Kテレビの普及率は10%を超えており、10%という一つの目標はクリアし、4K8Kに関する報道量も飛躍的に増えています。受信機の買い替え需要を追い風として2020年の東京オリンピック・パラリンピックの折りには、多くの視聴者の皆様がご家庭のテレビで新しい放送を楽しんでいただいているという状況を目指して努力を引き続き行ってまいります。4K8Kは放送以外にも多くの活用分野が想定されており、これも魅力の一つと言えます。何よりも今回の新しい放送が、改めて放送全体にスポットが当たる絶好の機会だととらえています。改めてにはなりますが、放送が開始する今日からが普及に向けての新たなスタート・勝負だと考えています。会場の皆様にはこれまでのご支援に感謝するとともに、引き続きのご支援ご鞭撻を心からお願い申し上げます」と挨拶を述べた。 来賓挨拶として、石田真敏総務大臣と上田良一NHK会長、大久保好男民放連会長、柵山正樹JEITA会長が登壇し、石田真敏総務大臣は「いよいよ、4K8Kの鮮やかで臨場感溢れるこれまでとは全く別の次元の視聴体験が始まります。本日の放送開始に合わせて南極の生中継や複数の報道局の共同企画による鉄道旅行、有名歌手のコンサートライブ映像といった特集されていると伺っています。これから11事業者19チャンネルにおいて、新4K8K衛星放送が実施されることとなっていますが、これだけの規模で4K8Kの実用放送が行われるのは世界初のことです。今日を迎えるにあたり、総務省からも新4K8K衛星放送の開始に向けて皆様に様々なお願いをし、準備をしていただきました。放送事業者の皆様には送信設備の整備、4K8K番組を制作していただくメーカーの皆様には新4K8K衛星放送の受信機能を内蔵したテレビや対応チューナーを発売していただきました。各業界団体・事業者の皆様には、A―PABと連携した周知広報に取り組んでいただきました。皆様のご尽力にこの場をお借りしまして心から感謝申し上げます。これからの課題は新4K8K衛星放送の普及です。これには、国民・視聴者の皆様のご期待に応える4K8Kならではの魅力溢れる番組を提供していただくことが何より重要です。ドキュメンタリー・バラエティ・ドラマなど、皆様が培われたノウハウを活かして、視聴者にこれまでにない新たな感動を与える番組を期待しています。また今後、2020年に向けて様々な国際的なスポーツイベントが開催されます。4Kならではの臨場感と迫力により、選手の躍動感、試合中の細やかな表情、応援で盛り上がる観客席を鮮明に伝え、まるでスタジアムにいるかのような国民・視聴者の皆様にぜひ体感していただきたいと考えています。まさに、本日が国民・視聴者の新しい視聴体験のスタートです。総務省としても、引き続き4K8Kの素晴らしさと、それを知っていただくための受信方法について、皆様とともに丁寧に周知広報に取り組み、新4K8K衛星放送をさらに盛り上げていきたいと考えています。そしてこれを機に、放送分野をはじめとする4K8Kの牽引役となることを期待しています」と述べた。 上田良一NHK会長は「放送開始のボタンを押すとともに、新しい放送の時代が始まります。この記念すべき瞬間を関係者の皆様とともにこのように迎えられますことを大変うれしく感じており、皆様の大変なご尽力・ご支援に心から感謝申し上げます。放送は最先端技術が支える文化です。その先導的な役割を果たすのが公共放送・公共メディアの使命の一つと考えています。テレビ放送の歴史を振り返ってみると1953年に白黒テレビの放送を開始して以来、カラー化、衛星放送、ハイビジョン放送、そしてデジタル放送の開始と新しい放送サービスが開発され、視聴者の皆様に多彩で豊かな放送を提供してまいりました。そして本日、新4K8K衛星放送の開始という、放送史の新たな1ページを綴ることになります。NHKは今から20年以上前、新しいテレビを生み出そうと次世代のテレビの開発を手掛けて以来、各方面のご協力をいただきながら技術の開発・制作、創出設備の整備、多様なコンテンツの制作など、一歩一歩準備を積み重ねてまいりました。特に、8Kは世界で初めての放送となります。NHKは、放送の新たな時代の幕開けとなる4K8Kによる放送サービスとともに、インターネットも活用して東京オリンピック・パラリンピックが開かれる2020年には、最高水準の放送サービスをお届けすることを目指しています。こうした放送の高度化に取り組むことは、放送メディアの発展と放送コンテンツ市場の拡大につながることでしょう。NHKはその先導的な役割を果たすことをお約束し、2020年の本格普及に向けて全力を挙げてまいります。本日、4Kチャネルの『NHK BS 4K』、8Kチャネルの『NHK BS 8K』を立ち上げます。4Kチャネルでは、世界で初めてとなる南極からの4K中継、また8Kチャネルではイタリア・ローマからの中継など、魅力を満載した特別番組をお届けします。新4K8K衛星放送の普及拡大は、その優れた特性を活かした魅力的なコンテンツをいかに充実させるかが鍵になります。NHKは、視聴者の皆様にスペシャルな感動と体験をお届けすることで、魅力を実感していただき、新4K8K衛星放送の普及に少しでも貢献できればと考えております。2020年の本格普及に向けては、これからが勝負です。NHKでは引き続き総合テレビなどで、その魅力や視聴方法などについて周知広報を集中的に行います。このセレモニーにお集まりの皆様と力を合わせて、視聴者の皆様に新しい価値をお届けできるよう努めてまいります。日本の放送文化はNHKと民間放送という二元体制の下で発展してまいりました。放送の世界が、大きなメディア環境の中で歴史的な変革を迎えています。これからも皆様と手を携えながら、さらなる発展のために力を尽くしてまいります」と述べた。 大久保好男民放連会長は「今回のセレモニーを主催され、新4K8K衛星放送の普及活動に取り組んでこられたA-PABの皆様、国の施策として4K8Kの実現を強力に推進してこられた総務省の皆様、送信設備やテレビ受信機の開発と製造に精力的に取り組んでこられた電機メーカーの皆様、そして、本放送の開始に向けて準備を進めてきた放送事業者の皆様、本日お集まりのすべての関係者の皆様のこれまでのご尽力に心より御礼を申し上げますとともに、新たな放送の門出を心からお祝い申し上げます。4K8Kの衛星放送を成功させるには、視聴者にとって素晴らしい、見応えのあるコンテンツを提供することが極めて重要です。本日から放送を開始する民放BS4社は共同で企画・制作した『大いなる鉄路 1万4000㌔㍍走破 東京発パリ行き』という番組を放送しますが、このような魅力的な番組をもっともっとたくさん制作することが不可欠ですし、各社が切磋琢磨してこうしたすべての番組を着実に制作してくれることを期待・確信しています。民放事業者にとっては経営的には極めて厳しいところの4K放送のスタートです。総務省をはじめ関係者の皆様には、この4K放送事業が1日も早く自立し、自走できるようにこれまで以上の温かいご支援とご指導をお願いいたします」と述べた。 柵山正樹JEITA会長は「本日、新4K8K衛星放送の開始を迎えられたことは、放送業界・家電流通業界のご努力、テレビ局のご支援の賜物と考えており、この場を借りて厚く御礼申し上げます。新4K8K衛星放送は従来の放送を超える美しい映像や臨場感など、新しい体験を生み出し、快適な暮らしの実現に寄与するものと考えています。今後は4K8K技術の応用展開として防災・医療・健康・教育など様々な分野において新たな価値の創造を期待しています。私どもJEITAは、サイバー空間と現実空間の連携により経済発展と社会課題解決を両立させ、社会全体の最適化をもたらす超スマート社会『Society5・0』の実現に向け、業種・業界の垣根を越えた取り組みを進めています。10月に『CEATEC JAPAN』、11月に『InterBEE2018』という2つの展示会を開催しました。その展示会の中で新4K8K衛星放送についてはA―PAB様やNHK様と協力して魅力などを発信し、受信環境設備整備に向けた周知広報を行ってきました。今後も4K8K技術について利用者のニーズに応えられるように取り組んでいきます。2020年開催の東京オリンピック・パラリンピック開催まで2年を切りました。JEITAとしては新4K8K衛星放送により、その場にいるような臨場感を最高の画質と音質で楽しんでいただける受信機器を、より多くの視聴者にお届けするとともに、家電流通業界をはじめ、関係者の力をお借りしながら、正確で有益な情報の周知広報活動を実施していきます。政府におかれても、受信環境整備に向けてご支援を賜りたくお願い申し上げます。新4K8K衛星放送の開始で、より多くの視聴者の皆様がさらなる豊かな暮らしを実感していただけることを祈念しています」と述べた。 また、セレモニーには〝4K8K推進キャラクター〟の深田恭子さんも登場。深田さんは「本日は本当に楽しみにしていました。4KのスポットCMやドラマの撮影も経験して、さらに身近に感じています。今年の春に4K対応テレビを購入させていただいて、昨日、チューナーを取り付けたので準備はばっちりです」と語っていた。 福田氏や来賓の4氏に加えて、深田恭子さんやテレビ局・小売店・業界団体など関係各氏らによるカウントダウンが行われ、新4K8K衛星放送は盛大にスタート。 会場では4K8K衛星放送の普及動向や認知度調査の結果が発表されたほか、発売・発表しているテレビ・チューナー・レコーダー・PC・STB・アンテナといった放送対応機器が展示され、メーカー各社の担当者が説明を行っていた。また、会場内には民放4社共同の仮設スタジオも設置されており、セレモニーに出席した深田恭子さんも交えながらの特番中継も行われていた。