NHK 稲葉延雄氏が会長就任会見

 1月25日、NHKの新しい会長に元日本銀行 理事の稲葉延雄氏が就任した。就任記者会見での要旨は以下の通り。 「本日付けでNHK会長に就任した稲葉です。改めて、どうぞよろしくお願いします。 NHKが拠って立つ放送法の第1条には、放送の目的として、放送の効用を国民にあまねく普及し、表現の自由を確保し、健全な民主主義の発達に資するということがうたわれています。放送法は、私が生まれた昭和25年にできた法律ということもあって親近感を感じるとともに、放送を通じて戦後の日本社会をより良いものにしようという、当時の立法関係者の熱意を感じ感銘を受けた記憶があります。今回NHKの会長をお引き受けするにあたって不思議なご縁を感じるとともに、こうした志の高い仕事に関わっていけることを大変名誉に感じています。 前田・前会長がこれまで取り組まれてきた改革に関しては、業務の効率化を大胆に進めることで、受信料値下げに伴う収入の減少を収支均衡に持っていく道筋について、おおむねメドをつけていただいたものと理解しています。この先、想定通りに財務の計数が現れてくるかどうか、しっかり見極めながら、この秋の受信料値下げを実現していきたいと思っています。そのうえで、私の役割は改革の検証と発展です。 実際かなり大胆な改革ですので、若干のほころびやマイナス面が生じている部分があるかもしれません。従って第一に、もしそうであれば、丁寧に手当てをしながら、ベストな姿に持っていきたいと思います。特に人材活用の見地から重要な人事制度改革については私の目から見て検証、見直しを行っていきたいと思います。一人一人が能力を最大限発揮してもらうために、多様なキャリアパスを示して安心して職務に専念できるよう温かみのある人事制度にしたいと考えています。そして、その際には、現場の職員・社員のみなさんの声に耳を傾けて、しっかり対話しながら手当を進めていきます。 そして第二に、収支の均衡が表面的に実現したとしても、それによってコンテンツの質や量が落ち込むことがあっては本末転倒です。デジタル技術を活用して質・量ともに豊富に提供していく─これはやり残した部分であり、経営改革の第二弾、本丸として探っていきます。デジタルテクノロジーのさらなる活用としては、例えばメタバース技術の活用による新しい画像表現の探求やデジタルアーカイブの事業展開、あるいは番組の制作から発信までの生産プロセス、職人芸的なものを否定するわけではありませんが、そうした生産プロセスをデジタル的に抜本改革することなどで、これまで以上に高品質なコンテンツを効率的なコストで生み出していけるよう、NHKを前進させていきたいと思います。 最後にNHKとしての思いを申し上げます。まず日々の報道面では、真実の探求のため時間をかけてもしっかり取材し、NHKらしい真摯な姿勢で、公正公平で確かな情報を間断なくお届けしたいと思います。多様な情報が錯綜する中で、皆様の日々の判断のよりどころになりたいと念じております。また、エンターテイメントの制作面では、さまざまな新しい試みに挑戦しながら、世界に通用する質の高い番組の提供を心掛けます。 皆様の日常がより豊かで文化的なものとなるよう精一杯努力したいと思います。ちょうどよい機会ですので、これらの点を改めて皆様にお約束したいと思います」。